研究課題/領域番号 |
23K08245
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55030:心臓血管外科学関連
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
國岡 信吾 旭川医科大学, 医学部, 助教 (30882724)
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研究分担者 |
紙谷 寛之 旭川医科大学, 医学部, 教授 (30436836)
吉田 巧 富山県産業技術研究開発センター, その他部局等, 主任研究員 (80741751)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 人工血管 / ナノファイバー |
研究開始時の研究の概要 |
生体内分解性ナノファイバー(NF)が自家組織の生着を促進することに着目して、我々はPoly caprolactones (PCL) 製NFの小口径人工血管(PCLグラフト、内径1 mm)を開発した。PCLグラフトはラット腹部大動脈置換モデルにおいて、移植後に自家血管様の組織再生を示したが、PCLは生体内での分解が遅いことが明らかとなり、NFの生体内分解性を向上させることで自家組織再生を促進することに着想した。本研究の目的は、①種々のNFの生体内半減期を定量し、②生体内分解性と強度のバランスを最適化し、③完全自家血管化するNFグラフトの作製を目指す。
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研究実績の概要 |
冠動脈バイパス術や下肢血行再建手術に臨床使用可能な直径4 mm以下の小口径人工血管の開発は長年続けられているが長期開存に課題があり、臨床応用に至っていない。我々はポリカプロラクトン(PCL)は自血管化様に変化することを示してきたが、PCLは1年以上も安定した構造を保持しており、自家血管とのコンプライアンスミスマッチを解消するため、生体内での分解性を調節する必要性を感じた。しかし、ナノファイバーの生体内分解性を評価している先行研究は無いため、本研究の目的は、①種々のNFにおける生体内半減期を検証し、②生体内半減期を調整することで、完全に自家血管化するNFグラフトを作成することである。 本研究では、マウス皮下への各種ナノファイバーシート(PCL、ポリ乳酸PLA、PCLとPLAの混合、ポリグリコール酸PGA)の植込みおよび摘出を終了した。生体内半減期の検証のため、摘出したナノファイバーをサイズ排除クロマトグラフィーで解析し、分子量の変化を計測した。また、摘出したナノファイバーの光学顕微鏡での観察を行い、グラフト内への生体組織の侵入について調べた。さらに、走査型電子顕微鏡による観察でナノファイバー繊維の変化を観察した。これらの結果から、PCL、PLA、PGAはそれぞれ固有の分子量変化が生じ、PCLは植込み後48週においても残存しており、PLAは植込み後24週においては形態を維持しているものの、48週にはほぼ形態が崩壊することが解った。さらに、PGAは植込み後3週で形態が崩壊することが解った。PCLとPLAの混合においては、分解性がそれぞれ単体よりも進行し、構造を維持しつつも分解性が向上することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は、皮下における種々のナノファイバーシートの生体内分解性を評価しており、それらのデータと血管環境下におけるナノファイバーグラフトの分解性を比較する段階まで実験が進んでいる。ラットにおける腹部大動脈の植込みは全て終了しており、データ解析を行っている段階である。予定ではこれらの工程を2年程度で行う予定であったため、概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
血管環境下でのナノファイバーグラフトの分解性を検証していく。さらに、可能であれば中・大動物におけるナノファイバーグラフトの長期的分解性を評価することを検討しているが、実験室の老朽化等により中大動物の実験が困難な場合は、PCLとPLAの混合の分解性の違いに着目し、これらの配合を変化させたグラフトにおいて、分解性を調整できるかどうかを検証する。また、現在PCLとPLAの同時紡糸を試みており、同時紡糸により、より強度を維持したまま分解性を向上したグラフトを作製できれば、これらをラットの腹部大動脈へ植込み、分解性を調整していく予定である。
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