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Type I IFNとTLR9による抗体産生細胞分化誘導機構のトランスオミクス解析による解明

研究課題

研究課題/領域番号 23K07886
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分54020:膠原病およびアレルギー内科学関連
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

岩崎 由希子  国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 客員研究員 (30592935)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
キーワード全身性エリテマトーデス / 抗体産生細胞 / 自然免疫シグナル / 1型インターフェロン / B細胞 / トランスオミクス / I型インターフェロン / 自然免疫 / 代謝変容
研究開始時の研究の概要

申請者らは全身性エリテマトーデス患者の末梢血各種免疫担当サブセットにおけるトランスクリプトームおよび全ゲノムシークエンスデータの統合解析を通じて、B細胞における代謝制御が病態形成に重要であり長期予後とも関連があることを明らかにし、その背景にtype I IFNおよびTLR9を介した抗体産生細胞への分化過程が重要であることを示した。本研究においては、これらのシグナルを介してB細胞にもたらされる代謝変容の過程を、マルチオミクスデータを時系列で取得しトランスオミクス解析することで詳細に記述し、抗体産生細胞分化を制御する観点で、治療介入すべき階層・治療標的分子の新たな同定に繋げることを目標とする。

研究実績の概要

全身性エリテマトーデス(以下SLE)の病態解明目的に、これまでに申請者らは健常人とSLE患者末梢血単核球から免疫担当細胞を分取し、トランスクリプトーム解析、オープンクロマチン解析を行い、全血由来のゲノム解析のマルチオミクス解析を加えることで、B細胞のミトコンドリア機能と酸化ストレス制御がSLEにおける抗体産生細胞分化にとって重要であることを突き止めた。更に、それを誘導する刺激として、Toll-like receptor (TLR) 9を介した自然免疫シグナルと、type I interferon (IFN)シグナルの共存が鍵となることを示し、B細胞の代謝変容として、ミトコンドリア呼吸鎖を介した酸化的リン酸化亢進のみならず、必須アミノ酸であるヒスチジンの細胞内への取り込みが、抗体産生細胞に寄与していることが明らかとなった。B細胞にTLR9およびtype I IFN刺激が入った際に、どのような刺激伝達経路、遺伝子発現を介して代謝変容に至るかの詳細に関しては未解明であり、この制御系の全体像を理解することは、SLEおいて自己抗体産生細胞として重要なB細胞を標的とした新規の治療標的探索にも繋がると考えられる。
本研究では、トランスオミクス解析を用いて各オミクス階層をつなぐことで、TLR9とtype I IFNのコンビネーション刺激による抗体産生分化経路の全体像を詳述することが目的である。特に、代謝産物階層であるメタボローム解析や、リン酸化プロテオーム解析において、時系列で細胞を一定数確保するためには、ヒト末梢血由来B細胞や、マウス二次リンパ組織由来B細胞では限界があることから、ヒトB細胞株であるRamos B cellを用いて条件検討を進めている。同細胞株はEBウイルスの発現を認めず、TLR9を高発現し、ナイーブB細胞の活性化を概観するための細胞として適していると考えた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

まず、Ramos B cellを用いて、TLR9とtype I IFN刺激による代謝変容について、ミトコンドリア呼吸としての酸素消費量(Oxygen Consumption Rate: OCR)と解糖系指標としての細胞外酸性化速度(Extracellular Acidification Rate: ECAR)を測定するFlux Analyzerを用い、時系列で生じる代謝リプログラミングについて評価を行った。刺激開始後5時間程度経過後より、刺激によるOCRおよびECARの上昇を認め、24時間刺激後にはOCRの上昇が明らかとなり、その傾向は72時間後にかけて強調されていくことが判明した。同様にATP産生についても、Combination刺激により、時間経過とともにミトコンドリア由来のATP、解糖系由来のATPともに増加していくことが明らかとなった。72時間経過する前段階においては、細胞表面マーカー上の抗体産生細胞への分化傾向は明らかとならないことから、シグナル伝達から、代謝変容、遺伝子発現変化、タンパク質発現という順に抗体産生細胞を特徴づける変化が生じることが示唆された。シグナル伝達には、シグナル伝達分子のリン酸化や翻訳を制御する基質をリン酸化するキナーゼのリン酸化などが重要であるが、興味深いことに、type I IFNやCpG単独刺激に比べて、Combination刺激により、代謝制御につながるキナーゼのリン酸化が強く起きることが判明し、この変化は24時間から72時間経過するにつれて強まることから、遺伝子発現が時間経過に伴い様々に誘導されていることが推測された。代表的な糖新生抑制薬であるメトホルミンは、ミトコンドリア呼吸鎖Iに結合し、酸化的リン酸化を抑制することが知られているが、Combination刺激によるOCR亢進を抑制し、細胞表面マーカーの発現誘導にも影響を与えた。

今後の研究の推進方策

トランスクリプトーム、リン酸化プロテオーム、メタボロームの各オミクス階層を取得するうえで、適切な時系列ポイントを決定するために、既知の遺伝子発現、リン酸化タンパクなどをポジティブコントロールとして条件検討を行う。具体的にはtype I IFNであればリン酸化STAT1、CpGであればリン酸化S6などを確認し、質量分析結果を得た際の結果の信頼性の担保を取得する。平行してRamos B cellを用いても、抗体産生細胞分化の表現型を評価できることの確認として、Plasmablast分化を特徴づける細胞表面マーカーの発現をFACSにて評価するとともに、分化の鍵と言われているいくつかの転写因子に関しては、時系列条件下でcDNA合成を行い、定量的PCRについて発現強度を検証する。また、培養上清を用いてIgG、IgMなどの免疫グロブリンの産生能についても評価を行う。上記の検討を踏まえた上で決定した時系列ポイントにおいて、無刺激と、Combination刺激に対してオミクスデータを取得し、トランスオミクスの手法を用いて各階層をつなげ、type I IFNとCpGによる代謝変容に至るまでの経過の詳細解明を行う。最終的に候補となった重要なパスウェイや新規標的分子については、Ramos B cellを用いた遺伝子導入や遺伝子ノックアウト実験や、ヒト末梢血より分離したB cellを用いて、検証実験を行う。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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