研究課題/領域番号 |
23K07944
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54030:感染症内科学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
前田 賢次 鹿児島大学, 医歯学域ヒトレトロウイルス学系, 教授 (50758323)
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研究分担者 |
土屋 亮人 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, その他 (80535708)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | HIVリザーバー / cART / HIV治癒 / 多剤併用療法 / HIV |
研究開始時の研究の概要 |
本研究計画ではHIV治癒の妨げとなっているHIV潜伏感染(リザーバー)細胞の除去を可能とする新しい治療法の確立を最終目的とした研究を行う。まず治療中のHIV感染者の末梢血中に微量に残存するHIV潜伏感染細胞の量的・質的評価法の確立と生体でのダイナミクス解析、さらに体内のリザーバーサイズを反映するバイオマーカーの探索を進める。これによりHIV感染者の体内のリザーバーサイズの正確な予測を可能にすると共に、本研究で得られるHIV潜伏感染細胞を用いたEx Vivoでの薬効評価系により、新しいHIVリザーバー細胞治療薬の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
多剤併用療法(cART)の導入以降、HIV感染症治療は劇的に改善されたが、治癒に至る治療法はない。これはHIVリザーバーと呼ばれるHIV潜伏感染細胞がcART治療中も感染者体内に残存するためである。これに対して、HIV潜伏感染細胞活性化剤 (latency reversing agent: LRA)などを用いて潜伏感染細胞を活性化させた後に除去する治療法が提唱されているが、臨床で効果を発揮できるかはまだ不明である。このようなHIVリザーバーを標的とした治療法の確立には、HIV潜伏感染細胞の患者ごとの量的・質的評価を可能とする測定系の構築が必要となる。 本研究ではHIV潜伏感染(リザーバー)細胞の除去を可能とする新しい治療法の確立を目的とした研究を行って来た。まず治療中のHIV感染者の末梢血中に微量に残存するHIV潜伏感染細胞の量的・質的評価法の確立(Ex vivo reactivation法、およびデジタルPCRを用いたIPDA解析法)と生体でのダイナミクス解析、さらに体内のリザーバーサイズを反映するバイオマーカーの探索を進め、複数の因子が同定、RNA-seqを用いた解析も進めている。これらの多くは感染症、あるいは癌に関連すると報告されているものであるが、組み合わなどにより、HIV残存リザーバー量の指標、さらにはHIV潜伏感染細胞(リザーバー細胞)の活性化、不活化など、リザーバー治療の標的となるが可能性が考えられる。 このような成果により、HIV感染者の体内のリザーバーサイズの正確な予測を可能にすると共に、本研究で得られるHIV潜伏感染細胞を用いたEx Vivoでの薬効評価系も併用して新しいHIVリザーバー細胞治療薬の開発を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、HIV患者検体を用いた、患者末梢血に残存する微量なHIVリザーバー細胞の高感度検出系の構築とそのリザーバー量に相関する臨床因子・バイオマーカーの探索を行った。これまでに20名以上の末梢血を用いたウイルス再活性化実験を行っており、近年の強力な治療を受けている患者においてもその末梢リザーバー量にはかなり差があることを明らかとした。さらにリザーバーとされる細胞内HIVプロウイルスにもウイルスを産生できない欠損ウイルスが存在するなど、量的・質的な解析技術の改善が必要とされている。今回、デジタルPCRを用いた解析法(IPDA法)の確立を含め、詳細な残存リザーバー解析研究がまとまり、残存リザーバー量を反映する各種臨床因子や血清学的マーカーの同定と併せて、現在論文投稿中である。 以上のように、治療中の患者末梢血を用いたリザーバー解析・バイオマーカー同定に向けた研究において、既に論文投稿の段階にあり、さらに詳細な解析が進行中であることから予定通りの進展と評価している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発された高感度リザーバー測定法によって測定、群分けされたHIV治療中患者データから見出された臨床・血清・細胞学的因子において、残存リザーバーの評価因子(マーカー)となり得る因子について、さらに詳細に評価する。すでにRNA-seqを用いた解析も進めており、リザーバーサイズに関連すると考えられる宿主因子の候補も多数同定されている。これらの多くは感染症、あるいは癌に関連すると報告されているものであり、必ずしも単独では特異的マーカーとはならないが、組み合わせることによって高確度での指標となる可能性はある。さらにこれらの因子の発現を変化させることによって、HIV潜伏感染細胞(リザーバー細胞)の活性化、あるいは不活化などが可能となることが考えられ、これはHIVリザーバーの治療につながることとなる。現在、主な因子について、HIV感染、あるいは潜伏に影響する具体的なメカニズムについての検討を始めている。 次年度以降に継続される研究によって、cART治療中のHIV患者の残存リザーバーの特性解析の進展が期待される。これは将来の治癒治療に向けた貴重な情報となる。
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