研究課題/領域番号 |
23K07757
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53050:皮膚科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中村 秀樹 北海道大学, 医学研究院, 助手 (60435956)
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研究分担者 |
柳 輝希 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50755973)
氏家 英之 北海道大学, 医学研究院, 教授 (60374435)
前田 拓哉 北海道大学, 大学病院, 助教 (60979102)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 血管肉腫 / 薬剤スクリーニング / 細胞死 / 細胞周期 / 治療濃度 / 核酸医薬 / 既存薬 / 皮膚癌 |
研究開始時の研究の概要 |
「血管肉腫」は高齢者の頭部・顔面に好発する皮膚悪性腫瘍であり、5年生存率は10%以下という予後不良な疾患である。放射線化学療法が一部の症例で有効であるが、早期に再発・転移をきたし、他に有効な治療法は確立されていない。北海道大学皮膚科研究グループは、血管肉腫腫瘍組織から細胞株を樹立した。血管肉腫培養細胞を使用した薬剤スクリーニングは報告されていない。本研究では5,000種類の既存薬+1,000種類の核酸医薬による薬剤スクリーニングを実施し、血管肉腫に対する新規治療薬を探索する。また、当科における血管肉腫腫瘍の癌ゲノム検索を実施し、治療標的となる遺伝子変異を同定する。
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研究実績の概要 |
本研究では、北海道大学皮膚科で樹立した血管肉腫HAMON細胞(Hoshina et al. J Dermatol Sci 2013)を使用し、4000種類以上の既存薬を用いた網羅的な薬剤スクリーニングの手法により新規治療薬探索研究を実施している。研究計画に基づき、薬剤は初回スクリーニングでは10uMの濃度で投与し、48時間後に細胞のATPレベルをCellTiter-Glo2.0(プロメガ)にて観察する方法を用いた。ポジティブコントロールとして、殺細胞効果が判明している薬剤であるスタウロスポリン(STS:1uM)とパクリタキセル(PTX:10uM)を使用し、ネガティブコントロールとして0.5%DMSO含有培地を使用した。細胞播種数は予備実験により3000個/wellとし、コントロール薬剤の濃度も予備実験により決定した。まず、初回のスクリーニングで約100種類の薬剤に絞りこみ、その後種々の濃度で治療実験を実施した。これらのさらなる絞り込みスクリーニングの結果、現段階で4種類の有望な薬剤が候補として得られており、正常細胞との比較、細胞死・細胞周期に与える影響、アポトーシス解析などの薬剤効果メカニズム解析の準備をすすめている。また、HAMON細胞および臨床血管肉腫腫瘍検体(凍結組織・ホルマリン固定検体)からDNAを抽出し網羅的癌遺伝子変異検索(Human comprehensive cancer panel : QIAGEN)をDeep sequenceにより解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、北海道大学皮膚科で樹立した血管肉腫HAMON細胞(Hoshina et al. J Dermatol Sci 2013)を使用し、4000種類以上の既存薬を用いた薬剤スクリーニングを実施している。スクリーニングの方法は、以下の通りである。第1日目は、96ウェルプレートにHAMON細胞を各ウェルに3000個播種し、80uLのEBM-2培地(ロンザ社)にて培養を開始する。第二日目に、薬剤を含んだ96ウェルプレートに20uLの培地を加え、ピペッティングにて十分溶解し、それを80uL の培養細胞の含まれている培地に加える。各ウェルあたり100uL の培地が含まれることとなり、薬剤最終濃度は10uM となる。第4日目(=治療48時間後)に、Cell titer glo version 2.0を100uL 添加し、Spectramaxプレートリーダーにて細胞のATPレベルを測定した。この初回のスクリーニングにて約100種類の薬剤に絞りこみ、その後、いくつかの希釈濃度で確認用の実験をおこなった。スクリーニングにおけるポジティブコントロールとして、殺細胞効果が判明している薬剤(パクリタキセル、スタウロスポリン)を使用した。スクリーニングの結果、4種類の有望な薬剤が得られており、正常線維芽細胞との比較、細胞死・細胞周期に与える影響の検討などを行っている。
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今後の研究の推進方策 |
得られた4種類の薬剤について、薬剤投与後24・48時間後のDNA content cell cycle analysis (細胞周期解析)、Annexin V-PI アポトーシス解析を行う。正常血管内皮細胞をコントロールとしての治療実験を行い薬剤の治療域を検討する。ヒットした薬剤の薬理作用を考えて、その増殖阻止・細胞死シグナルの解明をおこなう。また、1nMなどの非常に低い濃度で効果を見いだせた場合には、生体腫瘍における治療実験(免疫不全マウスにおいて腫瘍を形成し、その後薬剤を投与する治療実験)を行う。また、HAMON細胞の遺伝子変異情報と、同薬剤の奏効機序を検討し、細胞死誘導のメカニズムを考える。
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