研究課題/領域番号 |
23K08006
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54040:代謝および内分泌学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西澤 均 大阪大学, 大学院医学系研究科, 寄附講座准教授 (20379259)
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研究分担者 |
前田 法一 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教授 (30506308)
藤島 裕也 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (10779789)
喜多 俊文 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい准教授 (10746572)
福田 士郎 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (00896467)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 高尿酸血症 / キサンチン酸化還元酵素(XOR) / 脂肪肝・非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD) / 動脈硬化性心血管疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では、脂肪肝・非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)患者で著しく血中での蛋白量・活性が上昇するキサンチン酸化還元酵素(XOR)に着目し、過剰な肝由来血中XORが直接動脈硬化に与えるメカニズムについて遺伝子改変技術を用いて実験医学的に明らかにする(基礎研究)。これまで高尿酸血症患者に対するXOR阻害剤の心血管疾患に対する効果については一定の結果が得られていない中で、NAFLD病態を基盤とする患者群に対するXOR阻害の動脈硬化症への有効性を、複数の観察研究と前向き介入研究サブ解析(臨床研究)で明らかにし、高尿酸血症における動脈硬化予防に対する新たな治療戦略を確立する。
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研究実績の概要 |
【臨床研究】肝障害合併症例に対するXOR阻害薬の投与が、心血管リスク低下に寄与するかを検証する目的で、既存の介入試験の事後解析を行った。高血圧症を合併する高尿酸血症患者にXOR阻害薬トピロキソスタット(TPX)を24週間投与したBEYOND-UA studyにおいて、血管伸展性指標(CAVI)は有意な変化はみられなかった。そこで、自治医科大学との共同研究により、登録された患者63例を対象として、ベースラインのALT値でALT低値群/高値群に分けサブ解析を行った。血中XOR活性は、測定し得た症例において、ベースラインのALT値が高値になるに従って強い上昇を認めたが、TPX投与後は顕著に抑制された。また、ALT高値群ではカットオフ値が高くなるほどベースラインのCAVI/baPWVは高値であったが、TPX投与後は血中XOR活性の抑制に伴い、血清尿酸値とは独立して、ALT≧30U/Lおよび≧40U/Lの群で有意なCAVIの低下が認められ、baPWV はいずれのカットオフ値においてもALT高値群で有意に低下した。 【基礎研究】高XOR血症が動脈硬化症を進展させる機序として、XOによって産生されるROSなどが想定されることから、血中XORの直接的な動脈硬化症への作用起点を明らかとする目的で、マウス肝臓のcDNAから、XOR(条件に応じてXDHないしはXOに変換)をクローニングし、さらにXO固定型XOR(W338A/F339L mutation)およびXDH固定型XOR(C995R mutation)を作製した。これらのプラスミドをトランスフェクションしたHEK293T細胞の細胞溶解物に、XORの基質であるヒポキサンチンを添加し、DCFアッセイによりROS産生を評価した結果、XO型ではROS産生の亢進が認められた一方で、XDH型では抑制された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで申請者らが報告してきたデータに基づく仮説(NAFLD/NASHを基盤とする病態に対する(血中)XOR阻害が心血管リスク低下に寄与する)を介入試験のサブ解析で明らかにし、論文報告できたことで本研究計画は順調に経過していると考えている。XOR阻害薬トピロキソスタットのコンパウンド効果ではなく、XOR阻害薬のクラス効果なのかを検証することは臨床上重要と考え、現在もうひとつのXOR阻害薬フェブキソスタットの介入試験(PRIZE研究)についても肝酵素高値群低値群に分類して効果検証するサブ解析の準備を進めており、そちらも順調に進捗しており、臨床研究については極めて順調に経過している。一方、基礎研究については、現在変異型XORの作製とその酸化ストレス産生能をin vitroで検証できたところで、そのin vivoでの効果は今後2年間の検討課題として残っているところで“おおむね順調”に経過しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
【臨床研究】今回のBEYOND-UA studyのサブ解析で得られた結果が、他の対象群でも確認されるかを検証するため、 FBXを用いた前向き無作為化非盲介入試験であるPRIZE study8の事後解析を行い、肝機能障害合併症例における頸動脈内膜中膜複合体厚や血管伸展性指標をはじめとする心血管指標に対する、XOR阻害薬の有効性の評価を開始している。また、住友病院人間ドック施設との共同研究を計画している。当施設は年間10000例前後の受診者数を有し、ほぼ全例に腹部エコーを、100~200例程度に脈波伝導速度(2019年~)を、800~900例程度に頸動脈エコー(2007年~)を行っている。また複数回受診している受診者が相当数含まれる見込みである。NAFLDの合併が疑われる症例が、その後に動脈硬化性疾患含めどのような臨床経過を辿るか、またその経過に関与する代謝・内分泌因子等を探索する予定である。 【基礎研究】これまでの検討結果から、高尿酸血症の中でも特にNAFLD合併症例では、XOR阻害薬による動脈硬化症の進展予防・改善が期待できると考えられた。 今後基礎研究では、シグナルペプチドの付加および、N末端にIgG-Fcフラグメントを融合した分泌型の各XORのコンストラクトを作製する。さらに、長期間肝臓で発現可能なpLIVEベクターの投与によりこれらのXORを過剰発現させたマウスを用いて、動脈硬化症に対する肝XORの内分泌学的意義について検証する。
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