研究課題/領域番号 |
23K08070
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55010:外科学一般および小児外科学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
吉村 禎造 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 非常勤研究員 (50174991)
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研究分担者 |
松川 昭博 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (90264283)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 乳がん / 白血球遊走因子レセプター / がん微小環境 / Formylpeptide receptor / ケモカイン / ケモカインレセプター / 乳癌 / 臓器移植 / 腫瘍免疫 / 白血球遊走因子 |
研究開始時の研究の概要 |
乳がんは女性のがんの第1位であり、10年再発率は40%にも及ぶ。がん微小環境に浸潤する白血球は、がんの増殖・浸潤・転移を促進する。我々はケモカインと異なる古典的な白血球遊走因子のレセプターであるFPR1と2 に注目し、両レセプター欠損下では移植した乳がん細胞が拒絶されるという新事実を見出した。これはFPRを介して浸潤した白血球が腫瘍免疫の成立を阻害することを意味する世界初の発見である。また、FPRは他の免疫反応でも未知の役割を担う可能性がある。本研究では、FPRが腫瘍免疫、更に移植免疫に果たす役割とその機序を解明し、FPRを標的とした、がんや移植医療に向けた新基舳の免疫療法に挑戦する。
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研究実績の概要 |
腫瘍・非腫瘍細胞間には複雑なクロストークが存在し、その結果産生されるサイトカイン・増殖因子は腫瘍の進展に大切な腫瘍微小環境を形成する。我々は以前、非腫瘍細胞により産生されるケモカインMCP-1がマウス4T1乳癌細胞の肺転移を促進することを明らかにした。MCP-1の作用機序としては腫瘍内への免疫抑制性M2マクロファージの動員が挙げられる。 腫瘍内への白血球浸潤のメカニズムとしてはケモカインのみならずClassical chemotactic factorとそのレセプターに関する研究も欠かせない。4T1モデルでは好中球の増殖・浸潤が著明で、免疫抑制性のMDSC 腫瘍内浸潤が見られる。Formyl peptide receptor (FPR)は細菌由来のペプチドを認識する好中球遊走性レセプターとして発見されたが、細胞由来の内因性の物質も認識することより壊死した腫瘍細胞から遊離される物質とFPRの間のクロストークが4T1腫瘍の増殖・肺転移に関与しているのではないかという仮説に至った。我々は2つのFPR (FPR1と2)が腫瘍進展に果たす役割を、FPR1単独欠損、FPR2単独欠損、FPR1/2両欠損という3種類のFPR遺伝子欠損マウスを使用して解析している。その結果、1) FPR1またはFPR2欠損マウスでは4T1細胞の肺転移がWTマウスに比べて抑制されること、2) FPR1/2両欠損マウスでは4T1細胞に対する腫瘍免疫が増強しているのではないかという結果が得られた。4T1モデルを用いて得られた研究成果は将来の乳癌治療のターゲットを同定するために不可欠と考えられ研究を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究実施計画に基づき、FPR1単独欠損、FPR2単独欠損マウスを用いた実験を行い、FPR1 またはFPR2の単独欠損では移植局所での腫瘍の増殖にはWTと差は無いものの、肺転移が阻害されることが分かった。しかし、好中球の浸潤には明らかな差が認められない。FPR1/2両欠損マウスを用いた実験では、移植した4T1細胞の拒絶が約50%のマウスで見られた。全てのマウスで拒絶が見られないことが疑問であり、C57BL/6遺伝子背景からBALB/c遺伝子背景への転換に差があるのでは無いかと危惧された。昨年度、我々のマウスの入手先である米国立癌研究所で継代されているFPR1/2両欠損マウスを用いて実験を行った結果、全てのマウスで腫瘍細胞の拒絶が見られなかった。そこで腫瘍細胞を拒絶した我々のマウスと拒絶しなかった米国立癌研究所のマウスのゲノムDNAを用いてゲノムスキャンを行ったところ、拒絶したマウスではBALB/c遺伝子背景への転換が若干低いことが判明した。FPR遺伝子は第17染色体上に他の免疫に関した重要な遺伝子と共に存在しており、この染色体上での遺伝子背景の変換が低かったために腫瘍を拒絶した可能性が考えられる。この疑問に答えるために、我々のマウスとBALB/cマウスの更なる交配を行っている。 FPR欠損マウスで好中球浸潤・腫瘍増殖の明らかな抑制が見られないため、新たにCXCR2欠損マウスを入手した。CXCR2は好中球の浸潤を制御する重要なレセプターである。興味あることにCXCR2欠損マウスでは4T1細胞移植局所で増殖した腫瘍内への好中球浸潤がほぼ完全に消失しており、4T1腫瘍へ浸潤した好中球の役割を調べるうえで非常に有用なモデルであることがわかり、研究を進める。
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今後の研究の推進方策 |
1)FPR1単独欠損、FPR2単独欠損マウスを用いた実験を完了させる。 2)FPR1/2両欠損マウスについては現在行っているBALB/cマウスとの追加の継代(2世代)を完了し、FPR1/2両欠損マウスでの実験を継続する。 3)昨年度に始めたCXCR2欠損マウスでの実験を継続する。腫瘍内で発現している遺伝子、特に免疫に関した遺伝子の各マウス間での発現の違いをRT-PCRで検討する。 3)WTとCXCR2欠損マウスの腫瘍内に浸潤した白血球を免疫組織化学を用いて、より詳細に比較する。 4)市販のCXCR2阻害剤をWTマウスに注射し、CXCR2阻害剤により移植された4T1細胞の増殖・肺転移に影響があるかを検討する。
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