研究課題/領域番号 |
23K07816
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54010:血液および腫瘍内科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
宮田 喜代子 九州大学, 医学研究院, 助教 (40533005)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 急性骨髄性白血病 / アポトーシス / ベネトクラクス / 薬剤併用療法 / Bcl-2 / DNA- Encoded Library |
研究開始時の研究の概要 |
白血病の治療成績は、化学療法、分子標的療法、造血幹細胞移植法の進歩にも関わらず、 長期生存率は30%に満たず、新規治療法の開発が急務である。白血病難治性を規定する要因として、患者体内での白血病クローンの多様性が挙げられる。このように多様性に富んだ多種の白血病クローンの根絶には、多剤併用療法が有効であるが、臨床上での薬剤併用療法は、ほぼ経験的に構築されているのが現状であり、革新的な分子標的薬の開発が望まれている。本研究では、細胞・個体レベルの遺伝子異常を背景とする難治性白血病を克服することを目的として、白血病治療のキード ラッグと併用する分子標的薬の開発と、その分子機序について解析する。
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研究実績の概要 |
Bcl2阻害剤(一般名ベネトクラクス:VEN)は、急性骨髄性白血 病(AML)、慢性リンパ性白血病 (CLL)、多発性骨髄腫 (MM)に対する新たな治療薬として、FDA, PMDA承認された分子標的薬である。VENは、抗アポトーシス因子であるBcl2を標的とし、Bcl2に結合することで不活性化しているアポトーシス実行因子(BaxやBak)を競合して遊離させ、白血病細胞において速やかなアポトーシスを誘導する新たなキードラッグとして注目されている。一方で、標的蛋白質であるBcl2の過剰発現や他のアポトーシス抑制因子への依存などといった、アポトーシスを制御するBcl2ファミリー蛋白質群の発現バランス変化や遺伝子異常に起因する、VEN耐性クローンの存在が問題となっている。 所属研究室では、VENに対して抵抗性を示すマウスAML細胞を用いて、Bcl2阻害剤存在下でCRISPR/Cas9法を用いた全ゲノムスクリーニングを行い、欠失が薬剤感受性を有意に高める因子、すなわち薬剤併用療法の標的となり得る因子として、ミトコンドリア外膜に局在する膜型ユビキチンリガーゼMARCH5を同定した。本研究では、March5欠失がBcl2阻害剤と合成致死性を示す分子機序の解明とMARCH5阻害剤のスクリーニングによる新規薬剤併用療法の開発を目的として研究を進めている。 本研究では、NoxaがMARCH5の基質であることを、新規に見出した。また、上記スクリーニングによりVEN感受性に関与する因子としてMARCH5と同時に同定されたユビキチン結合酵素(E2)UBE2J2は、MARCH5やNoxaと複合体を形成し、細胞内Noxa発現量を制御していることを明らかにした。さらに、MARCH5複合体がVEN感受性を亢進する分子機構についても、生化学的手法を用いて詳細を解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、遺伝子異常を背景とする難治性白血病を克服することを目的として、白血病治療のキードラッグと併用する分子標的薬の開発と、その分子機序についての解明を目的としている。現在までに、VENと薬剤併用療法に用いる標的として同定されたMARCH5、協働するユビキチン結合酵素(E2)としてUBE2J2/UBE2K、その基質を決定し、VEN感受性を制御する分子機構について解析した。MARCH5複合体がVEN感受性を亢進する分子機構としては、MARCH5欠失によりNOXA蛋白質が蓄積し、MCL1のBH3結合グルーブを飽和させることでVENによってBCL2から放出されたBAXがMCL1に捕らわれることなく効率よくミトコンドリア膜に挿入、活性化し、アポトーシスを速やかに誘導する機構を提唱した。 分子標的薬の開発としては、DNA-Encoded Library (DEL)を用いてMARCH5に結合する化合物を同定する予定である。現在、大腸菌発現系を用いたMARCH5リコンビナント蛋白質の精製に成功しており、DNA-Encoded Library(DEL)を用いた阻害剤スクリーニングを行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
1年目は、MARCH5複合体がVEN感受性を亢進する分子機構について解明した。今年度以降は、MARCH5阻害剤のスクリーニングを実行する。スクリーニングについては、大腸菌発現系を用いたMARCH5リコンビナント蛋白質の精製に既に成功しており、現在、DNA-Encoded Library(DEL)を用いた阻害剤スクリーニングを行っているところである。DELは、WuXi AppTecより無償で入手したものであり、スクリーニング後、次世代シーケンシングによるシーケンス頻度に応じた順位付けを行い、ヒット化合物を特定する。 同時に、MARCH5の基質蛋白質の発現量変化を指標とした2次的評価を行う為に、ノックイン技術による、ヒトAML培養細胞を用いた評価系を構築する。ノックイン技術により、過剰発現を伴わない生理的な条件下における標的蛋白質のユビキチン-プロテアソ ーム系での分解を簡便に解析できる。基質発現量を検討する評価系については、1年目に既に検討しており、適切なタグをMARCH5の基質に付加する予定である。 また、2次スクリーニングにおけるヒット化合物を用いて、 CETSA (Cellular Thermal Shift Assay)にて、ヒット化合物と標的分子(MARCH5など)の細胞内における結合を評価する。
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