研究課題/領域番号 |
23K07848
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54010:血液および腫瘍内科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
渡邊 慶介 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 主任研究員 (60847466)
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研究分担者 |
寺倉 精太郎 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (40625141)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | CAR-T細胞 / CART細胞療法 |
研究開始時の研究の概要 |
キメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞療法 (CAR-T細胞療法)は、従来の治療が無効な血液腫瘍に対し治癒をもたらし得る免疫細胞療法であるが、半数以上の患者で再発を来し、他の治療法への移行決断に必要な効果・再発予測因子の同定や、効果を規定するCAR-T細胞の作用機序の解明が必要である。これまでの研究で、CAR-T細胞の長期維持や輸注後晩期の増幅が治療効果を規定することが示唆され、T細胞の免疫記憶 (メモリー化)が重要な役割をはたすことが想定されるがその詳細は明らかにされていない。本研究では、CAR-T細胞のメモリー化に注目し、その動態、分子学的機序、さらに、治療効果予測因子としての意義を明らかにする
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研究実績の概要 |
本研究課題では、CAR-T細胞療法において、1) CAR-T細胞メモリー化の効果・再発予測バイオマーカーとしての意義を明らかにする、また、2) CAR-T細胞メモリー化の動態と分子学的機序を明らかにすることを目標に、主に臨床検体を用いた解析を進めた。研究分担者寺倉の所属する名古屋大学付属病院にて抗CD19CAR-T細胞療法 (キムリア、イエスカルタ、もしくは、ブレヤンジ)をうけた患者より定期的に末梢血検体を取得し、フローサイトメトリー、シングルセルRNAシーケンス解析 (sc-RNAシーケンス)等の詳細解析を実施した。今年度は、新たに、30例の患者より、マルチカラーフローサイトメトリー、8例の患者検体よりシングルセルRNAシーケンス解析を実施した。その結果、投与前患者原材料、および、末梢血経時検体おいて、患者間にて、TCF1, TBET, CD45RA, CCR7にて規定されるT細胞メモリーフェノタイプに大きな差があることを見出し、また、非奏功患者の一部において、TCF1陽性のメモリー形質T細胞の完全喪失が観察された、終末分化状態が示唆された。また、末梢血中CAR陽性細胞、CAR陰性細胞の比較検討を行ったところ、メモリー化、活性化、疲弊マーカー等の形質が、陰性、陽性群で高度に類似しており、導入されたCARそのもののみならず、宿主(患者)の液性因子が、CAR-T細胞フェノタイプ、形質を規定する可能性が示唆された。これらの知見と基に、血清サンプルのプロテオミクス解析を実施し、次年度以降詳細解析を行うこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CAR-T細胞療法実施後50%程度の奏功、30%程度の奏功が得られることが想定され、50例程度の解析にてメモリー化を中心としたバイオマーカー候補の同定が可能と想定される。本報告1年間にて30例の新規症例とその解析が完了しており、経過は順調である。さらに、フローサイトメトリー(FCM)に加え、8例のsc-RNAシーケンス解析が完了し、TBET,TCF陽性細胞の動態の患者間差など、新規知見が得られている。以上より、おおむね順調に進展しており、研究期間内での完遂が可能と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
CAR-T細胞療法において、T細胞の機能は導入されたCARに規定されることが想定されるが、患者末梢血におけるCAR陽性T細胞、CAR陰性T細胞の比較検討を行ったところ、予想に反し、メモリー化、活性化、疲弊マーカー等の形質が、陰性、陽性群で高度に類似していた。今後、症例を増やし、再現性を確認するとともに、患者データの集積を継続し、治療結果との結び付け解析を行う。これにより、CAR陽性T細胞分画のみならず、CAR陰性T細胞分画の重要性を検証する。また、CARによらない理由のひとつの仮説として、宿主の液性因子が、CAR-T細胞フェノタイプ、形質を規定する可能性が想定される。今後、採取済み血清サンプルを用いてプロテオミクス解析を実施し本仮説を検証する。メモリー化を規定する転写因子TCT7発現、終末分化、疲弊を規定するTox, T-bet, PD-1発現等を基にメモリー化動態を明らかにするため、T細胞のメモリー形成評価において確立された系であるOT-1T細胞とovalbumin (OVA)発現腫瘍を用いたシステムをベースに検討をすすめる。
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