研究課題/領域番号 |
23K08002
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54040:代謝および内分泌学関連
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
蔭山 和則 弘前大学, 医学研究科, 准教授 (30343023)
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研究分担者 |
村澤 真吾 弘前大学, 医学研究科, 助教 (70829390)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | クッシング病 / 下垂体腫瘍 |
研究開始時の研究の概要 |
クッシング病は、下垂体adrenocorticotropic hormone (ACTH) 産生腫瘍からの自律的なACTH分泌によって慢性的なグルココルチコイド過剰状態を呈する疾患である。クッシング病の診断と治療は困難なため、新たな診断法と治療法の開発は、臨床内分泌領域の重要な課題と考えられている。本研究でクッシング病の重要な病態と推定している下垂体ACTH産生腫瘍細胞における「グルココルチコイド抵抗性」や「自律性ACTH産生を引き起こす腫瘍細胞の特性」に関しては未だ明らかではない。よって、腫瘍細胞におけるグルココルチコイド抵抗性やACTH産生に関与する遺伝子と遺伝子を修飾するエピジェネティックな機序を解明して同病の病態を明らかにする。
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研究実績の概要 |
グルココロチコイドは、活性化された視床下部、下垂体、副腎系を抑制し、ストレス緩和やホメオスターシスに不可欠である。グルココロチコイドによるネガティブフィードバック機構の機序として、FK506-binding immunophilin (FKBP) が、グルココルチコイド受容体シグナルを修飾して、グルココルチコイドによるネガティブフィードバック調節に関わることが明らかになった。FKBP4はGRの核内移動へ、FKBP5はネガティブフィードバック調節に関与している。 選択的histone deacetylase (HDAC) 6阻害剤として最も用いられているtubastatin Aは、汎HDAC阻害剤よりも安全性が高いと報告されている。更に、グルココルチコイド受容体の分子シャペロンであるheat shock protein 90機能を破綻させるはたらきについても報告がある。Tubastatin AにACTH合成及び細胞増殖抑制作用を認めたため、更に、強力なグルココルチコイド作用を有するdexamethasoneを添加し、これら抑制作用へ与える影響について検討した。Tubastatin A添加は、proopimelanocortin (Pomc)、pituitary tumor-transforming gene 1 (Pttg1)及びHdac6 mRNAを低下させ、更に、細胞増殖も抑制させた。Dexamethasone添加もPomc及びPttg1 mRNAを低下させた。Tubastatin Aとdexamethasoneの同時投与では、Pomc mRNA低下には相加効果を認めた一方で、Pttg1 mRNAの低下で相加効果は認められなかった。よって、tubastatin AによるACTH産生及び細胞増殖の抑制効果は、高コルチゾール血症下でも同作用を維持する可能性があると考えられた。更に、HDAC6は、heat shock protein 90を介して、グルココルチコイド作用を修飾させる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
免疫チェックポイント阻害剤によって生じる下垂体機能低下症の取り扱いを取りまとめ、クッシング病の診断と治療の手引きの改訂版作成に貢献した。下垂体における研究では、グルココルチコイドによるネガティブフィードバック調節についてFKBP4/5の協調作用を明らかにして、下垂体ACTH産生細胞においてFKBP5がネガティブフィードバックを解除させる方向にはたらくことを解明した。現在、クッシング病の病態生理機構と新たな薬物の治療作用について、順調に研究を継続している。
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今後の研究の推進方策 |
GHRP-2試験の診断の有用性について検討するため、症例数を増やしている。本検討によって、クッシング病におけるGHRP-2投与によるACTHおよびコルチゾールの増加反応とその程度を、他の下垂体腫瘍および異所性クッシング症候群と比較し相違点を探求することとしている。下垂体ACTH産生腫瘍組織においてGHRP受容体の遺伝子と蛋白の発現について確認する。既知のUSP8やUSP48変異の有無の違いでACTHおよびコルチゾール反応の程度に変化があるか解析する。 ソマトスタチン受容体5アナログの奏功条件について検討する。ヒトACTH産生腫瘍において、ソマトスタチン受容体 5 (SSTR5) の高い発現を認め、ソマトスタチンアナログpasireotideが臨床使用されている。これまでの検討では、SSTR5を介した細胞増殖抑制機序が明らかになった。ソマトスタチンアナログの作用には、SSTR5の発現に加えて、細胞内分子であるβ-arrestinとG蛋白共役受容体キナーゼ (GRK) の発現が重要である。本研究では、これらに選択的なsiRNAや過剰発現ベクター(購入及び作成済み)を導入して、治療効果の変化を調べる。ヒトACTH産生腫瘍において、pasireotideによるACTH産生と腫瘍増殖の抑制効果とβ-arrestin1/2及びGRK2/5/6のサブタイプ発現レベルの相関性について調べる。更に、USP8やUSP48変異の有無とこれら抑制効果について検討する。また、mammalian target of rapamycin (mTOR) 阻害剤がソマトスタチンアナログとの抗腫瘍効果を高めることが報告されており、本腫瘍での相加相乗作用について調べる。これらの検討によって、ソマトスタチンアナログが奏功する条件について明らかにする。
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