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下垂体ホルモンACTHのプロセッシング経路を解明する

研究課題

研究課題/領域番号 23K08016
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分54040:代謝および内分泌学関連
研究機関獨協医科大学

研究代表者

佐藤 元康  獨協医科大学, 医学部, 助教 (20418891)

研究分担者 杉本 博之  獨協医科大学, 医学部, 教授 (00235897)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
キーワード下垂体腫瘍 / オートファジー / ACTH / ペプチドホルモン / pituitary / hormone / peptide / secretion
研究開始時の研究の概要

下垂体ホルモンACTHは前駆体タンパク質POMCとして転写・翻訳されたのちに、前駆体のまま、あるいは切断などを経た成熟型のいずれかとなって分泌される。しかし、これらの経路がどのように選択されるのかについて、また経路の相互的な関わりについては不明な点が多い。そこで、本研究ではホルモン前駆体の運命決定の分子メカニズムを明らかにする。経路選択の異常は下垂体ACTH産生腫瘍で観察される過剰なホルモン産生や、異所性ACTH産生腫瘍における不完全なACTH関連ペプチドの生成を引き起こしているものと考えられ、本研究の成果はクッシング症候群の治療戦略へ向けた新規のアプローチを提供する。

研究実績の概要

ホルモン分泌小胞の分離と解析:ACTH前駆体タンパク質POMCとEGFPの融合タンパク質をマウス下垂体腫瘍細胞株AtT-20に遺伝子導入すると、細胞質に顆粒状の局在パターンとして観察された。これらの顆粒構造はACTH抗体を用いた細胞免疫染色像と重なることから、ACTH分泌小胞であると考えられる。さらにホルモン分泌小胞を輸送するタンパク質として知られているRab3のEGFP融合タンパク質をAtT-20に遺伝子導入し、GFP-affinity beadsによりRab3被覆分泌小胞を精製した。この精製小胞画分についてウェスタンブロットをおこなったところ、実際にACTHの存在を確認することができた。今後は他の分泌小胞マーカータンパク質も含めて小胞精製を進め、POMCからACTHへプロセッシングされる過程と、それに対応する輸送小胞の対応関係を詳細に明らかにしていく。
細胞レベルにおけるホルモン合成の解析:課題申請時にACTHのプロセッシングに関与する分子候補のひとつとしてPLD3を得ていた。本年度はAtT-20細胞においてPLD3のノックアウト細胞を作製した。この細胞ではPOMCとその中間体ペプチドの量の上昇と同時にACTH低下がみられることから、PLD3がPOMCからACTHへのプロセッシングに大きな役割をもっていることが示唆された。現在、PLD3の細胞内局在や相互作用するタンパク質の同定を試みている。
論文報告:AtT-20細胞においてオートファジーを阻害すると細胞増殖とACTH産生が低下することを示した。また、化学療法に用いられるテモゾロミドとの2剤併用によって阻害効果が増強されることを示し、クッシング病への適用可能性を実証した。この結果をもとに、オートファジーとACTHのプロセッシングの関わりついて研究を進行中である(Satou M. et al., MCE, 2024)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の研究により、既知のACTH分泌小胞マーカータンパク質(Rab3)を足がかりとして、細胞内に形成されるホルモン分泌小胞を非破壊的に取り出すことに成功している。今後はこの手技を用いて他のマーカータンパク質(クラスリン、Rab5等)についても同様の実験を重ねることで、ACTH分泌小胞の成熟とACTHプロセッシング状態の対応関係を詳細に知ることが出来る。
また、遺伝子ノックアウトの実験から、PLD3がPOMCからACTHが生成されるホルモン成熟過程に深く関与していることが示された。しかし本タンパク質の分子機能は不明であることから、PLD3の細胞内局在を調べることと並行して、PLD3と相互作用するタンパク質の同定をおこなっている。現在までに幾つかの小胞輸送タンパク質がPLD3結合因子として見つかりつつあり、生化学的な検証実験をおこなっていく計画である。
以上のように研究計画通りに実験成果が得られている一方で、オートファジーがACTHを大量に産生する仕組みを支えていることを実証し、国際内分泌専門誌にて発表した。しかし、オートファジーが恒常的にACTH産生のためのエネルギーを供給している仕組みは不明であり、ACTH分泌小胞の成熟におけるオートファジー関連タンパク質の関与についても調べる意義は高いと思われる。今後はこれらを考慮しながら計画を遂行していくことで、下垂体腫瘍におけるホルモン過剰産生メカニズムの全体像に近づける可能性が大きい。

今後の研究の推進方策

実験手技上の課題解決:実績の項で示した通り、現在までのところ分泌小胞の分離にはGFPに対する抗体ビーズを用いて濃縮している。この方法の利点は蛍光顕微鏡下で生細胞でのGFP融合マーカータンパク質の発現レベルや局在を事前に確認できる点にある。しかし、一方でGFP抗体ビーズは高価であるため、今後のスケールアップに際しては研究費を圧迫することが予想される。そのため、過去の類似研究を参考に、比較的安価であるヘマグルチニン(HA)エピトープによる分泌小胞の分離・精製を試みる予定である。GFPと並行して使い分けることでコストと収量のバランスを鑑みながら実験を進める。なお、すでにFLAGエピトープについて試みたが収量が低いため、このエピトープを用いた実験は中止している。
課題の伸展:本年度に受理された原著論文(Satou et al., MCE, 2024)で示した通り、下垂体腫瘍細胞は大量のACTH産生のためにオートファジーに依存していることが明らかとなった。これは本課題提案のきっかけとなった発見を実証した成果である。「POMCからACTHへのプロセッシング経路の解明」が引き続き本課題の中心テーマであることには変わりはないが、オートファジーがPOMC合成の主要なエネルギー源であると仮定した場合、そもそもオートファジーの基質がどこから供給されているのかという問題が立ち上がってくる。この点については、分泌小胞の質的・量的な変化に注意を払いながら、「ACTH産生量とオートファジー」についても分子機構を明らかにしていきたい。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (2件)

すべて 2024 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)

  • [国際共同研究] Division of Endocrinology and Metabolism/Department of Medicine/University of Alberta(カナダ)

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] Autophagy inhibition suppresses hormone production and cell growth in pituitary tumor cells: A potential approach to pituitary tumors2024

    • 著者名/発表者名
      Satou Motoyasu、Wang Jason、Nakano-Tateno Tae、Teramachi Mariko、Aoki Shigeki、Sugimoto Hiroyuki、Chik Constance、Tateno Toru
    • 雑誌名

      Molecular and Cellular Endocrinology

      巻: 586 ページ: 112196-112196

    • DOI

      10.1016/j.mce.2024.112196

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / 国際共著

URL: 

公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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