研究課題/領域番号 |
23K07930
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54030:感染症内科学関連
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
打矢 恵一 名城大学, 薬学部, 教授 (70168714)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 肺MAC症 / クラリスロマイシン耐性株 / 高解像度融解曲線法 / 薬剤耐性 / 耐性菌検出法 / 新規抗菌薬 |
研究開始時の研究の概要 |
MAC(Mycobacterium aviumとM.intracellulareの近縁な2菌種の総称)による感染症は,世界的に増加しており,とくに日本の罹患率は国際的にもかなり高い水準にある。また,肺MAC症に対する薬物治療の有効率は低く,その原因は本菌の抗菌薬に対する抵抗性や耐性の獲得が大きな要因である。 本研究では,肺MAC症の治療効果を高めるため,薬剤耐性菌の迅速検出法の開発,耐性菌出現における薬物療法の検証,さらに耐性化しやすいMAC菌の遺伝学的な特徴を解明する。また,高い抗菌活性を持つ創薬シード化合物の探索を行い,得られた成果を治療に難渋する肺MAC症の治療に応用する。
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研究実績の概要 |
2023年度の本研究課題の研究成果について、当該年度の研究実施計画に基づいて、肺MAC症の薬物治療におけるclarithromycin(CAM)に対する耐性菌の出現を迅速で非常に簡便に実施できる検出法の開発を行った。肺MAC症とは、Mycobacterium aviumとM. intracellulareの近縁な2菌種による肺感染症の総称であり、本邦の罹患率は国際的にもかなり高い水準にある。さらに、肺MAC症に対する薬物治療の有効率は低く、キードラッグであるCAMに対して耐性化が起きた場合、治療方針の見直しが必要になるため早期に耐性化を判断する必要がある。そこで、CAM耐性株の検出について、迅速で非常に簡便なリアルタイムPCRを用いた高解像度融解曲線(High Resolution Melting:HRM)法の開発を行った。その結果、MAC菌のCAM耐性株の検出を行うためのHRM解析法を確立することができた。 HRM法は、特殊なDNA結合色素を用いて、PCR産物の融解曲線を解析することによって、遺伝子変異が起きた変異株を迅速かつ簡便に識別できる。本法を用いる大きな利点は、一般に肺MAC症患者に対して、病院の検査業務においてMAC菌の菌種同定が行われおり、その方法の一つに患者喀痰からDNAを抽出した後、TaqManプローブを用いたリアルタイムPCRによる解析方法がある。HRM法は、菌種同定に続いて患者由来DNAを用いて、CAM耐性株の検出をリアルタイムPCRにより迅速かつ簡便に実施することができる。さらに、MAC菌のCAM耐性は、23S rRNAのドメインV領域の2058と2059番目のアデニンの点変異で起きる。この領域では、M. aviumとM. intracellulareの塩基配列が一致しているため、同じプライマーやプローブを用いて、それぞれの耐性菌の検出が可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の本研究課題の目的は、治療に難渋する肺MAC症の治療の観点から、M. aviumとM. intracellulareのCAMに対する耐性株の検出について、迅速で非常に簡便に実施できるHRM法の開発を行うことである。当該年度の研究実施計画に基づいて行った研究の進捗状況から、下記の理由により現在までの達成度については、おおむね順調に進展している。 CAM耐性(>32 μg/mL)のMAC菌について遺伝学的な解析の結果、ほとんどのCAM耐性菌はこれまでの結果から23S rRNAのドメインV領域の2058と2059番目のアデニンの点変異で起きていることが判っている。さらに、これまでの報告からアデニンの点変異にはGA型、TA型、AC型、CA型、AG型、AT型の6種類の変異型が報告されている。 HRM法は、ResoLight Dye(ロッシュ)を使用することで、PCR産物のTm値を解析することによって、遺伝子変異が起きた耐性菌を識別する方法である。そこで、23S rRNAの2058と2059番目の塩基を含む約500 bpの領域を増幅できるようにプライマーを設計し解析を行った結果、感受性株(AA型)と耐性株を区別することができた。しかし、6種類の変異型を区別することが出来なかった為、非蛍光標識プローブ法による検討を行った。その結果、非蛍光標識プローブを使用することで、一回のアッセイで全ての種類のCAM耐性菌を識別する検出方法を開発することができた。現在、得られた成果について、特許を申請中である。以上の結果から、HRM法はM. aviumとM. intracellulareのCAMに対する耐性株の検出において、迅速で非常に簡便に実施できることが明らかとなり、肺MAC症の薬物治療に大きく寄与することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策については、当該年度の研究実施計画に基づいて、日常の検査業務において行われている患者喀痰より抽出したDNAを用いて、実際にCAM耐性株の検出がHRM法により可能か検証する。今回のHRM法による解析は、CAM耐性株を培養後、抽出キットを用いてDNAを抽出して行った。しかし、臨床現場においては患者の喀痰からDNAを抽出し、それを用いて解析を行う必要がある。そのような溶液は、DNA量が少なく、また不純物が含まれているため、実際に臨床材料を用いた検証が必要となる。 さらに、国立病院機構 東名古屋病院において分離された肺MAC症患者由来株と臨床データ(2009年~2022年)を使用させていただき、抗菌薬治療における薬剤感受性の変化を調べると共に、CAM耐性株出現における薬物療法の検証を行う予定である。
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