研究課題/領域番号 |
23K07915
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54020:膠原病およびアレルギー内科学関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
永井 宏平 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (70500578)
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研究分担者 |
安齋 政幸 近畿大学, 先端技術総合研究所, 教授 (30454630)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 自己免疫疾患 / 自己抗体 / 翻訳後修飾 / 質量分析 / 定量プロテオミクス / 酸化修飾 |
研究開始時の研究の概要 |
関節リウマチなどの自己免疫疾患では、血清中に自己成分に対して反応する自己抗体が産生される。我々は近年、酸化修飾を導入したマウスMyeloperoxidase (MPO) をマウスに免疫することで、MPOに対する自己抗体が産生されることを示した。本研究では、この「翻訳後修飾の異常が自己抗体産生を引き起こす」という現象が普遍的な現象であるかどうかを、血清アルブミンのような自己抗原性の低いタンパク質を用いて検証する。高性能の質量分析装置を用いて酸化修飾の種類と部位と量を正確に分析し、自己抗体産生量との関係を解析することで自己抗体の産生を誘導する修飾異常の条件を明らかにする。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、まず、血清アルブミンを様々な濃度のH2O2(0~200 mM)とFeCl2(1 mM)で37℃、30分間処理し、酸化修飾が導入される条件を検討した。H2O2処理したアルブミンをトリプシン消化し、生じたペプチドをnanoLC-MS/MSで分析した。ペプチドのアミノ酸配列と修飾の種類と部位は、295種類の翻訳後修飾を考慮したデータベース検索で同定し、親イオンのXICを用いて定量した。アルブミン中の3か所のMetの酸化を指標に、酸化修飾が導入される条件を検討したところ、H2O2が20 mMの時に最も効率的に酸化が導入されることが示された。ANCA関連血管炎で観察される自己抗体MPO-ANCAの対応抗原Myeroperoxidase (MPO)で同様の研究を行った場合は0.02 mMのH2O2処理で同程度の酸化が見られており、アルブミンは自己抗原であるMPOよりも酸化を受けにくいタンパク質であることが示された。 次に、我々は、20 mMと200 mMのH2O2と1 mMのFeCl2で酸化修飾を導入したマウス血清アルブミン (MSA)をC57BLマウス(n = 5 ~ 6)に免疫した。10 ugの酸化MSAをアジュバントと混合し、Day0とDay21に2回腹腔内に投与した。Day34に採血を行い、血中の抗MSA抗体価をELISA法で測定した。未処理MSAを免疫したControlマウス (n = 5)の抗MSA抗体価の平均値+2SDを閾値として、抗MSA抗体の陽性率を評価した所、20 mM H2O2処理アルブミンを免疫した場合は陽性率80%、200 mM H2O2処理アルブミンを免疫した場合は50%となった。以上のように、血清アルブミンのような自己抗体の報告のないタンパク質においても酸化修飾を導入してから免疫することで、自己抗体の産生を誘導できることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度の目標は、「自己抗体産生の報告のないタンパク質において、酸化修飾を導入し免疫することで、自己抗体が産生される条件を見出す」ことであった。研究実績の概要で述べたように、自己抗体の報告のない血清アルブミンに酸化修飾を導入する条件を見出し、実際に酸化修飾タンパク質をマウスに免疫することで自己抗体を産生を観察することができた。そのため、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度にマウス血清アルブミン (MSA) に酸化修飾を導入する条件と、酸化MSAのマウスへの免疫によって抗MSA自己抗体を産生する条件を見出した。令和6年度は、この実験を更に発展させ、様々な条件で酸化修飾を導入したMSAの酸化修飾の部位と量を網羅的に解析すると共に、マウスに免疫した時の自己抗体の産生量を測定して、両者の相関を分析する。それによって、自己抗体が産生される条件、つまり、タンパク質の自己抗原性を上昇させる条件を見出すことを目標とする。そのため、まずは、タンパク質の酸化修飾を網羅的に定量するための新しい定量法の確立を目指す。具体的には、タンパク質の網羅的定量法であるSWATH質量分析法を翻訳後修飾の網羅的な定量に応用する方法を開発し、その有効性を従来法と比較することで評価する。本方法の有効性が実証されれば、次に酸化MSAの酸化修飾の部位と量を網羅的に解析し、自己抗体産生能力(自己抗原性)との関連を分析する予定である。また、アルブミン以外の自己抗原性の低いタンパク質についても、酸化修飾の導入によって自己抗原性を上げることができるか検討を始める予定である。
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