研究課題
基盤研究(C)
成人組織球症の腫瘍組織の免疫組織染色、遺伝子変異解析を行う。末梢血cell free DNAのBRAF V600E変異の有無、変異を有する場合には治療による推移などを測定する。機械学習アルゴリズムを用いた生検組織の解析を行う。これらの解析データと臨床情報を集約し、予後因子や治療効果予測因子の解析を行い、臨床現場に還元できるように組織球症診療の参照ガイドに解析結果を反映させる。
2005年4月から2023年4月まで当院での診療歴のあるLCH75例とnonLCH15例(ECD5例、LCH/ECD混合型3例、LCS3例、HS2例、RDD2例)に関して後方視的にデータ解析を行った。腫瘍組織の全エクソーム解析、組織BRAF V600EのPCRもしくは組織VE1免疫染色、血漿cell-free DNAのBRAF V600E変異(cfBRAF V600E)のいずれかを行った症例はLCH55例、nonLCH14例であり、何らかのMAPK経路の遺伝子変異を認めた症例はそれぞれ41例(41.8%)、13例(92.9%)であった。更に、LCHにおいて血漿中cfBRAF V600E陽性症例は41例中11例(26.8%)であり、cfBRAF V600E陽性と陰性でそれぞれOSは74.1%と100%(p = 0.017)とcfBRAF V600E陽性症例で予後不良であった。全身療法を受けたnon-LCH13例中、8例(61.5%)は治療抵抗性であった。複数回の化学療法抵抗性の組織球肉腫1例でMEK阻害薬に反応を示した。LCH症例においてはcfBRAF V600E陽性症例は予後不良であること、化学療法抵抗性で知られているnonLCH症例において90%以上の症例でMAPK経路の遺伝子変異を認めたことなどから、これらの症例に対して遺伝子変異を標的とした治療は有望な治療となりうる可能性があり、今後、日本においても積極的に新規薬剤開発を進めていく必要がある。
2: おおむね順調に進展している
自施設の組織球症例の遺伝子変異解析が実施できた。
自施設の組織球症症例の残検体で病理免疫化学染色と臨床データをアップデート、候補となる予後因子をピックアップする。
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日本臨床 別冊 血液症候群 第3版
巻: 別冊 ページ: 480-485
Cancer Science
巻: 114 号: 9 ページ: 3687-3697
10.1111/cas.15879