研究課題/領域番号 |
23K07865
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54010:血液および腫瘍内科学関連
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
田村 志宣 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (10364085)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 遺伝子再構成障害 / 炎症性腸疾患 / DNAリガーゼIV / LIG4症候群 / 病原性T細胞 / ヘルパーT細胞 / T細胞受容体 / TCRレパトア解析 / 遺伝子再構成 / DNAリガーゼ IV (LIG4) / 低形成性変異 |
研究開始時の研究の概要 |
免疫グロブリンやT細胞受容体の遺伝子再構成に関与する機能分子の低形成性変異により,リンパ球の分化が顕著に障害されながら, 残存するリンパ球が増殖・活性化され, 多彩な自己免疫様病態を発症する. 申請者は, 獲得免疫不全, 潰瘍を伴う腸炎を呈した自験例から遺伝子再構成に必須なDNAリガーゼ IV(LIG4)にアミノ酸置換を来す新規変異を同定した. その変異を導入したマウスでは, 獲得免疫不全に加え, ヘルパーT細胞とマクロファージの活性化を特徴とする炎症性腸疾患を発症することを見出した. 本変異マウスの解析を進め, 免疫不全下で生じる炎症性腸疾患病態の分子基盤, 細胞生物学的基盤を明らかにする.
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研究実績の概要 |
申請者は、神経発達障害と獲得免疫不全を来す患者から、遺伝子再構成に必須の機能分子であるDNAリガーゼIV(LIG4)をコードする遺伝子に新規アミノ酸置換バリアント(p.W447C)を見出し、この遺伝子バリアントを導入したマウス(Lig4W447Cホモ変異マウス)の解析を進めた。このマウスでは、遺伝子再構成障害による獲得免疫不全など患者病態が再現された。また、腸管を中心とした主要臓器で炎症が生じること、RAG遺伝子欠損マウス(リンパ球欠失マウス)との交配によりこの炎症病態が消失することを見出した。さらに、この変異マウスで認められた腸炎は、組織学的・細胞生物学的検討からTh1細胞がドミナントであることを見出した。今年度は、この変異マウスの病態形成に関わるT細胞の特性について解析を進めており、現時点でいくつかの結果を得ることができた。
1)Lig4W447Cホモ変異マウスの脾細胞をRAG遺伝子欠損マウスへ移入したadoptive T cell transferを行った。移入4週間後には、腸炎の発症、及び腸管組織の炎症細胞の浸潤を見い出した。この変異マウスの脾臓に存在するT細胞集団が、病原性を有することを見出した。 2)次に、このホモ変異マウスの脾臓と腸間膜リンパ節では、T細胞受容体(TCR)の発現について、RNA-Seq解析を用いて解析を行い、野生型マウスに比べてT細胞クローンに大きな偏りがあることを見出した。 2)続いて、野生型マウスとLig4W447Cホモ変異マウスの脾臓で、シングルセル解析を行い、この変異マウスの脾臓では、Th1細胞がドミナントであることを見出し、これまでの結果に合致した。さらに、TCRレパトア解析では、野生型マウスに比較して、Lig4W447Cホモ変異マウスでは、TCR遺伝子のclonotypeが減少し、oligoclonalなTCRの候補を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、Lig4W447Cホモ変異マウスでは、遺伝子再構成障害を背景にリンパ球依存性の腸炎を発症することが明らかにした。さらに、この炎症の病態形成には、脾臓に存在する病原性T細胞、特にTh1細胞が関与することが明らかにした。一方で、シングルセル解析やTCRレパトア解析を行うにあたり、腸管組織や腸間膜リンパ節からのT細胞の抽出率・生細胞率が低く、かなり苦戦している。現在、これら組織から効率よく単離できる条件を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
1)Lig4W447Cホモ変異マウスの腸管組織において、シングルセル解析やTCRレパトア解析が実施するための条件検討を行なう。 2)Lig4W447Cホモ変異マウスの脾細胞から磁気ビーズを用いて特定のT細胞クローンを除去し、adoptive T cell transferを行い、そのクローンが腸炎発症に必須かどうか検討を行う。 3)今年度、選出したTCR Vα・Vβについて、TCR retrogenic法を用いて導入した骨髄細胞を移植し、発症の有無を解析することにより、病原性Th1細胞のTCRを同定する。 4)腸炎の治療という観点から、IFNγ中和抗体の投与なども検討する。
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