研究課題/領域番号 |
23K07868
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54010:血液および腫瘍内科学関連
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
今井 陽一 獨協医科大学, 医学部, 教授 (10345209)
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研究分担者 |
合山 進 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (80431849)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | AML / NK細胞 / CD112 / DNAM-1 / TIGIT / CD155 |
研究開始時の研究の概要 |
AMLは腫瘍免疫を逃れ残存し再発をもたらす可能性が示され注目されている。免疫チェックポイント分子DNAM-1/TIGIT/CD155/CD112に注目した。これまでの解析で、白血病細胞に発現するCD155/CD112を標的とし腫瘍免疫を賦活化するDNAM-1を高発現したNK細胞が高い抗AML効果を示すことを示した。本研究では、(1) DNAM-1高発現NK-92細胞株の治療効果増強手法の開発、(2) iPS細胞由来NK細胞を用いたDNAM-1遺伝子導入による細胞療法の開発、(3) DNAM-1及びCD155/CD112のAML治療におけるバイオマーカーとしての検討、を行う。
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研究実績の概要 |
先行研究において、NK細胞の抗AML効果においてAML細胞で発現するCD155/CD112が重要な役割を果たすことを明らかにした(Kaito Y, Imai Y, et al. Oncology Letters 23, 51. 2022)。本研究では、AMLにおいてCD112の発現が亢進している症例は、全生存期間が短く予後不良であることを既存の症例データベース解析で明らかにした。CD112発現亢進例では、予後不良染色体異常の割合が高かった。一方、分子標的治療薬FLT3阻害薬の治療標的となるFLT3遺伝子異常の割合はCD112低発現症例と比較して、有意に低かった。これらの結果から、CD112発現亢進例は予後不良であるものの、分子標的療法を含む既存の治療では十分に対応することができないと考えられた。治療反応との関連に関する自験例の解析では、末梢血のNK細胞でDNAM-1発現が低い症例あるいはTIGIT が高い症例は治療反応が不良の傾向があった。これらの知見を基に、CD155/CD112を標的とし腫瘍免疫を賦活化するDNAM-1を高発現したNK細胞の抗AML効果について検討した。ヒト由来NK細胞株NK-92細胞からDNAM-1高発現細胞を作製したところ、抗AML効果が増強された。また抗腫瘍効果はCD155/CD112ダブルノックアウトAML細胞に対してはみられず、CD155/CD112依存性が確認された。さらにルシフェラーゼを用いたin vivo imaging system (IVIS)を用いて、DNAM-1遺伝子導入NK細胞の有効性を生体内で示すことができた。以上の解析からDNAM-1発現NK-92細胞療法が予後不良AMLに対する新規免疫療法として期待された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1) DNAM-1高発現NK-92細胞株の治療効果増強手法の開発 NK-92細胞株の抗AML効果増強のため、DNAM-1高発現及びTIGITノックアウトNK-92細胞を作製した。TIGITノックアウトNK-92細胞では細胞傷害活性に関わる遺伝子発現が変化しなかった。一方、DNAM-1発現NK-92細胞ではNK細胞の免疫賦活化・細胞傷害活性に関わる遺伝子の発現が増強していた。さらにCD155/CD112依存性の抗AML効果が見られた。DNAM-1高発現NK-92細胞の抗AML効果はCD155/CD112発現が高い症例由来の細胞に対して確認された。さらに、抗AML効果はin vivoで証明された。これらの成果をHaematologica 109, 1107-1120, 2024に報告した。 (2) DNAM-1及びCD155/CD112のAML治療におけるバイオマーカーとしての検討 Webで公開されたAML200症例の解析からCD155/CD112発現と予後の関連について解析した。CD155発現の高低は予後との関連がみられなかったが、CD112発現の高い症例では有意に予後不良であった。CD112発現の高い症例の染色体異常や遺伝子異常のプロファイルを解析したところ、予後不良染色体異常やNRAS、TP53などの予後不良の遺伝子異常の割合が高かった。一方、分子標的療法が導入されているFLT3遺伝子異常の割合については有意に低かった。以上から、既存の分子標的療法の適応にならない予後不良AMLの新たな治療標的としてCD112が想定された。治療反応との関係については有意な結果は得られなかった。 (3) iPS細胞由来NK細胞を用いたDNAM-1遺伝子導入による細胞療法の開発 DNAM-1遺伝子導入したiPS細胞から分化させたNK細胞を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
(1) DNAM-1及びCD155/CD112のAML治療におけるバイオマーカーとしての検討 AML細胞でのCD155/CD112発現と、NK細胞におけるDNAM-1の発現が治療反応とどのように相関するか明らかにする。年間30例のAML新規症例についてNK細胞のDNAM-1及びAML細胞CD155/CD112発現をフローサイトメトリーで解析する。初発時、寛解獲得時、再発時で検体を採取する。AMLの再発時には従来の高用量シタラビン療法などの化学療法に加えて、アザシチジン+BCL-2阻害薬などの分子標的治療が導入され高い治療効果が得られる場合がある。再発症例に対しても、再寛解獲得時、不寛解時、再発時で検体を採取し、同様にNK細胞DNAM-1及びAML細胞のCD155/CD112発現をフローサイトメトリーで解析する。このようにして、DNAM-1及びCD155/CD112についてAML治療におけるバイオマーカーとしての意義を検討する。 (2) DNAM-1高発現NK-92細胞株の治療効果増強手法の開発 DNAM-1・CD3ζなどの活性化ドメイン・CD28, 4-1BBなどの共刺激ドメインから構成されるシグナル伝達分子で構成されるDNAM-1 CAR NK-92細胞の開発を進める。 (3) iPS細胞由来NK細胞を用いたDNAM-1遺伝子導入による細胞療法の開発 iPS細胞由来DNAM-1-induced NK細胞と標的AML細胞株を共培養した際の、NK細胞のCD107a発現をフローサイトメトリーで解析する。RNAseqを用いてiPS細胞由来DNAM-1-induced NK細胞の遺伝子発現をコントロールiPS細胞由来NK細胞と比較して、DNAM-1導入によって変化する遺伝子群を解析する。
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