研究課題/領域番号 |
23K08445
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55060:救急医学関連
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
小川 史洋 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (80383610)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ARDS / 気道上皮 / 喫煙関連呼吸器疾患 / 吸入薬 / TSLP / 喫煙 / 呼吸不全 |
研究開始時の研究の概要 |
根本的な治療法が確立さていないARDSを実験モデルであるヒト気道上皮細胞および実験動物(マウス)を用いたARDSモデルおよび炎症に関与していると考えられているコクサッキーアデノウイルス受容体(CXADR) KOマウスを用いて、その鍵となる因子・シグナルを同定・解析する。それに加えて呼吸疾患の増悪因子である喫煙習慣との関連についてARDSの革新的根本的治療法の確立する。
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研究実績の概要 |
救急領域・集中治療領域において全身炎症症候群(SIRS)によって生じる肺胞領域の非特異的炎症による透過性亢進型肺水腫を病態とする急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を経験することは多く、新型コロナウイルス感染症に関してもARDSの病態を呈している。しかし、ARDSの確固たる根本的治療法が確立されておらず、対症療法を行なっているのが現状であり、その治療法の確立が急務である。ヒト気道上皮細胞および実験動物(マウス)を用いてその鍵となる因子・シグナルを同定・解析することでARDSの革新的根本的治療法の確立を目標としている。 今回、喫煙関連呼吸器疾患とARDSの関連性を調べるため、ヒト気道上皮細胞に対する特殊培養系Air Liquid Interface(ALI)を用いて、Cigarette smoke extract(CSE)を用いた喫煙modelおよびInterleukin-13(IL-13)を用いた喘息モデルを作成し、ガイドラインに示されている標準治療吸入薬(LABA,LAMA,ICS)とその病理学的相違・遺伝子発現・タンパク質発現について比較検討を行った。 LABA(β刺激薬)およびICS(ステロイド製剤)はMUC5ACを介した粘稠度の高い粘液産生を増加させるのに対して、LAMA(抗コリン剤)は粘液産生を抑制した。逆に喘息・COPD急性増悪に関与しているとされるTSLP(thymic stromal lymphopoietin)はLAMAで増加し、LABA・ICSは減少させることがわかった。通常これらの吸入薬は気管支平滑筋に作用すると考えられていたが、気道上皮に作用することで喘息・COPDの治療に関与していることがわかった。さらに電子顕微鏡を用いた検討を現在行っている。 今後このモデルを用いてLPS誘導ARDSとの関連性とその治療法について検討を行なっていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度までCXADR(コクサッキー・アデノウイルス受容体)とARDSの関連に関して検討を行なっていたが、KOマウスに関しても思ったほどの効果が期待できず、まずCXADR KOマウスの発育具合が良くなかった点。実際にLPS誘導ARDSモデルのデータのばらつきがかなりあり、CXADRに関して掘り下げていくということは困難と考えた。 以上より、喫煙関連疾患(喘息・COPD)のin virto modelにシフトしたことで標準治療吸入薬の気道上皮に対する効果に注目し、病理学的検討・遺伝子発現・タンパク質発現・さらにはその電子顕微鏡像の変化等を検討したところ今までに証明されていない現象に気がつくことができた。この現象を今後ARDSにも当てはめて検討していくことにより、治療法の確立に寄与すると考え、このまま研究を進めることとしている。
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今後の研究の推進方策 |
気管支喘息モデルおよび喫煙モデルにおいて標準治療吸入薬の気道上皮への非常に興味深い結果を再現性を持って確認することができ、粘液発現に関する更なる検討および電子顕微鏡を用いた詳細な検討を行うことによって気管支喘息・COPDといった喫煙関連呼吸器疾患に関する治療について分類化することが可能になり、気管支喘息・COPDのコントロールは以前に比べて改善されているが、バイオ製剤の開発等を含め、まだ重積発作・急性増悪に対して確立すべきところがあると考え、この研究を進めていくことにより、個別治療につながるPersonalized Meidicine実現の可能性がある。そこからARDSと喫煙関連疾患についてがつながり、治療法の確立につながると考えている。
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