研究課題/領域番号 |
23K08489
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55060:救急医学関連
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
新井 仁明 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 生化学, 助教 (50534864)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 脳損傷 / 神経細胞死 / NCDAP1 / NMDA受容体 / カルシウムイオン / 転写因子 / プロモーター / 神経保護 / カルシウムシグナル |
研究開始時の研究の概要 |
脳損傷によって興奮性の神経伝達物質であるグルタミン酸が神経細胞の周囲で過剰になり,神経細胞内に多量のカルシウムイオンが流入することで,最終的に神経細胞死が引き起こされると考えられている。NCDAP1はカルシウムイオン依存性の神経細胞死に関与しているものの、その分子メカニズムは不明なままである。本研究では、NCDAP1の機能解析をおこない、NCDAP1による神経細胞死とその分子制御機構の解明に取り組む。
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研究実績の概要 |
NCDAP1を介した神経細胞死に関わる分子機序の解明を目的として、NCDAP1プロモーター領域の解析を行った。N-メチル-Dアスパラギン酸受容体(NMDA受容体)の活性化によるカルシウムイオンの流入がNCDAP1の発現を増加させるが、その機序についてはほとんど不明である。本研究では、NCDAP1遺伝子のプロモーター領域を解析し、その転写を調節する因子を同定した。ルシフェラーゼアッセイを行った結果からNCDAP1遺伝子の翻訳開始点上流に強いプロモーター活性が認められた。NMDA受容体応答配列を調べるために各種データベース・予測ツールを用いて、NCDAP1プロモーターに結合しうる転写因子を検索し、プロモーター領域にいくつかの転写因子の結合部位の存在が予測できた。その結果をもとに、各シスエレメントを徐々に欠損させたレポータージーンアッセイ用ベクターを作成した。各ベクターをトランスフェクション後、NMDA受容体を刺激すると、SP1結合部位を欠損させたベクターでは活性が有意に減少した。また、クロマチン免疫沈降法を行った結果、SP1の結合量がNMDA受容体刺激で増加した。さらに、SP1の関与を明らかにするために、RNAiを用いたノックダウン実験をおこなった結果、NMDA受容体刺激によるNCDAP1の発現増加が抑制された。以上の結果から、 NMDA受容体の活性化が細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させることによりSP1がリクルートされ、NCDAP1プロモーターが活性化することが示唆された。転写因子の結合部位に変異を導入したコンストラクトを作製し、ルシフェラーゼアッセイを行った結果、予測したSP1の結合部位がNCDAP1遺伝子の発現に必須であることが明らかとなった。そこで、その結果をもとに、各シスエレメントを徐々に欠損させたレポータージーンアッセイ用ベクターを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.NCDAP1遺伝子のプロモーター領域の同定について:NCDAP1遺伝子の上流に存在するプロモーター領域を組み込んだルシフェラーゼレポータープラスミドの作製し、ルシフェラーゼアッセイを行い、NCDAP1遺伝子プロモーターを同定した。さらに、予測した転写因子の結合部位に変異の導入によってプロモーター活性に対する影響を検討し、NCDAP1遺伝子発現に必須領域を解明したと同時に、転写因子の結合部位も同定できた。 2. NCDAP1遺伝子の転写を制御する転写因子について:特異的なSP1抗体を用いて、NCDAP1遺伝子プロモーターへのSP1の結合を証明するため、Chip assayを行い、神経細胞内においてSP1 がNCDAP1のプロモーター領域に結合することを確認できた。 3. SP1蛋白質発現の抑制あるいは増強おけるNCDAP1の発現に対する影響について:siRNAの導入によりSP1の発現のknock downによってNCDAP1発現が抑制された。一方、哺乳動物細胞用発現ベクターを用いてSp1を強制発現することによって、NCDAP1の発現が増加した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、NCDAP1を介した神経細胞死シグナル伝達の分子機構の解明をさらに進める。 Pull-down法を用いてNDPAP1と結合するタンパク質を同定している。その結合タンパク質は細胞死経路と関連しており、NCDAP1との相互作用が神経細胞死を誘導するか解析をおこなう予定である。さらに、NCDAP1と結合タンパク質の結合を阻害する薬剤の探索をおこなう。NCDAP1と結合タンパク質のプラスミドを細胞に導入し発現させ、結合すると蛍光を発する実験系を用いて、多数の薬剤候補化合物の中からNCDAP1と結合タンパク質の結合を阻害する化合物の探索をする予定である。
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