研究課題
基盤研究(C)
本研究では主に、マウスにHIF2阻害薬を投与することによって、1.腎臓のエリスロポエチン (EPO) 産生誘導に与える影響、2.HIF2が腎IRIの病態に与える影響、3.HIF2がDKDモデルにもたらす病態修飾、4.SGLT2阻害薬の腎保護効果におけるHIF2の役割、を検討する。 これらの検討によって、HIF2アイソフォームを介する低酸素シグナルの活性調節がIRIおよびDKDの病態に及ぼす影響が総合的に評価できる。得られる知見は腎疾患の病態解明に寄与するのみならず、新規予防法・治療法の確立にも直接繋がる可能性を有し、医学・薬学のみならず、国民の健康推進に幅広く貢献できる。
本研究では低酸素誘導因子HIF2がマウス慢性腎臓病(CKD)の進展にもたらす影響を検討する。そのため、初年度である当該年度には選択的HIF2阻害薬であるPT2385およびPT2977を用い、HIF2を選択的に阻害する分子機序の検討を行った。HIF応答型ルシフェラーゼ(HREluc)を用いたレポーターアッセイにおいて、PT2385はHIF1α過剰発現によるレポーター誘導を抑制できなかった一方、HIF2α過剰発現による同誘導を有意に抑制した。次に、内在性HIF標的遺伝子の発現に対する影響を評価した。HIF2のみを発現する腎がん細胞株786-Oにおいて、PT2385はHIF2標的遺伝子であるvascular endothelial growth factor(VEGF)やcyclin D1(CCND1)などの発現を選択的に抑制した一方、近位尿細管細胞株HK-2細胞においてはHIF1標的遺伝子であるのglucose transporter 1(GLUT1)やangiopoietin like 4(ANGPTL4)などの遺伝子の低酸素発現誘導を抑制しなかった。PT2977においても同様の結果が得られた。さらに、これらの化合物がHIF2を選択的に抑制する分子機構を検討した。786-O細胞とHK-2細胞に対して、HIF2αおよびHIF1αタンパク発現量をWestern blot 法にて確認したところ、HIF2αおよびHIF1αの蛋白発現量には影響が認められなかった。一方、aryl hydrocarbon receptor nuclear translocator (ARNT) とのヘテロダイマー形成能を免疫沈降法にて検討したところ、PT2385はHIF2αとARNTのダイマー形成を選択的に阻害した一方で、HIF1αとARNTのダイマー形成には影響を及ぼさなかった。
2: おおむね順調に進展している
これまでのところ、研究提案書に記載した研究計画と概ね同じペースで進捗している。
研究仮説の検証自体は概ね順調に進んでおり、現行の方針にて研究を継続する予定。
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