研究課題/領域番号 |
23K08497
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大岡 史治 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (10725724)
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研究分担者 |
本村 和也 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (30467295)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 脳腫瘍オルガノイドモデル / ゲノム異常 / エピゲノム異常 / 悪性脳腫瘍 / オルガノイドモデル |
研究開始時の研究の概要 |
近年のビッグデータにより、脳腫瘍には多彩なゲノム・エピゲノム異常が蓄積していることが明らかになった。今後脳腫瘍の新規治療戦略を開発するためには、マスターレギュレーターとして中心的な役割を果たす分子異常を同定することが重要である。本研究では脳腫瘍オルガノイドモデルのゲノム編集を行うことで組織学的な悪性転化が誘導されるモデルを作成する。本モデルを用いて経時的にゲノム・エピゲノム異常を解析することで、悪性転化においてマスターレギュレーターの役割を果たす分子異常を同定する。予後不良な脳腫瘍の未だ明らかになっていない重要な弱点を同定し、新規治療戦略の開発につながる研究になることを期待する。
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研究実績の概要 |
近年のビッグデータにより、脳腫瘍には多彩なゲノム・エピゲノム異常が蓄積していることが明らかになった。今後脳腫瘍の新規治療戦略を開発するためには、多彩なゲノム・エピゲノム異常の中でマスターレギュレーターとして中心的な役割を果たす分子異常を同定することが重要である。一部の脳腫瘍では悪性転化に重要なゲノム異常も報告されたことから、悪性転化時にはゲノム異常がスイッチとなり、エピゲノム異常とクロストークを形成し、多彩なゲノム・エピゲノム異常を誘導していると考えた。このダイナミックな過程の中で重要な役割を果たす分子異常を同定するためには脳腫瘍の悪性転化過程を表現する新規研究モデルの確立と応用が不可欠である。近年がん研究の新規研究モデルとして組織培養を可能にするオルガノイドモデルが注目されている。本研究では脳腫瘍オルガノイドモデルのゲノム編集を行うことで組織学的な悪性転化が誘導されるモデルを作成することを目的としている。今年度はまず脳腫瘍の中でIDH変異型星細胞腫のオルガノイドモデルの作成に着手し、脳腫瘍手術検体からの培養を行った。オルガノイドモデルは最も特徴的な遺伝子異常であるIDH変異を有しており、病理組織学的評価では腫瘍の組織像を模倣していることが明らかになった。現在オルガノイドモデル、腫瘍検体を用いてRNA-Seq、DNAメチル化解析等の分子解析を行い分子プロファイリングの比較を行う準備を進めているところである。in vitro実験として、現在オルガノイドモデルに対して、siRNA等を用いた予備実験を行っている。現在オルガノイドモデルの増殖抑制効果や、遺伝子発現変化等の評価法の確立を目指している。これらの条件検討が終わり次第、CRISPR Cas9によるゲノム編集実験を予定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
オルガノイドモデルの作成には腫瘍検体から速やかに培養することが重要であり、培養可能な症例の手術のときにのみ作成することができる。当初の見込みよりも該当する症例の手術数がやや少なかったことは原因の一つと考えられる。また培養に重要なマトリゲルの入手が困難であった時期もあったことも原因の一つと考える。症例数は今年度には概ね見込みの症例数に達するものと考えられ、またマトリゲルの流通も回復しているため、今後は解決できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
今後の予定として以下を検討している。 1.IDH変異型星細胞腫のオルガノイドモデル培養とCRISPR-Cas9によるゲノム編集実験:今後はIDH変異型星細胞腫の悪性化に重要なCDKN2A/B遺伝子を標的としたガイドRNAを作成し、CRISPR/Cas9システムでオルガノイドモデルに投与しノックアウト実験を行う。ノックアウト効率を確認し最適な投与条件を設定する。適切にノックアウトされたオルガノイドモデルを培養し、その組織表現型の変化を解析する。 2.腫瘍検体、オルガノイドモデルを用いたゲノム・エピゲノム解析:培養開始後2週間後にCRISPR-Cas9を導入し導入後6週間後まで1週ごとに組織染色を行いながら、オルガノイドモデルを回収する。オルガノイドモデルからDNA, RNAを抽出し、次世代シークエンスにて全エクソン解析、DNAコピー数解析、DNAメチル化解析、RNA-Seqにて遺伝子発現解析を行う。 3.マスターレギュレーター候補となる分子異常の同定と検証:上記ゲノム・エピゲノム異常の出現タイミングを経時的に解析し、組織所見の変化が強くみられるタイミング、また最も多くの分子異常が誘導されるタイミングに出現する分子異常を同定する。同定された分子異常について、その出現時期のオルガノイドモデルを用いてsiRNAによるノックダウン実験また使用可能な阻害剤があれば阻害剤投与実験を行う。 4.異種移植マウスモデルを用いた検証実験:オルガノイドモデルを免疫不全マウスに移植し、腫瘍形成についてMRIを用いて評価する。同定した分子をCRISPR-Cas9でノックアウトしたオルガノイドモデルも移植することでその腫瘍形成能・増殖能の評価を行う。マウスをサクリファイスした後に免疫組織染色も行い標的とした分子の発現変化を解析する。
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