研究課題/領域番号 |
23K08442
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55060:救急医学関連
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
太田 淳一 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (50529667)
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研究分担者 |
岡本 貴行 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 准教授 (30378286)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 敗血症 / 血管炎症 / 血管内皮細胞 / YAP / 血管透過性 |
研究開始時の研究の概要 |
敗血症やCOVID-19などの重症感染症の増悪化の機構として血管炎症が存在するが、そのメカニズムの理解は十分でない。これまでの我々の研究から、炎症時の血管内皮細胞において、転写共役因子Yes-associated protein (YAP)の活性化を阻害することで血管内皮細胞に抗炎症作用が誘導される可能性を見出した。本研究では、血管内皮細胞の炎症の増悪化や血管透過性亢進におけるYAPの役割を明らかにし、YAPを制御することで血管炎症や敗血症症状が抑制できるか検証する。
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研究実績の概要 |
敗血症や播種性血管内凝固症候群(DIC)の致死率は著しく高く、いかにして予後を改善するかが救急医療の重要な課題である。我々はこれまで敗血症性DICに適用される組換え可溶性蛋白リコモジュリン製剤(rsTM)の作用機構に取り組み、rsTM製剤が転写共役因子Yes-associated protein (YAP)の活性を抑制する可能性を見出した。YAPには転写因子としての遺伝子発現調節とメカノトランダクションを担うが、敗血症や血管炎症における役割は不明な点がある。本研究では、血管炎症の増悪化におけるYAPの役割を明らかにし、YAPの活性化を調節することで血管炎症を抑制できるか検証することを目的とする。 初年度では、Lipopolysaccharides (LPS)をマウス腹腔内に投与する敗血症モデルにYAP活性化剤と阻害剤も腹腔内投与し、生存率や臓器障害を観察した。YAP活性化剤は生存率や臓器障害に変化が確認できなかったが、阻害剤では増悪化の傾向がみられた。次にYAP活性化剤または阻害剤を静脈内投与して同様の検討を行った結果、阻害剤投与は腹腔内投与時より増悪化を示した。これらは当初のYAPの活性化が臓器障害や血管内皮障害を増悪化する仮説と異なる結果であった。そのため、次に血管内皮細胞の血液凝固能をフローサイトメーターで解析した。その結果、YAP阻害剤で血管内皮細胞を処理すると、著しく組織因子の発現が増加することが明らかになった。 以上の結果から、YAPの活性化が血管内皮障害に関わるが、単純なモデルで説明はできない可能性が示された。次年度ではin vivo実験とin vitro細胞培養実験を行い、さらなる検証を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LPS刺激を加えた細胞ではYAPが活性化することから、YAP活性化が血管内皮細胞の炎症応答を促進すると当初考えていた。本年度の結果は、YAP阻害剤が敗血症病態を著しく悪化するものであり、最初の仮説とは異なる。しかし、一部の先行研究ではYAPの発現低下が組織因子の発現が増加することを示しており、我々のin vitro解析でも同様の結果を示した。計画時の予定を変更して進行しているが、YAP阻害剤により敗血症病態の増悪化、さらにその一因となりうる事象が確認できたことで、本研究課題は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度では、YAP阻害剤により敗血症病態の増悪化と組織因子の発現上昇が確認できた。次年度では、YAP活性化剤と阻害剤が、LPS刺激時の血管内皮細胞の炎症関連遺伝子の発現や細胞骨格系の変化に及ぼす影響を調べることで、詳細な検討を進める予定である。
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