研究課題/領域番号 |
23K08190
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
藤井 千文 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (10361982)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 分化型胃がん / αGlcNAc / MUC6 / TFF2 / 胃腺粘液特異的糖鎖 |
研究開始時の研究の概要 |
私達の研究室では、胃腺粘液特異的糖鎖αGlcNAcが陰性の分化型胃がん症例は予後不良であることを報告した。また、αGlcNAcが消失すると分化型胃がんを発症することをマウスモデルで示した。さらに、ヒト分化型胃がん発症の危険因子である慢性萎縮性胃炎の段階で既にαGlcNAcが消失することを示し、αGlcNAcと結合するコアタンパク質MUC6の陰性症例は、臨床病理学的因子が不良であることも報告した。本研究では、分化型胃がんの病態機序を培養細胞とαGlcNAc陰性マウス由来オルガノイドで解明することにより、αGlcNAc陰性分化型胃がん、即ち予後不良分化型胃がんの新規診断法・治療法の開発に繋げる。
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研究実績の概要 |
本研究室では、胃腺粘液特異的糖鎖α1,4-結合型 N-アセチルグルコサミン(αGlcNAc)とαGlcNAcが結合するムチンコアタンパク質MUC6に着目し、胃がんの病態解明を行っている。これまでに、マウスの個体レベルならびにヒト胃がん検体の病理学的解析の結果から、αGlcNAc産生量の低下が、分化型胃がんの発症および悪性度と密接に相関していることを報告してきた。また、MUC6陰性である中分化型胃がん細胞株AGSを用いて、αGlcNAcがMUC1にも結合し、胃がんの悪性化を抑制していることを報告してきた。本研究課題では、αGlcNAcとMUC6の分化型胃がんの発症過程における低下と病態悪性化の分子機構を、細胞生物学的、分子生物学的、および生化学的な側面から解明することを目的とし、分化型胃がんの新規診断法・治療法開発へと繋げることを最終的な目標としている。これらの目標達成のため、培養細胞、マウスモデル、マウス由来オルガノイドを用いて解析を行っている。 αGlcNAcとMUC6の発現が認められないAGS細胞にMUC6単独またはMUC6とαGlcNAc生合成酵素α4GnTを共発現させ、αGlcNAc のMUC6への結合とαGlcNAcに結合するレクチン様タンパク質TFF2との複合体形成、細胞の悪性形質について解析を行った。その結果、共発現系でのαGlcNAcのMUC6への結合と複合体形成が検出され、細胞増殖能の低下が認められた。以上の結果は、αGlcNAc結合型MUC6が、胃がんの悪性度を制御している可能性を示唆している。また、マウスモデル、マウス由来オルガノイドについては、材料準備と実験方法の確立を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究にて、AGS細胞にTet-Onシステムを用いてα4GnTを発現させる実験系を用いていた。そこで、Tet-Onシステムを用いてAGS細胞にMUC6単独またはα4GnTとMUC6を共発現させる実験系の樹立を試みた。しかしながら、薬剤セレクションのみではMUC6をリーク発現する細胞を取り除くことができず、抗体を用いたセレクションを行うことも困難であり、Tet-Onシステムでの実験は断念した。 次に、レトロウイルスベクターを用いて、AGS細胞にMUC6単独またはα4GnTとMUC6を共発現させ、解析を行った。発現させた各タンパク質とTFF2の発現をウエスタンブロッティングにて解析したところ、AGS細胞ではTFF2がわずかに発現しており、MUC6単独で発現させた場合には発現量の変化は見られないが、α4GnTとMUC6を共発現させると発現量が亢進した。次に免疫沈降法にて、細胞内でのαGlcNAc のMUC6への結合とTFF2との複合体形成を解析したところ、α4GnTとMUC6を共発現させた場合に、MUC6にαGlcNAcが結合しており、TFF2が共沈降するという結果が得られた。以上の結果は、αGlcNAc 結合型MUC6とTFF2が複合体を形成しており、このことがTFF2の安定化に繋がっていることを示唆している。現在、細胞外に分泌された複合体の解析を行っている。細胞の悪性形質の解析から、α4GnTとMUC6の共発現により、細胞増殖能の低下が見られた。現在、他の形質についても解析中である。 本研究課題では、ヒト分化型胃がんに酷似した表現形を示すA4gnt KOマウス由来のオルガノイドを用いてその性質や薬剤感受性を解析することを計画している。今年度は、野生型マウスとA4gnt KOマウスよりオルガノイドを培養する方法を確立した。 以上より、本研究はおおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、培養細胞レベルの研究が中心となった。Tet-Onシステムでの実験系樹立に時間を要したが断念したため、形質変化の解析は、細胞増殖能の差を明らかにするに止まった。次年度は、予定通り、運動能・浸潤能をはじめとした、in vitroでの悪性形質の解析を行い、MUC6ならびにαGlcNAc 結合型MUC6とTFF2との複合体の分化型胃がんへの悪性形質に対する影響について考察する。また、複合体形成により、分泌された粘液の粘度が変化すると予想されるので培養上清の粘度を測定し、粘性の変化が細胞に与える影響を考察する。粘度測定の条件は現在検討中である。 オルガノイドを用いた実験については、今年度、培養方法の確立と、解析対象のオルガノイドストックの作成を行った。次年度は、野生型マウスとA4gnt KOマウス由来のオルガノイドについて、形態の比較、増殖能、浸潤能、造腫瘍能の解析などを行い、形質の比較を行う。さらに、シグナル伝達変化の解析を試みる。また、αGlcNAc陰性分化型胃がん、即ち予後不良分化型胃がんに有効な薬剤のスクリーニングを行うために、A4gnt KOマウス由来のオルガノイドを用いる予定のため、このオルガノイドを用いてスクリーニング系の構築を試みる。
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