研究課題/領域番号 |
23K08656
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
宮本 佳奈 熊本大学, 病院, 医員 (60464997)
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研究分担者 |
宮本 健史 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (70383768)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 関節リウマチ / 関節炎 |
研究開始時の研究の概要 |
関節リウマチ(RA)患者においては、3大炎症性サイトカインであるIL-1、IL-6及びTNFαの血清濃度が上昇していることが知られている。申請者はIL-6の刺激で直接活性化されることが知られている転写因子であるStat3が、IL-1、あるいはTNFαの刺激によっても間接的に活性化されることを明らかとし、RAに対する新たな治療標的となり得ることを見出している。本研究ではStat3阻害剤による新たなRA治療法の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
関節リウマチ(Rheumatoid arthritis, RA)患者では、炎症性サイトカインであるTNFαやIL-6、IL-1の血中濃度が上昇し、これらの炎症性サイトカインの作用により、関節腫脹や関節破壊、関節炎などのRAに特有の症状を発症する。申請者はこれらの炎症性サイトカインが直接的(IL-6)あるいは間接的(TNFαやIL-1)に、シグナル分子であり転写因子であるsignal transducer and activator of transcription factor 3 (Stat3)を活性化することを見出した。活性化されたStat3は、IL-6などの炎症性サイトカインや、関節破壊に中心的な役割を果たすサイトカインであるreceptor activator of nuclear factor kappa B ligand (RANKL)の発現調節領域に結合し、これらのサイトカインの発現を誘導することで、関節腫脹や関節破壊を惹起する。また、このようにして誘導されたIL-6などの炎症性サイトカインがStat3を活性化することで、再びIL-6やRANKLの発現を誘導するpositive feedback loopが成立することで、関節腫脹や関節破壊が慢性化する。マウスのRAモデルであるcollagen誘導性関節炎モデルでは、Stat3のコンディショナルノックアウトマウスにおいて、関節炎と関節破壊がともに有意に抑制されることからStat3がRAにおける治療標的と考えられる。そこで、申請者はStat3を標的とする低分子化合物を同定し、マウスcollagen誘導性関節炎モデルにおいて、その効能を評価することとした。すでに、Stat3の活性化を抑制する低分子化合物を同定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで低分子化合物で核内タンパク質である転写因子を標的にするのは、一般に困難であるとされていた。これは細胞膜に続いて核膜を通過して核内に入り、しかも当該標的転写因子の阻害活性を有する低分子化合物の同定が困難であるからである。そこで、今回はStat3が細胞外からの刺激に応答して、細胞質内でリン酸化され、二量体を形成し、核内に移行して転写活性を発揮することに着目し、細胞質内でStat3の二量体化を阻害する低分子化合物を同定できれば、Stat3の活性化を阻害することも可能になると考えた。Stat3はタンパク質―タンパク質相互作用により二量体を形成し、その際、特定のドメインを介して相互作用を行い、二量体を形成することが知られている。Stat3のタンパク質の結晶構造は既報を参考に、タンパク質―タンパク質相互作用ドメインを特定し、当該ドメインに結合する可能性のある低分子化合物を、in silico screeningにより約490万クローンのスクリーニングを行った。まず一次スクリーニングにより(3D pharmacophore model screening)、Stat3阻害剤の候補低分子化合物として4,032クローンを同定することができた。さらに、これらについて二次スクリーニングを行い(Docking base screening)、39の候補をStat3阻害活性のある候補低分子化合物として同定することに成功している。これらのうち、15クローンについては、培養実験における添加実験を行い、Stat3の代表的な転写標的遺伝子であるIL-6の発現阻害活性でスクリーニングを行い、4クローンについてIL-6の発現阻害活性があることを確認した。このように、Stat3の阻害活性のある可能性のあるクローンを、大規模スクリーニングから同定できており、おおむね順調に研究が進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
RAでは関節腫脹とともに、破骨細胞の活性化による関節破壊の抑制が大きな課題である。破骨細胞の形成については、RANKLが必須であることから、すでにIL-6の発現阻害活性があることが確認できた4クローンについては、RANKLの発現阻害活性についても検証を行う。また、IL-6並びにRANKLの発現阻害活性については、発現阻害活性のある候補低分子化合物の容量依存性も確認する。さらに、今回のStat3阻害剤は、Stat3の二量体化阻害による活性化阻害であるので、サイトカインシグナルによるStat3のリン酸化や、その後のStat3の核内移行が当該候補低分子化合物で阻害されるかを検証する。これらの検証により、IL-6およびRANKLの発現阻害活性、Stat3のリン酸化と核内移行の阻害活性のいずれもが確認できた候補低分子化合物は、in vivoにおいてcollagen誘導性関節炎モデルマウスを用いて、関節炎並びに関節破壊抑制活性の評価を行う。In vivoで関節炎並びに関節破壊抑制活性が確認された候補低分子化合物は、その当該化合物をリード化合物に、より活性が期待できる化合物の検討を進める。また、二次スクリーニングで同定された残り24個の候補低分子化合物についても同様の解析を進める予定である。
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