研究課題/領域番号 |
23K08642
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
梶 博史 近畿大学, 医学部, 教授 (90346255)
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研究分担者 |
河尾 直之 近畿大学, 医学部, 講師 (70388510)
水上 優哉 近畿大学, 医学部, 助教 (20881163)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 慢性腎臓病 / PAI-1 / 骨代謝異常 / サルコペニア / フレイル |
研究開始時の研究の概要 |
慢性腎臓病(CKD)の患者数は著しく増加しており、CKDによる骨代謝異常やサルコペニアの病態の解明は喫緊の課題である。PAI-1は線溶系制御のみならず、アディポカインとして多くの病態に関与することが報告されている。本研究課題では、マウスを用いて、CKDによる骨代謝異常、サルコペニアの病態へのPAI-1の関与とそのメカニズムを明らかにし、さらにCKDの筋・骨連関への影響の視点からもPAI-1の意義を検討する。CKDによる骨代謝異常やサルコペニアにおけるPAI-1や線溶系の役割が解明できれば、未だ治療法に限界のあるこれらの病態への新たな治療法の手がかりを提起できると考えられる。
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研究実績の概要 |
12週齢の野生型およびPlasminogen-activator inhibitor-1(PAI-1)欠損マウス(雌雄)を10週間アデニン含有飼料で飼育することで慢性腎臓病(CKD)病態を誘導し、CKDの骨・筋病態におけるPAI-1欠損の影響を評価した。アデニン負荷により野生型マウスの体重、摂餌量は低下し、BUN、血清クレアチン値、血清Ca濃度は増加した。一方で、PAI-1欠損はこれらの変化に影響を与えなかった。アデニン負荷により野生型マウスでは血清リン濃度が増加した。一方で、PAI-1欠損は雌マウスにおける血清リン濃度の上昇を抑制した。筋組織の解析では、アデニン負荷により、握力、全身筋量、下肢筋量、腓腹筋重量、ヒラメ筋重量、前脛骨筋重量が低下した。一方で、PAI-1欠損はこれらの変化に影響を与えなかった。骨組織の解析では、アデニン負荷は野生型マウスのBMDおよびBV/TVに影響を与えなかった。一方で、PAI-1欠損は雄マウスにおいてBMDおよびBV/TVを低下させ、雌マウスにおいてBMDおよびBV/TVを増加させた。海綿骨指標においてアデニン負荷は、野生型雄マウスの骨梁数、骨梁間隙を低下し、骨梁幅を増加したが、PAI-1欠損マウスでは骨梁幅の増加は抑制されていた。一方で、アデニン負荷は野生型雌マウスにおいて、骨梁数、骨梁間隙、骨梁幅に有意な影響を示さなかったが、PAI-1欠損マウスでは骨梁数を増加させた。また、皮質骨指標においては、アデニン負荷は皮質骨密度、皮質骨面積、皮質骨幅、皮質骨腔割合を低下させた。一方で、PAI-1欠損はこれらの変化に影響を与えなかった。以上の実験結果より、PAI-1のアデニン負荷により誘導されたCKDの筋・骨病態に対しての関与は見出されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標は、CKDによる骨代謝異常、サルコペニアの病態へのPAI-1の関与を明らかにすることである。現在の研究の進展状況では、筋・骨病態を有するアデニン誘導性のCKDモデルマウスを確立し、PAI-1欠損マウスを用いることで、アデニン誘導性CKDの骨・筋病態においては、PAI-1の関与は乏しいことを明らかにしている。本研究の結果は、糖尿病や糖質コルチコイド過剰による骨粗鬆症や筋委縮に関与していることが明らかとなっていたPAI-1が、CKDの骨・筋病態に対しては関与が小さいことを示唆した重要な所見を明らかにしている。また、本研究で得られた結果をまとめた論文についても投稿準備を進めている。一方で、老化によるCKD病態に対するPAI-1の関与については不明であり、今後の検討課題である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、老齢マウスを用いて、老化によるCKD病態に対するPAI-1の役割について詳細に解明していきたい。具体的には、野生型およびPAI-1欠損マウスを24か月飼育し、骨・筋・血液の詳細な検討を行うことで、老齢マウスの骨代謝異常、サルコペニア、マイオカイン変化に対するPAI-1欠損の影響を評価する。さらに、老齢マウスと若齢マウスとの結果の比較も行う。以上の実験により得られたデータをもとに、PAI-1欠損マウス由来の初代培養細胞を用いて、老化に関与する因子である酸化ストレス、慢性炎症、AGEs、活性型ビタミンD、PTH、FGF23の骨形成、骨吸収、筋量関連指標に対する作用におけるPAI-1の関与についても明らかにしていきたい。
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