研究課題/領域番号 |
23K07808
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54010:血液および腫瘍内科学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
山崎 宏人 金沢大学, 附属病院, 准教授 (50361994)
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研究分担者 |
中尾 眞二 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (70217660)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 再生不良性貧血 / PNH型顆粒球 / HLA-class Iアリル欠失血球 / PNH型T細胞 / miniscule PNH型顆粒球集団 |
研究開始時の研究の概要 |
0.003%~1%の少数の発作性夜間ヘモグロビン尿症型顆粒球集団(PNH-GP)は、免疫病態による造血不全のマーカーと考えられている。一方、0.0001%~0.002%の極微少(miniscule)のPNH-GP(miniPNH-GP)は、免疫抑制療法が効かなかったPNH-GP陰性の再生不良性貧血症例(AA)でも検出されることから、miniPNH-GPの存在は、免疫病態が関与しない造血不全のマーカーである可能性が示唆される。そこで本研究では、多数のPNH-GP陰性AA例を対象として、miniPNH-GPと治療反応性との関係を前向きに検討する。
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研究実績の概要 |
0.003%~1%の少数のPNH型顆粒球集団(sPNH-GPs)は免疫病態による造血不全のマーカーと考えられている。しかし、これが陰性であっても、40%の再生不良性貧血(AA)患者は免疫抑制療法(IST)に反応して改善する。このような患者では、ISTに対する高反応性と関連するHLA-class Iアリル欠失白血球(HLA(-)L)や少数のPNH型T細胞集団(sPNH-TPs)が検出される可能性がある。一方、0.003%未満のPNH-GPs(miniPNH-GPs)は、sPNH-GPsが陰性でISTに反応しなかったAA患者の60%で検出されることから非免疫病態のマーカーと考えられている。そこで、39人のsPNH-GPs陰性AA患者を対象に、これら3つの予測因子とISTに対する反応性との関係を検討した。 その結果、9人の患者にsPNH-TPsが検出され、その78%がISTに反応した。sPNH-TPs陰性の30人の患者のうち、11人にminiPNH-GPsが認められたが、いずれにもHLA(-)Lは検出されずISTに反応しなかった。このうち4人は小児期に発症したAAであったが、FANC遺伝子やテロメラーゼ関連遺伝子などの胚細胞変異は認められなかった。一方、miniPNH-GPsを認めなかった残りの19例のうち5例にはHLA(-)Lが認められ、そのうちの4例はISTに反応して改善した。一方HLA(-)Lが陰性の他の14人の患者にはISTが奏効した例はなかった。 以上の結果から、sPNH-TPsまたはHLA(-)Lの検索は、sPNH-GPsを欠くすべてのAA患者に対して実施することがISTに対する反応性を予測するうえで重要と考えられた。また、miniPNH-GPsの検出は、sPNH-GPsとsPNH-TPsの両方が陰性のAA患者において、非免疫病態の存在を確認する上で有用と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、①AA、低リスクMDS、赤芽球癆などの非悪性造血不全症例におけるminiPNH-GPsの存在と、免疫抑制療法・トロンボポエチン受容体作動薬(TPO-RA)に対する反応性および予後との関係、②HLA(-)Gや、MDS関連の体細胞遺伝子変異クローンによるクローン性造血とminiPNH-GPsとの関係、③sPNH-GPsがminiPNH-GPsに由来するかどうかの3点を明らかにすることを目的としている。今回の検討で、miniPNH-GPsの存在は、非免疫病態が関与した骨髄不全のマーカーになり得ることが示唆された。しかし、AAでは、TPO-RAが奏効することが知られており、今後は、miniPNH-GPsの存在とTPO-RAに対する反応性との関連を明らかにする必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
少数例の検討ではあるが、ASXL1変異やRUNX1変異が検出されているAA例ではminiPNH-GPsが検出されなかった。このためminiPNH-GPs陽性例では、MDS関連の変異HSPCによるクローン性造血の頻度が低い(造血幹細胞が健康である)可能性がある。この所見を確認するために、miniPNH-GPsの有無が明らかになっている患者を対象としてパネルシーケンシングを行い、骨髄系腫瘍に関連する体細胞遺伝子変異とminiPNH-GPsとの関係を明らかにする。 CAR-T細胞療法を受けた患者では、汎血球減少出現時にsPNH-GPsがしばしば出現する。これらのsPNH-GPsが発病前に存在していたminiPNH-GPs由来であるか否かを明らかにするため、CAR-T細胞療法を受ける悪性リンパ腫患者のminiPNH-GPsの有無を治療前に確認し、それが検出された例を対象として、CAR-T療法後にソーティングされたsPNH-GPsと治療前のminiPNH-GPsの間で同一のPIGA変異が検出されるか否かを検討する。
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