研究課題/領域番号 |
23K08550
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
西村 文彦 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (70433331)
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研究分担者 |
中澤 務 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (00772500)
松田 良介 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (60453164)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | cord blood cell / natural killer cell / glioblastoma / chimeric antigen / 臍帯血 / キメラ抗原受容体 / ナチュラルキラー細胞 / 膠芽腫 |
研究開始時の研究の概要 |
CAR-T細胞 は白血病に対して有用性が報告されている。しかし多様ながん関連抗原を発現する膠芽腫に対しては臨床的な抗がん効果が得られていない。このため多様ながん関連抗原を認識するナチュラルキラー(NK) 細胞へCARを導入したCAR-NK細胞が注目されている。我々はCARを導入するために自己末梢血由来NK細胞を培養し抗腫瘍効果を報告してきた。今回「どのようにすれば治療効果の高い免疫細胞を効率よく準備でき免疫細胞の老化や疲弊などの壁を乗り越えることができるか」という課題を克服するため臍帯血を用いてNK細胞を培養する。臍帯血由来EvCAR-NKによる膠芽腫に対する抗腫瘍効果を明らかにする。
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研究実績の概要 |
以前に我々は自己末梢血由来高純度ナチュラルキラー (NK) 細胞を大量培養し、膠芽腫に対する抗腫瘍効果を報告してきた。しかし、臨床応用を考慮した場合、それまでの例えば放射線治療・化学療法などの治療や年齢に起因する免疫細胞の老化や疲弊が問題となることが指摘されている。そこで今回「どのようにすれば治療効果の高いNK細胞を効率よく準備でき、NK細胞の老化や疲弊などの壁を乗り越えることができるか」という課題を克服するため臍帯血を用いてNK細胞を培養した。 まず臍帯血単核細胞をIL-2、IL-18、抗NKp46抗体、抗CD16抗体などのサイトカイン、抗体を用いて培養し、高純度のNK細胞を得た。これらの細胞の特性を評価するため培養7日後、14日後、21日後のNK細胞についてNK受容体CD56抗体などを用いてフローサイトメトリーによる評価を行い、効率的な臍帯血由来のNK細胞を得ることができた。 また培養7日後、14日後、21日後のNK細胞について各種NK受容体 (NKG2D、DNAM-1、NKp30、NKp44、NKp46、PD-1、TIM-3、LAG3、TIGITなど)の発現を評価し、活性化したNK細胞の経時的な頻度を解析した。 さらに、膠芽腫細胞株に対して、培養した臍帯血由来NK細胞の抗腫瘍効果が認められた。自己末梢血由来NK細胞と比べても、臍帯血由来NK細胞の方が抗腫瘍効果が高いことが確認された。以上から、臍帯血由来NK細胞が膠芽腫に対する高い抗腫瘍効果を有することがわかった。次のステップとしては、キメラ抗原受容体 (chimeric antigen receptor: CAR) を導入した臍帯血由来NK細胞が膠芽腫に高い抗腫瘍効果を有するかどうかを研究していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、まず臍帯血単核細胞をIL-2、IL-18、抗NKp46抗体、抗CD16抗体などのサイトカイン、抗体を用いて培養し、高純度のNK細胞を得た。これらの細胞の特性を評価するため培養7日後、14日後、21日後のNK細胞についてNK受容体CD56抗体などを用いてフローサイトメトリーによる評価を行い、効率的な臍帯血由来のNK細胞を得ることができた。 また培養7日後、14日後、21日後のNK細胞について各種NK受容体 (NKG2D、DNAM-1、NKp30、NKp44、NKp46、PD-1、TIM-3、LAG3、TIGITなど)の発現を評価し、活性化したNK細胞の経時的な頻度を解析した。 さらに、膠芽腫細胞株に対して、培養した臍帯血由来NK細胞の抗腫瘍効果が認められた。自己末梢血由来NK細胞と比べても、臍帯血由来NK細胞の方が抗腫瘍効果が高いことが確認された。以上から、臍帯血由来NK細胞が膠芽腫に対する高い抗腫瘍効果を有することがわかった。これらのデータをRegenerative Therapy 25 (2024) 367-376.に報告した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、膠芽腫に高頻度に発現するがん変異抗原Epidermal Growth Factor Receptor, transcript variant III (EGFRvIII: Ev) を標的とした臍帯血由来Evキメラ抗原受容体 (chimeric antigen receptor: CAR) を導入した臍帯血由来NK細胞が膠芽腫に高い抗腫瘍効果を有するかどうかを研究していく予定である。EvCAR遺伝子の導入条件を最適化する。膠芽腫細胞株 (Ev発現U87MG、Ev発現DKMG、Ev非発現T98G、Ev非発現U251MG)に対するEvCAR-NK細胞の腫瘍増殖抑制効果をセルアナライザー (RTCA DP: ACEA社) を用いて評価する。さらにEvCAR-NK細胞の特性解析として、RNAを抽出しRNA-seqとオンラインソフトウェアRaNA-seqを用いて網羅的遺伝子発現解、パスウェイ解析、(Gene Set Enrichment Analysis) 解析を行う。これらの検証により、遺伝子発現様式を包括的に評価できる。さらにがん化などの潜在リスクも評価できる可能性があり、臨床応用に向けて、その安全性が推定できる。
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