研究課題/領域番号 |
23K08218
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
|
研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
塩崎 敦 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40568086)
|
研究分担者 |
大辻 英吾 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20244600)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 癌幹細胞 / イオンチャネル / 食道胃外科学 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、様々なイオン輸送体が癌細胞機能を制御することが知られている。本研究では、食道胃接合部癌・食道腺癌におけるCa2+透過性陽イオンチャネルTRPV2やNa+/K+/2Cl-共輸送体1(NKCC1) の発現機能解析を行うとともに、"癌幹細胞特異的に発現したTRPV2やNKCC1の制御により、食道胃接合部癌・食道腺癌の進展が抑制できる" という実験仮説の検証を行う。その結果から、癌幹細胞内イオン濃度変化を介した新たな腫瘍形成メカニズムを解明し、TRPV2阻害薬:トラニラストやNKCC1阻害剤:フロセミドを応用した、食道胃接合部癌・食道腺癌に対する斬新な治療概念の構築を目指す。
|
研究実績の概要 |
まず、ヒト食道腺癌細胞株OE33から癌幹細胞を抽出・培養し、抗癌剤耐性・再分化能などのStemnessを確認した。Microarrayによる網羅的遺伝子発現解析では、CD44、EpCAM、SOX2などの癌幹細胞マーカーの上昇と共に、Ca2+透過性陽イオンチャネルtransient receptor potential vanilloid 2 (TRPV2)や、Na+/K+/2Cl-共輸送体1(NKCC1): solute carrier family 12 member 2 (SLC12A2)が、癌幹細胞において高発現していることを確認した。更に、TRPV2選択的阻害剤:トラニラストやSLC12A2選択的阻害剤:フロセミドの癌幹細胞増殖抑制効果や、抗癌剤の作用増強効果を確認した。これらの結果は、英文論文としてまとめ報告した(Ann Surg Oncol. 30:8743-8754, 2023)。同時に、ヒトBarrett食道腺癌組織におけるTRPV2やSLC12A2の発現レベルを解析したところ、ALDH1A1と正の相関を示すことが明らかとなった。OE33細胞をトラニラストやフロセミドで処理するとALDH1A1 mRNA発現は有意に減少した。更に、胃癌においてTRPV2がPD-L1の発現を制御し、PD-1への結合に影響を及ぼすことを解明した(Ann Surg Oncol. 30:8704-8716, 2023)。 一方で、肝細胞癌細胞株HepG2から癌幹細胞を抽出しcalcium voltage-gated channel auxiliary subunit gamma 4 (CACNG4)が高発現していることを見出し、その阻害剤アムロジピンの抑制効果についてまとめ報告した(Anticancer Res 43: 4855-4864, 2023)。また、大腸癌におけるNa+/K+-ATPase (Ann Surg Oncol 30: 6898-6910, 2023)の機能解析・臨床病理学的意義を報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画のうち、ヒト接合部癌・食道腺癌組織におけるTRPV2・NKCC1・癌幹細胞マーカー発現の相関解析、TRPV2・NKCC1制御による癌幹細胞特異的な増殖抑制効果、及び抗癌剤併用効果の検討などの基礎実験は、ほぼ終了している。また、消化器癌における種々のイオン輸送体の機能解析も進展しており、研究成果は既に国内外の学会で発表し、英文雑誌にも投稿・掲載されている。現在、TRPV2 siRNAを導入した細胞株の遺伝子発現変化をmicroarrayにより網羅的に解析も進行しており、研究目的・研究計画はおおむね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、癌幹細胞にTRPV2・NKCC1や高発現plasmidをトランスフェクションし、導入後の遺伝子発現変化をmicroarrayを用いて網羅的に解析する。更に、各種抗癌剤・分子標的治療薬による抗腫瘍効果が、TRPV2・NKCC1阻害剤トラニラスト・フロセミドの併用により増強されるか否かを解析する。また、癌幹細胞におけるTRPV2・NKCC1イオン動態を介する細胞周期・アポトーシス制御機構解明を進めるとともに、in vivoにおけるTRPV2・NKCC1制御による皮下腫瘍成長抑制効果、及び抗癌剤併用効果について検討する予定である。
|