研究課題/領域番号 |
23K08130
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
三好 真琴 神戸大学, 保健学研究科, 講師 (50433389)
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研究分担者 |
清水 一也 神戸大学, 保健学研究科, 保健学研究員 (50335353)
堀 裕一 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (80248004)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 抗がん剤耐性 / 膵臓癌 / ゲムシタビン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、標準抗がん剤治療に耐性を獲得した膵癌に対するセカンドライン治療薬の開発を目指すものである。 我々は、マウス膵臓組織幹細胞に癌遺伝子を導入してマウス膵癌細胞を樹立し、マウス皮下腫瘍に、標準抗がん剤Gemcitabine(GEM)を投与することにより、膵癌患者同様に、GEM耐性を獲得した細胞株を樹立している。膵癌親株とGEM耐性株の遺伝子解析から、モノアミンオキシダーゼ(MAOB)に着目した。一方、GEM耐性を獲得した膵癌患者からヒト膵癌幹細胞株を樹立している。本研究では、これらの膵癌細胞株を使ってMAOBの耐性獲得における役割やその阻害剤の効果を明らかにする。
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研究実績の概要 |
手術・抗がん剤・放射線治療の集学的治療の進歩にも関わらず、膵癌の5年生存率は10%未満と、悪性腫瘍の中で最も予後は悪い。膵癌に対する標準的化学療法はゲムシタビンを始めとして複数挙げられるが、一旦奏功しても継続投与する間に、ほとんどの臨床例で耐性を獲得する。耐性を獲得した膵癌に対する治療は皆無で、予後を改善するためにはセカンドライン治療薬の開発が急務だが、そのようなアプローチも現状報告されていない。 本研究は、標準抗がん剤治療に耐性を獲得した膵癌に対するセカンドライン治療薬の開発を目指すものである。我々は、マウス膵臓組織幹細胞に癌遺伝子を導入してマウス膵癌細胞を樹立し、マウス皮下腫瘍に、標準抗がん剤ゲムシタビンを投与することにより、膵癌患者同様に、ゲムシタビン耐性を獲得した細胞株を樹立している。膵癌親株とゲムシタビン耐性株の遺伝子解析から、モノアミンオキシダーゼに着目した。一方、ゲムシタビン耐性を獲得した膵癌患者からヒト膵癌幹細胞株を樹立している。本研究は、膵癌治療において耐性獲得後にセカンドライン治療薬が無いという状況から、従来の化学療法や免疫療法の延長上にはない化合物群の探索を企図するものである。我々の樹立した膵癌細胞株を使ってモノアミンオキシダーゼの耐性獲得における役割やその阻害剤の効果を明らかにすることを目的としている。モノアミンオキシダーゼ阻害薬はパーキンソン病の治療薬として投与されている。このため、安全性やコストの点でも有利であり、効果が認められれば速やかな臨床研究への移行が期待できる(ドラッグ・リポジショニング)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス人工膵癌細胞とゲムシタビン耐性株の遺伝子解析からモノアミンオキシダーゼに着目した。マイクロアレイを行った結果、ゲムシタビン耐性株はマウス人工膵癌細胞に比較してモノアミンオキシダーゼの発現量が5.423倍高かった。さらにリアルタイムPCRでモノアミンオキシダーゼ遺伝子の発現量を確認すると、マウス人工膵癌細胞と比較してゲムシタビン耐性株で1.263倍高かった。ウエスタンブロットでもモノアミンオキシダーゼタンパク質の発現量は、ゲムシタビン耐性株で1.86倍と有意に増加していた。モノアミンオキシダーゼはミトコンドリアに存在することから、光学顕微鏡レベルの免疫染色では、いずれの細胞においても細胞質に発現を認めた。 抗がん剤耐性ヒト膵癌細胞でもマウス人工膵癌細胞と同様に、RT-PCRではいずれの細胞においてもmRNAの発現を認め、光学顕微鏡レベルの免疫染色においても細胞質にモノアミンオキシダーゼの発現を認めた。 siRNAによりマウス人工膵癌細胞のモノアミンオキシダーゼMAOB遺伝子をノックダウンすると、ゲムシタビン耐性株で細胞増殖抑制効果を認めた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、我々が樹立作製した(1)ヒト膵癌幹細胞株(PLoS One, 2013; Pancreas, 2019)や(2)がん遺伝子導入により作製したマウス人工膵癌幹細胞株を使って、標準抗がん剤治療に耐性を獲得し他に治療法が無い膵癌患者に対するセカンドライン治療薬の開発を目指すものである。初年度の実績から、耐性獲得にモノアミンオキシダーゼが関与することが明らかになった。今後はモノアミンオキシダーゼがどのような機序で耐性獲得に影響を及ぼすのかを明らかにしていく。これまでに採取した腫瘍や組織を使って免疫組織学的に増殖能、アポトーシス、細胞内シグナル伝達系を調べ、抗腫瘍効果の機序を解析する。本研究計画が遂行されれば、耐性を獲得した膵癌に対するセカンドライン治療薬の開発に大いに貢献できると考える。
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