研究課題/領域番号 |
23K07734
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53040:腎臓内科学関連
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研究機関 | 佐野日本大学短期大学 |
研究代表者 |
市川 純 佐野日本大学短期大学, その他部局等, 准教授(移行) (70368207)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ポドサイト / イオンチャネル / TRPC6 / 機械刺激 / タンパク濾過 / 腎糸球体 / ネフローゼ / 陽イオンチャネル / メカノトランスダクション / 腎糸球体濾過 |
研究開始時の研究の概要 |
腎糸球体上皮細胞ポドサイトに発現する陽イオンチャネルTRPC6は、受容体刺激・機械刺激協働時にチャネル応答が減衰すること、チャネル活性がポドサイト特有のアダプター蛋白・ストレスファイバー環境による調節を受けること、同刺激下ではタンパク濾過量が低下することをin vitroで明らかにしてきた。これらの成果を詳細に検討し、TRPC6を軸としたメカノセンシング機構がタンパク濾過抑制シグナルへと変換される分子機序を明らかにする。さらに、in vitroタンパク漏出アッセイによる腎濾過機能の評価と破綻に至る条件の精査および腎濾過機能の改善に有効な薬物の探索を行う。
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研究実績の概要 |
圧刺激やずり応力等の機械的刺激は生体の組織や細胞のシグナル伝達経路にはたらきかけ、増殖や分化、分泌をはじめ様々な応答を引き起こす。transient receptor potential (TRP)チャネルファミリーに属するTRPC6はGタンパク共役型受容体-フォスフォリパーゼC(PLC)系活性化により開く受容体活性型・Ca透過型陽イオンチャネルであり、受容体刺激に続く機械刺激によりその応答が増幅されることがHEK細胞発現系で明らかになっている (Inoue R. et al., Circ. Res. 104:1399-1409, 2009)。 常に高い濾過圧がかかる腎糸球体の濾過壁は血管内皮・基底膜・糸球体上皮細胞(ポドサイト)の3層構造で形成され、構造の破綻によりタンパク尿を呈するネフローゼに至る。ポドサイトに発現するTRPC6の異常はネフローゼ発症と関連深いことを示す先行研究を受け、本研究に先立ち培養ポドサイトを用いてTRPC6チャネル応答を検討したところ、HEK発現系とは真逆の機械刺激応答様式、即ち機械刺激協働作用時にチャネル応答が減衰することを発見した。原発性ネフローゼ症候群である家族性巣状分節性糸球体硬化症 familial focal segmental glomerulosclerosis (FSGS)の原因となるTRPC6変異体ではその応答が変容することも確認した。本研究は、ポドサイトにおけるTRPC6を中心とした特殊なメカノトランスダクション機構が濾過機能を制御する分子機序を明らかにすることを目的とする。2023年度はin vitroタンパク濾過アッセイ系を用いて、受容体刺激と機械刺激の協働作用がタンパク濾過機能を抑制すること、HEK発現系ではTRPC6チャネル活性を抑制する作用を持つcyclic GMPの投与で濾過量に変化が生じることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vitroタンパク濾過アッセイを常に安定して行うために必要な、ポドサイトを多孔質膜上に培養するプロトコルの確立と刺激方法、およびアルブミン漏出量の測定条件を確立した。この実験系を用いて検討した結果、受容体刺激と機械刺激の協働作用がタンパク濾過機能を抑制することを見出した。さらにHEK発現系ではTRPC6チャネル活性を抑制する作用を持つcyclic GMPの投与が濾過量に影響を及ぼすことを明らかにした。これらの成果は学会にて発表した。
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今後の研究の推進方策 |
確立したin vitroタンパク濾過アッセイ系を用いて、野生型TRPC6を発現したポドサイトがタンパク濾過量の抑制を示す受容体刺激・機械刺激条件の範囲を同定する。濾過量が抑制されない、あるいは増加する刺激条件はネフローゼを誘発する病的な環境、例えば高血圧等を反映すると推定される。またFSGS変異体を発現したポドサイトが濾過機能異常を示すかを精査し、TRPC6チャネルの機能とタンパク濾過との関連性について検討する。cyclic GMP投与の効果も併せて検討する。これらのデータを蓄積しつつ、機械刺激時のTRPC6応答減衰が濾過量を制御する分子機構を探る。
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