研究課題/領域番号 |
23K07706
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53040:腎臓内科学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
若林 啓一 順天堂大学, 医学部, 助教 (60748565)
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研究分担者 |
上田 誠二 順天堂大学, 医学部, 非常勤講師 (80322593)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 急性腎障害 / ミネラルコルチコイド受容体 / 終末糖化産物受容体 / 腎虚血再灌流 |
研究開始時の研究の概要 |
急性腎障害(AKI)と慢性腎臓病(CKD)との密接な関係「AKI to CKD transition」が認知され始めたが、この移行メカニズムには不明な点が多い。本研究はその機序と分子経路の解明を目的として、「AKI患者において発現が亢進している終末糖化産物受容体(RAGE)が、ミネラルコルチコイド受容体(MR)を介して、AKIの発症・進展・慢性化に関与する」との仮説をたて、その検証を行う。AKI患者における臓器障害及びその慢性化予防のための治療標的がMRであることを特定し、新規治療戦略開発への足掛かりとする。
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研究実績の概要 |
急性腎障害(AKI)と慢性腎臓病(CKD)との密接な関係「AKI to CKD transition」が認知され始めたが、この移行メカニズムには不明な点が多い。一方、腎臓病における治療標的としてミネラルコルチコイド受容体(MR)の関与が明らかになりつつあり、肥満や糖尿病、CKDの病態においてMR活性化が生じ、標的臓器に障害を惹起することがわかってきた。我々は近年、終末糖化産物受容体(RAGE)を介したRac1の活性化がMRを活性化し、ポドサイト障害を惹起することを明らかにした。この研究を踏まえ、RAGEのリガンドの1つであり、AKIで上昇する核蛋白であるHMGB1に着目し、「HMGB1/RAGE軸とMR経路との連関がAKI環境下において内皮障害を惹起し、臓器障害の発症・進展・慢性化に関与する」との仮設を立てた。この仮説を検証するために、AKIモデル動物である腎虚血再灌流(I/R)マウスを用いて、AKIやその後のCKDの発症におけるHMGB1-RAGE-MR経路の関与について検討を行った。 まずI/Rマウスを作成し、内因性のHMGB1/RAGE軸やMR経路の発現、炎症や線維化に関連する遺伝子発現、臓器障害の程度を評価した。さらにMR拮抗薬前投与群を作成し、同様に評価した。I/R群ではHMGB1/RAGE軸、及びRac1-MR経路の活性化を認め、これらは全てMR拮抗薬により抑制された。さらにI/R群では腎機能障害や尿細管傷害を呈したが、MR拮抗薬により改善し、MCP-1やNFκB、TGF-β、Kim-1等の遺伝子発現を減少させた。またI/Rの7日後ではMR拮抗薬により腎機能障害や組織障害のみならず、生存率も有意に改善した(I/R群:43%、I/R+MRB群:79%)。以上から、HMGB1-RAGE軸とMR経路の連関が、AKIやその後のCKDの発症に関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IRマウスを用いた動物実験の結果から、HMGB1-RAGE軸とMR経路の連関がAKIやその後のCKDの発症に関与する可能性が示唆された。これらの因果関係を証明するために、細胞実験として培養したヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVECs)にHMGB1を添加し、Rac1-MR経路の発現やMCP-1・NFκB等の遺伝子発現を解析した。その結果、HMGB1添加によりMRの核内移行が促進される他、Rac1活性やMCP-1・NFκBの遺伝子発現が亢進し、これらはMR拮抗薬投与により改善した。これらは動物実験の結果を支持するものであり、進捗状況としては概ね順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
I/RマウスにおいてMR拮抗薬が治療効果を示した背景を探索するために、今後マクロファージ発現MRに着目し検証する予定である。予備実験として組織修復に関連するM2マクロファージ関連遺伝子をRT-PCRで解析した所、MR拮抗薬投与群においてYm1、Arg1といった遺伝子発現の増加を認めた。今後免疫染色を行うことにより検証を進めていく。
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