研究課題/領域番号 |
23K08018
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54040:代謝および内分泌学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
池田 富貴 順天堂大学, 医学部, 准教授 (80445494)
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研究分担者 |
西田 友哉 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10581449)
綿田 裕孝 順天堂大学, 大学院医学研究科, 教授 (60343480)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | オートファジー / 膵β細胞 / 妊娠 / 耐糖能異常 / 妊娠糖尿病 / 周産期 |
研究開始時の研究の概要 |
妊娠中は、母体のインスリン抵抗性増大に対する代償機転として膵β細胞量が大きく増加し、出産後に減少する。周産期におけるこのダイナミックな膵β細胞量の変化は古くから知られているが、その分子メカニズムに関しては不明な点が多い。一方、オートファジーは2型糖尿病に代表されるインスリン抵抗性増大時の膵β細胞内恒常性と機能の維持に重要な役割を果たしている。申請者は、インスリン抵抗性が増大する周産期においても、膵β細胞量の変化にオートファジーが深く関与していると考え、その仮説の検証を通じて膵β細胞量の調節のメカニズムを解明し、糖尿病の新規治療法の創出を目指す。
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研究実績の概要 |
妊娠中は、母体のインスリン抵抗性が増大するため、膵β細胞量が代償性に大きく増加し、出産後に速やかに減少する。妊娠・産褥におけるこの劇的な膵β細胞量の変化はよく知られているが、その詳細な機構に関しては不明な点が多い。 一方、オートファジーはインスリン抵抗性増大時の膵β細胞内恒常性の維持に重要な役割を果たすことが報告されている。研究代表者は、インスリン抵抗性が増大する妊娠・産褥期においても、膵β細胞量の変化にオートファジーが関与しているという仮説を提示し、その検証により膵β細胞量の調節のメカニズムを解明することを研究の目的とした。 これまでに、膵β細胞特異的Atg7欠損マウスを妊娠させ、妊娠・産褥における耐糖能の変化を検討した。その結果、Atg7欠損マウスでは妊娠中の耐糖能が野生型マウスに比較して低下することを見出した。さらに、オートファジーの活性を評価するオートファジーフラックスのレポーターマウスであるpHluorin-LC3-mCherryマウスを用いた検討では、妊娠中はオートファジーフラックスが低下し、産褥にかけて上昇するという複雑な変化が認められた。 これらの結果から、膵β細胞のオートファジーは妊娠中の耐糖能の維持にも一定の役割を担っていると考えられるが、その活性は妊娠に伴う複雑な内分泌学的制御を受けている可能性がある。今後の研究の進展により、オートファジー制御を介した周産期糖代謝異常の新しい治療法の開発や、生理的な膵β細胞増殖に関する未知の機構の解明が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は膵β細胞特異的Atg7欠損をタモキシフェン誘導性Creマウスを用いて作製したが、妊娠率がきわめて低かったため、通常のIns-Creマウスとの交配によるコンディショナルノックアウトマウスを使用した。その結果、妊娠率は明らかに改善し、順調に膵β細胞特異的Atg7欠損マウスを作製して妊娠させ、耐糖能を評価をすることができた。 また、膵β細胞でのオートファジーフラックスを評価するpHluorin-LC3-mCherryマウスも妊娠マウスを作製して順調に解析を進めている。これまでに、妊娠・産褥におけるオートファジーフラックスの変化を詳細に追跡することができた。 最近は、妊娠中の膵β細胞のオートファジーフラックスを制御する具体的な因子について、主に膵β細胞株を使用して検討を行っている。現時点では、胎盤因子であるヒト胎盤性ラクトゲンやエストロゲンのオートファジーへの影響を観察している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、(1)妊娠中のオートファジーフラックスがなぜ低下するのか(2)産褥ではオートファジーフラックスがなぜ上昇するのか(3)これらのオートファジーフラックスの変化の生理的意義は何か、について検討を進める。 (3)に関しては、耐糖能の変化との関連がはっきりしないことから、膵β細胞量の変化に焦点をあてて解析を進める。 (1)(2)に関しては、妊娠時に膵β細胞のオートファジーフラックスに影響を与える何らかの因子が存在すると考えている。具体的には、ヒト胎盤性ラクトゲンやエストロゲンといった胎盤由来の因子が妊娠中に影響するのでないかと想定し、膵β細胞株を用いてこれらの因子がオートファジーフラックスをどのように変化させるかを明らかにする。
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