研究課題/領域番号 |
23K07810
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54010:血液および腫瘍内科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
島田 和之 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (50631503)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 悪性リンパ腫 / 異種移植マウスモデル / 臓器指向性 |
研究開始時の研究の概要 |
悪性リンパ腫の異種移植マウスモデルでは、由来となった患者の病変部位などの解剖学的表現型が保持され、臓器特異的な病変形成機序(臓器指向性)があることが推測される。本研究では、臓器指向性を規定する機序を解明するために、各臓器における腫瘍細胞のクローン性と遺伝子発現を検討することにより、各臓器に病変を形成する腫瘍細胞の特性をシングルセルレベルで解明することを試みる。さらに難治性悪性リンパ腫から樹立された異種移植マウスモデルにおける各種分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の治療抵抗性クローンを解析することにより、治療抵抗性機序の解明および難治性病態克服に繋がる有効な治療薬を探索する。
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研究実績の概要 |
同一個体に各臓器におけるクローン性の検討においては、血管内大細胞型B細胞リンパ腫(IVLBCL)患者由来PDX細胞にバーコード標識配列とシングルセル解析用のキャプチャー配列を発現させるプラスミドを導入し、形質導入されたPDX細胞をNOGマウスに移植し、各臓器に形成された腫瘍細胞のクローン性をNGSにて検討した。各臓器に共通する配列が見られた一方で、特定の臓器において観察されるクローンも存在し、各臓器に生着する細胞のクローン性に違いがあることを明らかにした。現在、作成されたプラスミドを導入した細胞がシングルセルRNAシーケンス可能かどうかについて検討を加えている。 さらに治療抵抗性に至った患者より樹立したPD-L1高発現IVLBCL PDXモデルを用いた免疫系ヒト化マウスモデルにおいて抗PD1抗体医薬による治療を行い、治療効果が得られることを確認し、腫瘍残存組織の多重免疫染色を行うとともに、イメージングマスサイトメトリーを用いて残存腫瘍組織に存在する細胞の特徴を明らかにした。 さらにMYC/BCL2関連リンパ腫患者由来PDX細胞を用いた検討において、BET分解薬とBCL2阻害薬の併用治療下における相乗効果の違いに着目し、相乗効果はBET分解薬とBCL2発現に規定され、いくつかのパターンに分類されることを見出した。現在、パターンを規定している因子について解明を試みるとともに、バーコード標識されたMYC/BCL2関連リンパ腫PDX細胞のBET分解薬の耐性化細胞の取得に努めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに同一個体における各臓器のクローン性について検討を進めており、各臓器に形成される腫瘍細胞のクローン性に異同が見られることを確認している。これまでの継代移植における病変形成の知見をクローン性の観点から裏付ける結果であり、有用な知見が得られていると考える。免疫系ヒト化マウスモデルにおいても、抗PD1抗体医薬による治療モデルで残存した腫瘍組織の特徴の検討を多重免疫染色およびイメージングマスサイトメトリーを用いて進めており、残存腫瘍組織においては、疲弊したT細胞が多く含まれることを明らかにしている。さらに、MYC/BCL2関連リンパ腫患者由来PDX細胞を用いた検討では、BET分解薬とBCL2阻害薬の相乗効果の違いから、MYC/BCL2関連リンパ腫の生存シグナルにいくつかのパターンがあることに着目しており、今後有効な治療薬探索などを検討する端緒となる知見を得ている。これらのことから、現在まで概ね順調に進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
同一個体の各臓器のクローン性の検討については、バーコード標識配列とシングルセル解析用のキャプチャー配列を発現させるプラスミドを形質導入しており、バーコード標識配列と対応してシングルセルレベルで発現解析が可能かどうか現在検討している。このシステムの鍵であるため、引き続き検討を進めて行く。またIVLBCL由来PDX細胞はin vitroでの培養が難しく、形質導入が容易ではない。同一個体の各臓器のクローン性は、病型や患者ごとに多様である可能性が高く、病型に関わらず形質導入が可能なPDX細胞にも検討を拡大しながらデータを収集していく。また、免疫系ヒト化マウスモデルを用いた解析については、抗PD1抗体医薬で残存した腫瘍組織の特徴について検討を進めている。残存腫瘍組織についてレーザーマイクロダイゼクションによる解析に着手しており、今後さらに検討を進めて行く。また、IVLBCLに対してはBTK阻害薬の治療モデルについても検討を進めているが、現在までにバーコード標識したPDX細胞での検討は行っていない。これまでの検討から臓器間、個体間において治療効果に相違が見られることから、バーコード標識したPDX細胞での検討を今後進めていく。 MYC/BCL2関連リンパ腫モデルについては、BET分解薬を用いた検討でBCL2阻害薬との併用で高い治療効果が観察されている。一方で治療効果が乏しい細胞も認められており、令和6年度は、それらの細胞の耐性化克服に繋がる有効な治療薬の探索に着手し、有効な新規併用療法の探索を行っていく。
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