研究課題/領域番号 |
23K07961
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54040:代謝および内分泌学関連
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
後藤 薫 山形大学, 医学部, 教授 (30234975)
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研究分担者 |
諏佐 真治 山形大学, 医学部, 准教授 (90322635)
小澤 昌子 山形大学, 医学部, 助教 (50754636)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 生活習慣病 / 糖尿病 / 脂質代謝酵素 / グルコース取込 / エネルギーセンサー / AMPK / エネルギー代謝 / 情報伝達 / 脂質代謝 / DGK |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、普遍的な脂質代謝に関わる酵素ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)を一つの視点として、日常診療で遭遇する「炎症応答」「生活習慣病」におけるエネルギー代謝の情報制御メカニズムについて、「解糖系 vs 脂肪酸β酸化」、「細胞内エネルギーと酸化・還元状態」、「細胞内エネエルギーセンサー」、「肥満、糖代謝、脂質代謝指標とDGK遺伝子のSNP関連解析」に着目した研究を行う。「DGK遺伝子のSNP関連解析」においては、山形県舟形町の糖尿病検診受診者を対象として構築した臨床データベースを用いて、実際にヒトにおいてDGKが疾患感受性遺伝子として肥満、糖代謝、脂質代謝に関与するか検討する。
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研究実績の概要 |
生体膜リン脂質は、グリセロ脂質ジアシルグリセロール(DG)のリン酸化を起点として合成されるが、このDGはエネルギー代謝および情報伝達系の両者と密接に関与する。申請者等は長年、DGのリン酸化酵素DGキナーゼ(DGK)の遺伝子クローニングと解析を行い、DGKファミリーの分子・発現局在、生理機能の解明に従事してきた。本研究では、普遍的な脂質代謝に関わる酵素DGKを一つの視点として、日常診療で遭遇する「炎症応答」「生活習慣病」におけるエネルギー代謝の情報制御メカニズムを解析する。本年度はまず、「生活習慣病」の代表疾患である糖尿病との関連を調べる目的で、各DGKアイソザイムとグルコース取込との関係を精査した。ゼータ型DGKおよびイプシロン型DGKの欠損細胞(mouse embryonic fibroblast;MEF)を用いた細胞レベルの実験を行なったところ、ゼータ型DGK-KO MEFおよびイプシロン型DGK-KO MEFの両者ともに、野生型MEFを比較してグルコース取込が、1.2~1.3倍程度に増加することが明らかとなった。グルコース取込は、細胞のエネルギー状態に応じて変化することから、細胞内エネルギーセンサーであるAMP-activate protein kinase (AMPK) の活性化状態を解析したところ、ゼータ型DGK-KO MEFでは、AMPK活性が亢進していたが、イプシロン型DGK-KO MEFにおいては、AMPK活性は野生型と同等であり、差は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、細胞レベルの実験において、各DGKアイソザイムとグルコース取込との関係を解析した。ゼータ型DGKおよびイプシロン型DGKの欠損細胞を用いた実験において、ゼータ型DGK-KO MEFおよびイプシロン型DGK-KO MEFは両者ともに、グルコース取込が亢進することが判明した。細胞のエネルギー状態は、グルコース取込に大きな影響を与えることから、細胞内エネルギーセンサーAMPKの活性化状態を検討したところ、ゼータ型DGK-KO MEFではAMPK活性が亢進する一方、イプシロン型DGK-KO MEFにおいては野生型と同等であった。 これらの結果から、ゼータ型DGK欠損細胞と、イプシロン型DGK欠損細胞では、異なるメカニズムによってグルコースの取込が促進されることが示唆される。ゼータ型DGK欠損では、エネルギーセンサーの異常によりグルコース取込が促進されている可能性がある。またイプシロン型DGK欠損細胞では、グルコーストランスポーター自身に起因する可能性がある。 以上のように、今年度は細胞レベルの実験による初期データを得ることができたので、おおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の進め方として、これまで得られた細胞レベルの実験結果の分子メカニズムを追求し、さらもノックアウトマウスを用いた個体レベルの実験を行う。 具体的には、細胞レベルの実験において、エネルギーセンサーAMPKの活性化機構、グルコース取込に関する種々のグルコーストランスポーターの発現、などを解析する。また細胞のエネルギー産生に関わるミトコンドリア機能や、エネルギー消費に関わる様々な指標を精査する。個体レベルの実験においては、糖負荷試験や絶食実験、寒冷実験等を試行し、生体エネルギーの需要と供給体制を精査する。
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