研究課題/領域番号 |
23K07938
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54030:感染症内科学関連
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(名古屋医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
大出 裕高 独立行政法人国立病院機構(名古屋医療センター臨床研究センター), その他部局等, 研究員 (20754162)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 1分子シークエンス / ナノポアシークエンス / ウイルスゲノム / HIV / 配列多様性 |
研究開始時の研究の概要 |
HIVは変異しやすく、持続感染するウイルスであるため、感染から時間が経つにつれて、感染者内HIVのゲノム配列とその多様性の大きさが変化することが示唆されている。しかし、“感染者内でどれ程多様なゲノム全長配列をもつHIVバリアントが存在しているか”はいまだ十分な理解がなされていない。そこで本研究では、1 分子長鎖型シークエンサーに基づく“感染者内HIVのゲノム全長配列多様性解析システム”を構築し、ゲノム全長での配列多様性と感染病期との関係性を明らかにする。感染者内HIVのゲノム全長での配列多様性の理解は、HIVの感染者内進化(免疫逃避、薬剤耐性)のメカニズム解明にも繋がるものと考える。
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研究実績の概要 |
HIVは変異しやすいウイルスであり、感染者内では異なる配列をもつ複数のバリアントが観察されうる。しかし、それら感染者内のHIVバリアント個々に対する全長ゲノム配列情報はいまだ乏しく、それら配列がどの程度多様であるか、また、HIV感染病期の進行と配列多様性の間に関係があるか、については十分に理解がなされていない。本研究では、1分子シークエンスであるナノポアシークエンス技術を着目し、感染者内HIVバリアントのゲノム配列多様性の理解を深めようと試みている。当該年度においてまず、基盤となる、ナノポアシークエンス技術を活用したHIVバリアントの近全長ゲノム配列解析システムの構築を行なった。構築したシステムの精度を検証するため、配列既知HIV分子クローン由来ウイルスの配列を解析した。その結果、配列決定精度は99.9%に達し、サンプル内で15%以上を占める変異をシークエンスエラーと区別して同定できることを見出した。続いて、構築したシステムを利用し、所属施設にて診断した新規感染者106名分の臨床サンプルを用いて、各サンプル中HIVゲノムの配列決定を行なった。サンプル内で15%以上を占める塩基について、別途実施したサンガー法の結果と比較したところ、98%を超える一致率が認められた。これらの結果から、微小に存在する塩基も含めて、構築した解析システムにより、サンガー法と同等に塩基を決定ができることを明らかにした。今後、得られた近全長ゲノム配列に存在するシークエンスエラーを補正することで、感染者内のHIVバリアントの近全長配列の多様性の特徴を、より詳細に解析しようと計画している。本研究の成果は、感染者内におけるHIVの進化・選択の理解につながるものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度においてまず、HIVバリアントの近全長ゲノム配列解析システムの構築を行なった。解析システムとして、1分子シークエンスのひとつ、ナノポアシークエンス技術を活用した。配列既知であるHIV分子クローン由来ウイルスの配列を解析し、構築したシステムの精度を検証したところ、配列決定精度は99.9%に達し、サンプル内で15%以上を占める変異をシークエンスエラーと区別して同定できることを見出した。また、所属施設において診断した新規感染者106名分の臨床サンプルについて、各サンプル中HIVバリアントの配列決定を行なった。サンプル内で15%以上を占める塩基について、サンガー法で別途決定した塩基と比較した結果、98%を超える一致率が認められた。これらの結果から、微小に存在する塩基も含めて、構築した解析システムにより、サンガー法と同等に塩基を決定ができることを明らかにした。一方、構築したシステムで得られたゲノム配列には、<0.1%の頻度ではあるものの、シークエンスエラーが存在しており、HIVバリアント個々の近全長ゲノムを決定する障害となった。そこで、これらエラーを補正する方法の開発に着手している。補正法の開発により、感染者内のHIVバリアントの種類とその頻度、さらにはそれらが形成する集団の配列多様性の精緻な理解につながるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
構築した配列解析システムで得られる近全長HIVゲノム配列には、シークエンスエラーが、<0.1%の頻度で存在する。このエラーを補正することで、感染者内にどのようなHIVバリアントが、どの程度の頻度で存在するかを解析することを試みる。また、得られた配列から算出した配列多様性と、HIV感染病期の進行の指標となる臨床検査値(ウイルス量とCD4+陽性T細胞数)を比較し、配列多様性と病期の間に関係性があるかを検証していく。その一方で、解析システムにて、感染者由来の追加サンプルのウイルスゲノム解析を行なっていくことで、解析システムの向上をめざしていく。 ここまでの研究はHIVのウイルスゲノムRNAを対象としてきた。感染者では、染色体にHIVゲノムのコピーをDNAの形で埋め込んだプロウイルスDNAゲノムも存在している。今後、プロウイルスゲノムDNAについても同様の解析を実施していくことを計画している。
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