| 研究課題/領域番号 |
23K08074
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| 研究種目 |
基盤研究(C)
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| 配分区分 | 基金 |
| 応募区分 | 一般 |
| 審査区分 |
小区分55010:外科学一般および小児外科学関連
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| 研究機関 | 九州大学 (2024) 独立行政法人国立病院機構九州医療センター(臨床研究センター) (2023) |
研究代表者 |
久松 雄一 九州大学, 大学病院, 助教 (10529861)
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| 研究分担者 |
三森 功士 九州大学, 大学病院, 教授 (50322748)
坂本 毅治 関西医科大学, 医学部, 教授 (70511418)
胡 慶江 九州大学, 大学病院, 助教 (80792902)
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| 研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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| 研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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| 配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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| キーワード | 大腸癌 / 大腸腺腫 / 免疫応答 / 免疫チェックポイント / 微小環境 / 空間的トランスクリプトーム解析 / 大腸線種 / 空間的トランスクリプトーム(VISIUM)解析 |
| 研究開始時の研究の概要 |
前がん病変から早期がんにおけるVISIUMの解析結果より、発がん過程においてがん微小環境(腫瘍免疫応答)は如何に関与するか?解明する。すなわち大腸腺腫、早期大腸がん病変と間質細胞(免疫担当細胞など)の発現遺伝子プロファイルを時空間的にシングルセルレベルで解析し3者間で比較検討することで、腺腫から癌細胞への進展を幇助する可能性を示す遺伝子を同定する。特に発がん過程で免疫寛容の獲得に寄与しうる「腺腫に局在する腫瘍免疫応答関連細胞由来の遺伝子」を同定し治療標的としての意義を明らかにする。
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| 研究実績の概要 |
本研究は、大腸腺腫から癌化に至る過程において、腫瘍免疫応答がどのように変化し、特に「免疫寛容の獲得」がどの段階で起こるかを解明することを目的としている。これまで進行癌の免疫環境については多数の報告が存在する一方、前癌病変から早期癌にかけての免疫環境変化、特に免疫回避に至るクロストークのメカニズムについては不明な点が多い。本研究では、空間トランスクリプトミクス(Visium)と単一細胞RNAシーケンス(scRNA-seq)のデータを統合することで、病変組織内の細胞間相互作用を空間的に再構築し、免疫抑制性環境の形成メカニズムに迫ることを目的としている。 令和5年度は、まず5症例においてVisium解析を行い、正常粘膜、腺腫、癌領域を病理医による診断に基づき明確に区別した上で、DeepCOLORという深層学習モデルを用いてscRNA-seqデータと空間情報を統合した。解析の結果、腺腫および腺腫-癌移行部において、腫瘍上皮細胞と制御性T細胞(Treg)の共局在が認められ、特に腺腫段階においてTregが免疫寛容を誘導する可能性が示唆された。さらに、上皮細胞から分泌されるMDK(Midkine)と、Treg上に高発現するSDC4との相互作用が、免疫抑制性の腫瘍微小環境(TME)の形成に寄与する可能性が見出された。 この研究成果の一部は国際英文誌eBioMedicineに掲載され、国際的な評価も受けている。現在は、得られた知見をより多症例で再検証するための準備を進めており、腺腫から癌化に至る免疫寛容獲得の空間的実態をより明確にすることを目指している。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画は概ね順調に進行しており、Visiumによる空間トランスクリプトーム解析を5症例で完了し、病理医の診断に基づく領域の定義(正常、腺腫、癌)を行ったうえで、scRNA-seqの公開データと統合解析を実施した。DeepCOLORを活用した細胞共局在解析の結果、腺腫上皮細胞とTregの空間的近接が高頻度に観察され、とくに腺腫から癌に進展する境界部においてその傾向が顕著であった。 これら共局在細胞群において、上皮細胞側ではMDKの高発現がみられ、Treg側ではその受容体候補であるSDC4が高発現していた。また、MDK発現の高い細胞群では、腫瘍の増殖・免疫逃避に関わる経路(例:サイトカイン誘導、SPP1+マクロファージとの相互作用)も活性化していることが示された。さらにCRCコホートおよびTCGAデータを用いた臨床予後解析では、MDKおよびSDC4の高発現がいずれも有意に予後不良と関連していた。 機能検証としては、マウス大腸癌細胞MC38において、MDK過剰発現およびノックアウト株を作成し、腫瘍増殖、Treg浸潤、マクロファージ極性変化の影響を評価するモデルを構築し、予備的データの取得に成功している。 一方、ヒト症例における多重免疫染色の実施には着手しているが、50例以上の症例集積と染色条件の最適化には時間を要しており、現時点では本格的な解析には至っていない。来年度にこの部分を中心的に進める計画である。
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| 今後の研究の推進方策 |
最終年度である令和6年度は、ヒト大腸腺腫および早期癌検体における多重免疫染色解析と、マウスモデルおよび細胞レベルでの機能的検証の二本柱で研究を完結させる方針である。 第一に、ヒト検体50例を対象に、多重免疫蛍光染色を用いて、腫瘍上皮細胞(CK、MDK)、Treg(FOXP3、SDC4)、マクロファージ(SPP1、CD68など)を同時に可視化する体制を整える。腺腫から癌に至る過程において、空間的にどのような細胞が相互作用し、免疫抑制的環境を形成しているかを横断的に評価することで、解析結果の一般化と臨床的意義の検証を目指す。 第二に、既に構築済みのMC38細胞によるMDK操作モデル、およびRKO細胞とTreg様細胞(MT-2)を用いたトランスウェルアッセイを通じて、MDK-SDC4軸がTregの遊走や抑制機能に与える影響を実証する。さらに、MDKノックダウンや中和抗体を用いた阻害実験を併用することで、MDKが免疫抑制環境の形成に「必要十分」であるかどうかの検証も行う予定である。 加えて、Treg以外の免疫・間質細胞とのクロストーク、特にTIGITやEDN1、LCN2などの分子がMDKと協調して働く可能性にも着目し、DeepCOLORによる共局在ネットワーク解析を拡張する予定である。 これらの成果を最終的に統合し、腺腫から癌化に伴う免疫寛容の空間的・分子的連鎖をモデル化し、将来的にはCRCにおける新規免疫治療標的の提案につなげることを目指す。
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