研究課題/領域番号 |
23K08403
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55050:麻酔科学関連
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
山本 知裕 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (70596543)
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研究分担者 |
大橋 宣子 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (70706712)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 脊髄損傷後疼痛 / 脊髄後角ニューロン / イバブラジン / HCNチャネル / 電気生理学実験 / 過分極活性化環状ヌクレオチド依存性チャネル / 脊髄後角 |
研究開始時の研究の概要 |
脊髄損傷に伴う痛みは可塑性変化による脊髄損傷後疼痛と称され、痛覚過敏やアロディニアといった神経障害性疼痛を伴うため非常に難治性である。これまで慢性心不全の治療薬として用いられてきた過分極活性化環状ヌクレオチド依存性チャネル阻害薬であるイバブラジンが、痛覚伝導路である脊髄後角へ作用し脊髄損傷後疼痛に対し鎮痛効果を発揮するのではないかと考え、イバブラジンの脊髄損傷後疼痛に対する鎮痛効果およびその作用機序を行動学、免疫組織学および電気生理学実験を行い、多角的に検討する。
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研究実績の概要 |
脊髄損傷後疼痛は痛覚過敏やアロディニアといった神経障害性疼痛を伴うため難治性であり、その発生機序も未だ解明されていなく有効な治療薬もない。さらに脊髄損傷患者は、損傷により交感神経・副交感神経といった自律神経の障害も伴うため、不整脈、心不全の有病率が非常に高いことが報告されている。そのため、これまでの鎮痛薬には重篤な副作用があるため、心機能が低下している脊髄損傷後疼痛患者には鎮痛薬の減量や薬剤の変更を余儀なくされ、しばしば適切な疼痛コントロールが行えないという現状があった。 近年、鎮痛薬のターゲット部位として過分極活性化環状ヌクレオチド依存性 (HCN)チャネルが注目されるようになった。この HCN チャネルは心臓の洞結節細胞に存在し、 心拍数をコントロールする作用があり、その有効性と安全性が知られており、欧米ではすでに重症慢性心不全の治療薬として広く用いられている。一方、この HCN チャネルは痛覚伝導路である脊髄後角の一次求心性線維終末に多く発現していることが知られている。そのため近年、イバブラジンは心不全の治療薬のみならず、鎮痛薬としても有効である可能性が報告された。しかし、イバブラジンの脊髄損傷後疼痛に対する鎮痛効果を検討した報告はこれまでにない。本研究の目的は、脊髄損傷後の可塑性変化により生じる脊髄損傷後疼痛に対し、イバブラジンが脊髄後角のHCN チャネルに作用し鎮痛効果を発揮するか、またその作用機序を行動学、免疫組織学および電気生理学実験を行い、多角的に検討する。 まず初年度では、脊髄損傷後疼痛モデルラットの作製の確立を行った。さらにイバブラジンが脊髄損傷後疼痛に対し鎮痛効果を発揮するか検討するため行動学実験を行った。その結果、イバブラジンの投与に痛み閾値の改善を認めたため、脊髄損傷後疼痛に対しイバブラジンが鎮痛効果を発揮している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度では脊髄損傷後疼痛モデルを確立することが目的であり、Th10高位をimpactorにより脊髄に圧挫を加えることで不全脊髄損傷モデルを作製し、確立した。さらに行動学実験を行い、作製した脊髄損傷後疼痛モデルラットの痛み閾値をvon Freyにより測定し、イバブラジンの腹腔内投与により痛み閾値の改善を認めた。そのため、脊髄損傷後疼痛に対しイバブラジンが鎮痛効果を発揮している可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、脊髄損傷後の可塑性変化により生じる脊髄損傷後疼痛に対し、イバブラジンが脊髄後角のHCN チャネルに作用し鎮痛効果を発揮するか、またその作用機序を行動学、免疫組織学および電気生理学実験を行い、多角的に検討することである。 まず初年度の令和5年度では脊髄損傷後疼痛モデルラットの作製を確立し、さらに行動学実験を行い、作製した脊髄損傷後疼痛モデルラットの痛み閾値をvon Freyにより測定し、イバブラジンの腹腔内投与により痛み閾値の改善を認めた。そのため、脊髄損傷後疼痛に対しイバブラジンが鎮痛効果を発揮している可能性が示唆された。 次年度である令和6年度では、脊髄損傷後疼痛に対するイバブラジンの鎮痛機序を解明するために、主に電気生理学実験を用いてメカニズムを解明していく予定である。具体的には脊髄損傷後疼痛モデルラットからのin vitroパッチクランプ記録を行い、興奮性シナプス後電流および抑制性シナプス後電流を観察していく。これらの反応がイバブラジンの投与によりどのように変化するか検討していく予定である。
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