研究課題/領域番号 |
23K07834
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54010:血液および腫瘍内科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
尾路 祐介 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (20294100)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | WT1 / がん代謝 / 分子標的 |
研究開始時の研究の概要 |
WT1遺伝子は白血病や様々な固形悪性腫瘍に高発現する癌遺伝子である。本研究は、腫瘍細胞に発現するWT1タンパクが複数の代謝経路の代謝酵素と直接結合し代謝ネットワークを制御すること、それによりWT1が「がん代謝のキープレ-ヤー」として腫瘍の発生や悪性化に重要な役割を果たすことを明確にする。そのため、我々のこれまでの研究でWT1が活性を制御する可能性が示された代謝経路の酵素とWT1タンパクとの結合(PPI)、その結合インターフェイスの詳細、WT1-代謝酵素タンパク複合体の構成因子を明らかにし、さらにWT1と代謝酵素のPPIをターゲットとする新たながん分子標的治療を開発する。
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研究実績の概要 |
われわれはこれまでにWT1遺伝子が白血病や様々な固形悪性腫瘍において高発現し、がん遺伝子機能を果たしていることを明らかにしてきた。 さらに、a) 代謝酵素Y1、Y2がWT1タンパクの新規結合タンパクであること、およびb) WT1と代謝酵素Y1,Y2がWT1の同じ領域と相互作用し、このタンパク間相互作用PPI が白血病および固形悪性腫瘍に対する分子標的治療の新たな標的となりうることを明らかにした。そこで、c) WT1-代謝酵素Y1、Y2 の PPI をターゲットとする化合物の開発に着手しリード化合物を取得した。2023 年度は、 WT1 と代謝酵素 Y1 および Y2 の PPI をターゲットとする化合物について理解を深め、化合物の安定性や溶解度を改善するとともにより強い抗腫瘍効果を得ることにフォーカスし研究を進めた。成果としては、1)AMED BINDS構造展開ユニットのご支援のもと化合物の抗腫瘍活性に寄与する構造の同定および最適化を進めた結果、抗腫瘍活性にすぐれサブマイクロのIC50を示す化合物を同定できた。2) この化合物は標的細胞のWT1発現レベルに相関して抗腫瘍活性を示し、これはWT1と代謝酵素のPPIを標的とした新規抗腫瘍剤のコンセプトを支持するものである。さらに、WT1と代謝酵素の形成する複合体の役割を明確にするべく、精製用タグを付加したWT1タンパクを高発現する悪性腫瘍細胞の樹立を進めている。樹立できれば、WT1を含むタンパク複合体の精製の効率を向上させタンパク複合体の構成因子の同定や複合体の特性の解析を進めることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗腫瘍活性にすぐれ、創薬コンセプトの検証に用いることのできるケミカルプローベとなる化合物を同定できた。これについては予想を上回る進捗である。 一方WT1と代謝酵素のPPIに関与する領域の構造情報の取得を目的に、WT1全長タンパクの発現・精製を試みている。2023年度は大腸菌を用いたWT1全長タンパクの発現精製を種々の精製用タグおよび複数の宿主大腸菌を用いて試みたが、タンパクの凝集が主たる原因となり目的タンパクの精製には至らなかったため全体としては概ね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の問いは白血病に代表されるWT1 発現悪性腫瘍で「WT1 タンパクの PPI を介したがん代謝促進の果たす役割およびメカニズム」は何なのか? さらに WT1 と代謝酵素の PPI をどのように制御し、腫瘍を抑制するか?である。 前者については、1)WT1タンパクが相互作用するY1およびY2以外の代謝酵素とも相互作用する可能性がある。WT1 タンパクの PPI を介したがん代謝促進の果たす役割を明確にするため、Y1、Y2以外の代謝酵素との複合体形成について計画に従って解析を進める。精製用のタグ付きWT1タンパクの高発現細胞株を樹立できたあら、さらにWT1と代謝酵素でsequentialに精製することで、WT1と代謝酵素により形成される複合体の構成成分を明らかにする。 また、これまでに得たPPI阻害活性を持つ化合物を用いてWT1が代謝酵素と結合し形成する複合体の機能を明らかにする。 後者については2023年度にin vitroでの抗腫瘍活性にすぐれた化合物を取得することができた。しかし、医薬品開発を目指すうえではさらなる抗腫瘍活性や安定性の改善が必要である。そのためWT1 と代謝酵素の PPIに関する構造情報をとることができれば、構造情報に基づいた構造展開が可能になり化合物の最適化が加速する。そのため、WT1タンパクの発現精製について、大腸菌以外の動物種細胞での発現精製を試みるとともに全長のみではなく、部分タンパクとしての発現精製にもトライし、早期にWT1タンパクとbinding partnerである代謝酵素とのPPIに関する構造情報を得る予定である。
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