研究課題/領域番号 |
23K08037
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55010:外科学一般および小児外科学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
山田 洋平 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (60383816)
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研究分担者 |
筋野 智久 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (40464862)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 短腸症候群 / GLP-2アナログ製剤 / single cell transriptome / 腸内細菌叢 / GLP-2 / トランスクリプトーム / シングルセル解析 |
研究開始時の研究の概要 |
短腸症候群に対する薬物治療であるGLP-2アナログ製剤は小腸絨毛を増殖させるとされ、近年保険適応となったが、その臨床効果は静脈栄養依存度の減少という間接的な項目で評価されており、有効性の判断、ひいては有効となる患者においても未だ明らかではない。その原因の一因はGLP-2アナログが小腸上皮においていかに作用しているかのデータが欠如していることによる。そこで、本研究ではGLP-2アナログ製剤が作用する細胞集団を同定し、遺伝子発現変化のパターンを認識することで治療効果起点を明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
GLP-2アナログ製剤を導入した短腸症候群の患者5例において、GLP-2アナログ製剤の導入前・導入後3ヶ月後、6ヶ月後、12ヶ月後に尿量・便量測定、血液検査、骨密度・体組成検査、内視鏡的腸管粘膜生検および便汁採取を行い、治療前後の変化を検討した。年齢は19-60歳だった。4例で体重および非脂肪量の増加が見られた。また全例で便量は減少していた。輸液量、経静脈投与熱量は4例で減量可能であり、1例は静脈栄養からの離脱を達成した。 <血清マーカーによる栄養学的評価>血中シトルリン値は全ての症例で上昇が見られた。Feは減少傾向だった。また治療前は全例フェリチン高値であったが、治療後低下した。また肝胆道系酵素において治療開始前に高値であった症例は、本剤導入により改善がみられ、ASTに関しては治療前後で低下傾向だった。肝機能障害例では経腸栄養への移行により改善が得られた可能性が考えられた。 <生検検体による小腸絨毛の組織学的評価>Cryptの深さ、絨毛の長さ、幅、そしてそれらから算出した絨毛の表面積はいずれも上昇傾向にあった。 <次世代シークエンサー(16s rRNA)による腸内細菌叢の解析>Orderの項目で見てみると、Enterobacterales目が増加し、 Lactobacillales目が減少傾向にあった。α多様性解析では、4例で上昇しており、またサンプル組成の近さを示すβ多様性解析では、治療開始前後で腸内細菌の構成が変化していることがわかった。 <小腸上皮シングルセルtranscriptome解析>治療後、遺伝子Aを発現したT細胞および遺伝子Bを発現した上皮細胞が増加していることがわかった。以上の結果より、GLP-2アナログ製剤により小腸機能の改善が確認できた。今後ヒト腸管上皮のシングルセル解析においてさらなる詳細な検討を進め、分子学的メカニズムを解明していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに5症例の2年にわたる経時的な変化をデータとして蓄積しており、解析も進めている。 Single cell transcriptome解析を進めており、いくつかの候補遺伝子発現の上昇が認められている。
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今後の研究の推進方策 |
今後ヒト腸管上皮のシングルセル解析においてさらなる詳細な検討を進め、GLP-2アナログ製剤の開始により出現した特徴的な細胞群の抽出および機能的評価を行い、GLP-2アナログ製剤がヒト腸管の消化・栄養吸収、免疫機能などにどのような変化を及ぼすのか、分子学的メカニズムを解明していく。
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