研究課題/領域番号 |
23K08522
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
堀江 信貴 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (70380912)
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研究分担者 |
光原 崇文 広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (80571801)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 脳梗塞急性期 / 経動脈投与 / ヒト頭蓋骨 / ラット / 模擬微小重力環境 / 経動脈的投与 |
研究開始時の研究の概要 |
脳梗塞モデルラットにMG環境下で培養したhcMSCsを経動脈的に移植した群(MG群)が、1G 環境下で培養したhcMSCsを移植した群(1G群)および、PBSのみを投与した対照群(コント ロール群)と比較して、脳梗塞後の運動機能がさらに改善することを評価する。同様に、投与ルートとして、経動脈的投与と経静脈的投与の二つの投与経路でも上記MG群、1G群、コントロール群を比較検討する。また脳梗塞部における免疫組織学的評価や遺伝子蛋白発現を両群間で比較・解析し、機能回復への効果を判定する。
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研究実績の概要 |
In vivoでは、まず動物実験用の麻酔器、顕微鏡、手術器具を用いて、脳梗塞モデルラット(中大脳動脈閉塞モデル)を安定して作成する方法を確立した。また、作成した脳梗塞巣の確認にはTTC染色を用いてラットの脳を染色し、中大脳動脈を閉塞させた時間と、ラットの神経症状と脳梗塞の範囲のそれぞれを比較検証することに成功した。中大脳動脈の閉塞時間が長いほど、神経学的症状は重症となり、これに比例して脳梗塞の範囲も広い傾向にあるという結果が得られた。同時にヒト頭蓋骨由来の間葉系幹細胞(hcMSCs)を、脳神経外科の手術中に生じた側頭骨もしくは蝶形骨の骨片から安定して樹立することに成功した。さらに脳梗塞モデルラットに対し、マイクロカテーテルを用いてMSCsを安定して経動脈的に投与できる方法を確立した。投与細胞は1.0×10000個を300μlのPBSで希釈し、PBS群、hbMSC群(ヒト骨髄由来の間葉系幹細胞を投与した群)、hcMSC群(ヒト頭蓋骨由来の間葉系幹細胞を投与した群)の3群にわけて、移植後それぞれの群において、体重や、神経学的行動評価(modified neurological severity score: mNSS)を安定して継続的に行うことができた。 一方でIn vitroでは、hbMSCsとhcMSCsの2群において、メッセンジャーRNAに関する網羅的解析を行うこととし、各群3サンプルづつ(合計6サンプル)で抽出することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物実験用の麻酔器、顕微鏡、手術器具を用いて、脳梗塞モデルラットを安定して作成する方法を確立した。脳梗塞モデルラットは、これまでの自験例の報告と同様に、イソフルラン吸入麻酔下に頚部正中切開にて総頚・内頚・外頚動脈を露出し、切断した外頚動脈断端から内頚動脈内を頭蓋内に向かって先端にシリコンコーティングを行った4-0ナイロン糸を挿入し、右中大脳動脈起始部を1時間閉塞させる中大脳動脈閉塞モデルである。こうして作成した脳切片をTTC染色を用いて梗塞巣の範囲を確認し、安定して基底核部を中心に脳梗塞が作成されていることを確認した。一方で、ヒト頭蓋骨由来の間葉系幹細胞を安定して樹立することにも成功した。脳神経外科の手術中に生じた側頭骨もしくは蝶形骨からの骨片を採取し、抽出されたヒト頭蓋骨由来の間葉系幹細胞を継代していき、脳梗塞モデルラットへの移植用に保存することができた。さらには、脳梗塞モデルラットに対し、ヒト頭蓋骨由来の間葉系幹細胞を安定して経動脈的に投与することにも成功した。具体的には、切断した外頚動脈断端から、4-0ナイロン糸を抜去するタイミングで、マイクロカテーテルを挿入し、細胞をゆっくり動注した。投与細胞は1.0×10000個を300μlで希釈した。PBS群、hbMSC群(ヒト骨髄由来の間葉系幹細胞を投与した群)、hcMSC群(ヒト頭蓋骨由来の間葉系幹細胞を投与した群)の3群にわけて、移植後それぞれの運動機能を含めたmodified neurological severity score (mNSS)の評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
現在、脳梗塞モデルラットに対して、急性期にhcMSCsを経動脈的に移植することで、hcMSC群が、hbMSC群およびPBS群よりも体重増加が良好で、mNSSも改善する傾向にあることがわかりつつある。そして、脳梗塞モデルラットにおいて、脳梗塞が生じた部位と、神経学的重症度が安定して確立できたこともTTC染色で確認することができた。今後の研究計画は、まず、それぞれの群(PBS群、hbMSC群、hcMSC群)において、細胞投与されたラットの脳梗塞切片(急性期:day 1~3)を作成し、3群においてPKHで染色したhMSCの分布を確認する。そして、実際の梗塞脳を急性期のタイミング(day 1~3)で採取し、神経栄養因子であるnerve growth factor (NGF)やbrain-derived neurotrophic factor (BDNF)、GDNF (glial cell derived neurotrophic factor)や、神経アポトーシスをみるSort1 (sortilin 1)や、caspase-3などの因子や、炎症性サイトカインであるIL-6, TNF、抗炎症性サイトカインであるTGF-β, IL-10などの因子について、3群間で発現を比較検討する。hcMSCs群が、hbMSCs群に比べ、これらの因子の発現が高まり、脳梗塞急性期ラットへの投与で神経学的機能予後を高めることを証明したい。
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