研究課題/領域番号 |
23K08388
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55050:麻酔科学関連
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
仙頭 佳起 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 講師 (80527416)
|
研究分担者 |
志田 恭子 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 臨床研究医 (00381880)
鄭 且均 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (00464579)
中村 知寿 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (60869668)
祖父江 和哉 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (90264738)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | 神経認知障害 / 周術期神経認知障害 / フロチリン / エクソソーム / バイオマーカー |
研究開始時の研究の概要 |
周術期神経認知障害(術後せん妄,回復遅延など)は,術後回復に影響を与えるため,高齢者の手術が増えた現代の社会的問題となっている。 治療法が未だないので予防が重要視されているにもかかわらず,発症機序が明らかでなく,発症予測法が確立していない。 本研究では,周術期神経認知障害とアルツハイマー病(AD)の発症機序の類似性に着目する。 ①臨床試験(前向き観察研究)と②動物実験(並行群間比較試験)から成る本研究により,周術期神経認知障害の発症機序を解明し,発症予測法と治療法を確立することを目指す。
|
研究実績の概要 |
本課題では,周術期神経認知障害の発症機序を解明し,発症予測法と治療法を確立することを目指している。 アルツハイマー病(AD)および軽度認知障害期の患者で,フロチリンというエクソソームのマーカーの血清レベルが低下していることが報告されているため,本年度はまず,ADの新しい診断法として期待されるこのバイオマーカーが,術後の神経認知障害の発症予測にも応用できることを証明することにし,術前の血清フロチリンレベルと術後の神経認知障害の関連性を探索する前向き観察研究を実施した。 全身麻酔下に頚椎椎弓形成術または切除術を受ける65歳以上の患者を対象とした前向き観察研究を実施した。麻酔法(プロポフォールでの全身麻酔)は標準化した。手術前と術後7日目に,日本版Montreal Cognitive Assessment (MoCA-J)を実施し,これを主要評価項目とした。本研究における神経認知障害例は,術後7日目MoCA-Jが術前より1点以上低下と定義した。副次評価項目は,手術前の血清フロチリンレベル(ウエスタンブロット法で測定)とした。 血清検体を採取できた9例を解析した。年齢は81(80-83)歳[中央値(四分位範囲),以下同]。男性が7例。麻酔時間は208(182-245)分。MoCA-Jは,術前が24(22-26)点[中央値(四分位範囲)],術後7日目が24(21-28)点,神経認知障害例は3例であった。術前フロチリンレベルは20.2(15.5-22.0)pg/mcL。術前フロチリンレベルとMoCA-J変化量は,Spearmanの相関係数r=-0.08 (p=0.8)で相関はなかった。MoCA-J減少に対する術前フロチリンレベルのROC曲線は,C統計量0.50で識別力はなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
術前に実施可能な,術後の神経認知障害の客観的かつ定量的な発症予測法の確立を目指してきたが,まだ達成できていない。 術前の血清フロチリンレベルとMoCA-Jの関連性は示されなかった。今後は,症例数を増やした検討や,術後神経認知障害の他の予測因子にフロチリンレベルを加えた際の精度向上の検討を行う。 術前フロチリンレベル20pg/mcL未満を低値群,20pg/mcL以上を高値群とした場合には,低値群で神経認知障害例50%(2/4例),高値群で神経認知障害例20%(1/5例)となっていたため,引き続き検討を進める価値はあると考えている。 ただし,神経認知機能検査を行う作業療法士の確保が課題であり,代替え手段も検討すべきである。
|
今後の研究の推進方策 |
周術期神経認知障害の発症機序にADと同じ病理変化が関与している見込みが高ければ,ADモデルマウスで,麻酔・手術によってADの病理変化が悪化することを証明したい。 周術期神経認知障害の発症にADと同じ病理変化が関与している可能性も検討する。 周術期神経認知障害の発症機序を解明して,根本的な治療法を考案する。
|