研究課題/領域番号 |
23K08591
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
小守 寿人 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 特任研究員 (80770411)
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研究分担者 |
坂根 千春 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医歯薬学総合研究系), 助教 (40792578)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | I型コラーゲン / 骨芽細胞 / エンハンサー |
研究開始時の研究の概要 |
I型コラーゲンは、骨の有機基質の90%以上を占める主要な蛋白質であるが、その遺伝子(Col1a1)発現制御機構は、転写開始点上流2.3 kbで骨芽細胞特異的発現を誘導できることがレポーターマウスで明らかにされて以降、全く解明が進んでいない。本研究では、骨芽細胞でのCol1a1の生理的発現に必要なエンハンサーを特定し、Col1a1遺伝子の発現制御機構を、マウスを用いて明らかにする。これは、Col1a1の発現制御機構の全容解明、骨粗鬆症治療薬や骨再生法の開発、骨形成不全症の病態解明およびその遺伝子診断に貢献する。
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研究実績の概要 |
I型コラーゲンは、骨の有機基質の90%以上を占める主要な蛋白質であり、2本のα1鎖(Col1a1遺伝子)と1本のα2鎖(Col1a2遺伝子)が3重コイルをつくる。マウスCol1a1遺伝子の発現制御機構の解析は、Rossertらが、βガラクトシダーゼを用いたレポーターマウスを用い、プロモーター領域900 bpでは皮膚真皮の線維芽細胞に、2.3 kbでは、骨芽細胞と歯の象牙芽細胞に、3.2 kbではそれらに加えて、腱・筋膜の線維芽細胞にレポーター遺伝子(βガラクトシダーゼ)を発現誘導できることを示した。さらに、マウス2.3 kbの中の117 bp (-1656から-1540)をCol1a1遺伝子の-220 bpから+110のDNA断片(最小プロモーター、これのみでは全く発現誘導できない)につなぐと骨芽細胞特異的発現が誘導された。これらの結果は、2.3 kb内、特に-1656から-1540の117 bpに骨芽細胞での発現を誘導するDNA配列(エンハンサー)が存在することを示している。 我々は、この2.3 kb内の-1656から-1540の117 bpを含む領域のホモ欠失マウスを作製したが、Col1a1 mRNAは低下せず、骨量も正常であった。したがって、生理的なCol1a1発現を制御しているエンハンサーは、他の領域に存在すると考えられた。そこで、オープンクロマチン領域を検出するAssay for Transposase-Accessible Chromatin (ATAC)シークエンスおよびRunx2抗体を用いたChromatin Immunoprecipitation (ChIP)シークエンスを行った。Col1a1遺伝子領域にATACシークエンスのピークはプロモーター領域を除いて5箇所あり、それら全てがRunx2のピークと一致した。これらの領域を欠失させたマウスを作製することにより、Col1a1遺伝子がin vivoでどのように発現制御されているか明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
5箇所(E1-E5)のエンハンサー候補全てを含む領域のヘテロ欠失マウスでは、10週齢の大腿骨で海綿骨も皮質骨も減少していた。Col1a1発現は野生型マウスの約半分であった。したがって、この領域に骨芽細胞のCol1a1発現に必要なエンハンサーが存在すると考えられた。さらに、5箇所中2カ所(E1, E2)を含む領域のヘテロ欠失マウスではCol1a1発現は正常であったが、その他の3箇所(E3-E5)を含む領域のヘテロ欠失マウスでは、Col1a1発現が40%低下していた。したがって、このE3-E5を含む領域にCol1a1の生理的発現に必要なエンハンサーが存在すると考えられた。このうちの1箇所(E5)のヘテロおよびホモ欠失マウスを作製した。新生仔の頭蓋、下顎骨、四肢、皮膚、筋肉からRNAを抽出、real-time RT-PCRを行った。ホモ欠失マウスの頭蓋、下顎骨、四肢、皮膚、筋肉のCol1a1発現は、野生型のそれぞれ約60%、80%、70%、60%、90%であった。これらの組織において、Col1a2の発現は、上昇傾向にあった。頭蓋のタンパク質を用いたCol1a1のWestern blotでも同レベルの低下を認めた。8週齢の脛骨を用いたreal-time RT-PCRでは、E5ホモ欠失マウスのCol1a1発現は野生型の約70%であった。また、8週齢マウスの血清を用いた骨形成マーカー(P1NP)は、オス、メス共に野生型マウスと差を認めなかった。
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今後の研究の推進方策 |
まず、E1-E5のホモ欠失マウス、及びE3-E5のホモ欠失マウスの作製、解析を進め、E1-E5領域、さらにE3-E5領域に骨芽細胞におけるCol1a1に必須なエンハンサーが存在することを確認する。これらのマウスは出生後すぐに死亡する可能性が高いので、胎生18.5日で、頭蓋骨、下顎骨、大腿骨、肋骨、腰椎、皮膚、筋肉からRNAを抽出、real-time RT-PCRでCol1a1発現を調べる。骨格標本の作製、組織解析により、骨形成を詳細に調べる。Col1a1遺伝子の全身での欠失は、胎生12-14日に出血によって致死となるため、この時期に死亡している可能性もある。したがって、胎生18.5日にホモ欠失マウスが存在しなかった場合は、胎生12.5-13.5日の胎児を調べ、出血の有無を調べる。胎生12-14日に致死になった場合は、floxマウスも作製してあるので、2.3 kb Col1a1 EGFP-Creマウス及びSp7 Creマウスと交配し、それぞれのflox/flox Creマウスを作製し、骨芽細胞特異的に欠失させる。これらのマウスも胎生18.5日で同様に調べる。2.3 kb Col1a1 EGFP-Creを用いた場合は、出生後生存できると予想されるので、8週齢でマイクロC解析を行う。E3-E5領域のホモ欠失により、骨芽細胞におけるCol1a1がほぼ消失していた場合、E3, E4, E5エンハンサー候補領域個々のDNA、minimal promoter、GFPを挿入したレポーターマウスを作製し、それぞれのエンハンサー候補が骨芽細胞での発現を誘導するか調べる。
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