研究課題/領域番号 |
23K08564
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
平松 久弥 浜松医科大学, 医学部, 協定訪問共同研究員 (70447803)
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研究分担者 |
神尾 佳宣 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (10829716)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | レスベラトロール / 腸内細菌 |
研究開始時の研究の概要 |
生活習慣病は脳卒中の重要な危険因子とされている。近年日本人の食文化は大きく変化し、欧米に類似した食事が多くなっていることは血管障害の増大の大きな要因と考えられる。ポリフェノールの一つであるレスベラトロールは抗酸化作用のある物質として認識されているが、そのメカニズムとして我々は腸内細菌叢の変化により、血管障害の原因と考えられるTMAO産生の抑制効果とエストロゲン受容体への作用による抗炎症作用が期待されることに着目した。本研究を通して、近年の食文化の変遷に伴う日本人の腸内細菌叢の変化から血管障害の増加が危惧されており、レスベラトロールが治療戦略の一つに今後なりうると考える。
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研究実績の概要 |
本研究の目的としはポリフェノールの一種であるレスベラトロールが抗酸化作用を有する有機代謝産物として知られており、炎症性変化を抑制することで脳動脈瘤の形成および破裂を抑制することが期待される。我々はマウス脳動脈瘤モデルを用いてレスベラトロール投与群と通常食群の2群間における脳動脈瘤形成および破裂について検証を行なった。レスベラトロールは食餌に添加したものを利用し、マウスのレスベラトロール1日摂取量が300mg/kgとなるようにした。脳動脈瘤の誘発は1% 生理食塩水と鉱質ステロイドであるDeoxycorticosterone acetateによる高血圧誘導+35mU 豚膵エラスターゼ髄腔内投与により行なった。レスベラトロール投与期間は脳動脈瘤誘発3週間前から開始し6週間行なった。脳動脈瘤の形成に関してはレスベラトロール投与群でやや低下傾向にあるが2群間で有意差は認めなかった(通常食群 vs レスベラトロール投与群:73% vs 59%)。次に脳動脈瘤破裂に関してはレスベラトロール投与群で有意に破裂を抑制することを示した(通常食群 vs レスベラトロール投与群:87% vs 40%, P <0.05)。また脳動脈瘤破裂に関するSymptom free survivalはrogrank検定で2群間で有意差を認めた。以上よりレスベラトロールによる脳動脈瘤の破裂を抑制することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳動脈瘤破裂に関してコントロールは過去の実験と比較しても再現性が高く、本研究における結果と同等であることが確認でき、動物実験で有意差を示すことができたためである。一方で当初考えていた腸内細菌との関連に関しては腸内細菌叢の変化が起こりにくいことが想定される。すなわちTMAO産生に必要な大量のコリンが本研究では充分量ではないことから他のメカニズムを模索していくこととなる。
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今後の研究の推進方策 |
脳動脈瘤の破裂抑制を動物実験で示すことができたことから、今後はそのメカニズムに焦点を絞り実験を計画していく。腸内細菌の変化に関しては検証が難しいことから、レスベラトロールの炎症を抑制するメカニズムを模索していく。一つの仮説として、Sirtuinと呼ばれる長寿遺伝子として知られる酵素に注目した。Sirtuinの中でもSIRT1のsubtypeがp53やFOXOなどの標的タンパク質の働きを調整する役割がある。それに伴い細胞死の抑制、酸化ストレスの軽減、抗炎症作用などを発揮すると考えらえる。レスベラトロールはSIRT1を活性化することが期待されており、今後の検証としてマウス脳血管においてSIRT1発現の変化を確認していく。
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