研究課題/領域番号 |
23K08602
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
河村 太介 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (00374372)
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研究分担者 |
角家 健 北海道大学, 医学研究院, 特任准教授 (30374276)
遠藤 健 北海道大学, 大学病院, 助教 (50849148)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 末梢神経損傷 / 好中球細胞外トラップ / ワーラー変性 / 好中球 |
研究開始時の研究の概要 |
末梢神経は再生するが、重度損傷、近位部損傷、再建例の成績は必ずしも良好ではなく、現在行われている治療も、半世紀以上前と大きくは変わらず、より効果的な治療方法開発への社会的要請は大きい。申請者らは、末梢神経のワーラー変性部では、好中球が神経上膜に集積し、好中球細胞外トラップ(Neutrophil extracellular traps:NETs)を分泌することで、神経実質内へのマクロファージ集積を遅延し、損傷神経の修復機転を阻害していることを同定した。本研究では、この知見をさらに発展させ、神経上膜のNETsは末梢神経の治療標的であるという仮説を検証する。
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研究実績の概要 |
末梢神経は再生するが、重度損傷、近位部損傷、再建例の成績は必ずしも良好ではなく、現在行われている治療も、半世紀以上前と大きくは変わらず、より効果的な治療方法開発への社会的要請は大きい。申請者らは、末梢神経のワーラー変性部では、好中球が神経上膜に集積し、好中球細胞外トラップ(Neutrophil extracellular traps:NETs)を分泌することで、神経実質内へのマクロファージ集積を遅延し、損傷神経の修復機転を阻害していることを同定した。本研究では、この知見をさらに発展させ、神経上膜のNETsは末梢神経の治療標的であるという仮説を検証する。まず、末梢神経損傷の形態の違いによるNETs発現パターンを明らかにした。その結果、その結果、損傷、再建方法に関わらず、ワーラー変性部の神経上膜には、損傷12時間後をピークとする好中球の集積とNETsの発現を認めた。本結果は、好中球がワーラー変性部の神経上膜に集積し、好中球細胞外トラップの分泌を介する現象の普遍性を示している。続いて、NETs阻害が末梢神経損傷後の機能再生を促進するか検討した。圧挫損傷後に2時間だけ、ワーラー変性部の神経表面をNETs阻害薬(DNase)含有コラーゲンシートで被覆し、7日目に組織評価を実施したところ、1週後のデブリスの減少と軸索再生促進効果を認めた。さらに、圧挫損傷後にIgGの腹腔内投与を行い、12時間後のNETs阻害効果と、6週間後の感覚機能、歩行機能、電気生理機能を検討した結果、NETsの発現は有意に阻害され、最終的な感覚機能、歩行機能、潜時と振幅が有意に改善した。最後に、中枢神経のワーラー変性部でもNETsが発現するか、マウス脊髄損傷モデルを使用して検討した。その結果、脊髄のワーラー変性部では末梢神経と異なり、好中球の集積とNETsの発現を認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Lewis ratの坐骨神経に圧挫、切断縫合、自家神経移植を行い、好中球の集積とNETsの発現を経時的な組織評価で検討した。その結果、損傷、再建方法に関わらず、ワーラー変性部の神経上膜には、損傷12時間後をピークとする好中球の集積とNETsの発現を認めた。本結果は、好中球がワーラー変性部の神経上膜に集積し、好中球細胞外トラップの分泌を介する現象の普遍性を示している。また、圧挫損傷後に2時間だけ、ワーラー変性部の神経表面をNETs阻害薬(DNase)含有コラーゲンシートで被覆し、7日目に組織評価を実施したところ、1週後のデブリスの減少と軸索再生促進効果を認めた。さらに、圧挫損傷後にIgGの腹腔内投与を行い、12時間後のNETs阻害効果と、6週間後の感覚機能、歩行機能、電気生理機能を検討した結果、NETsの発現は有意に阻害され、最終的な感覚機能、歩行機能、潜時と振幅が有意に改善した。これらの結果は、NETs阻害によって軸索再生が促進すること、IgG投与がNETs阻害効果を介して、機能回復を促進したことは、WD部のNETsが末梢神経損傷の治療標的となること、IgG投与が末梢神経損傷の新規治療方法となる可能性を示している。また、マウスC5脊髄に部分切断損傷を作成し、6時間後から56日後まで、経時的に潅流固定を行い、C3、C5、C7高位の脊髄横断切片に対する免疫染色とHE染色を施行し、脊髄のワーラー変性部の好中球集積とNETsの発現を検討した結果、脊髄のワーラー変性部では末梢神経と異なり、好中球の集積とNETsの発現を認めなかった。
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今後の研究の推進方策 |
IgG投与による末梢神経損傷後の機能回復を認めたが、まだ、解析が終了していない、歩行機能の詳細、組織学的検討による、再生軸索数、再髄鞘化の程度、ミエリン厚関する解析を完了する。さらに、IgG投与後、1週、3週の組織を解析し、軸索再生促進効果、エリンデブリス除去効果、マクロファージ集積促進効果を確定する。また、末梢神経損傷後のIgG投与により、NETsの発現が阻害されたが、その詳細な機序はまったく不明のままであり、その機序の詳細を解明する。具体的には、IgG投与による好中球集積数への影響、FCタンパク投与の効果、NETs阻害に必要なIgG濃度の確定、培養好中球にIgGを等投与して、網羅的遺伝子解析、Western blottingを実施し、IgG刺激による好中球への分子的影響を明らかにしたあと、候補分子、候補シグナルの阻害薬を投与して、IgGによるNETs発阻害効果の分子機序を確定する。最後に、今回得られた結果は、IgGの腹腔内投与であったが、臨床を模擬した静脈内投与による、NETs阻害のための必要濃度を明らかにする。そして、これらの結果をまとめて、論文投稿する予定である。
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