研究課題
基盤研究(C)
プロテオーム解析を用いて、ゲノムから翻訳され実際に腫瘍細胞内で働いているタンパク質を同定することで、肺転移の分子機序をプロテオームレベルで解明し、肺転移を抑制する新規治療法の開発を目指している。特に、予後不良な多数の肺転移に進展する分子機序にも焦点を当てた解析も行い、新たな骨肉腫の予後改善につながる研究基盤を展開したい。
骨肉腫は、AYA世代に好発する原発性悪性骨腫瘍の中で最も頻度が高い。近年、他の小児がんは治療成績の向上がみられるのに対し、骨肉腫ではここ40年間で予後改善はほとんどなく新規治療法開発が急務である。予後不良な主要原因は肺転移であり、肺転移の発生を抑制する治療法を確立できれば骨肉腫の予後は改善する。プロテオーム解析を用いて、ゲノムから翻訳され実際に腫瘍細胞内で働いているタンパク質を同定することで、骨肉腫における肺転移の分子機序をプロテオームレベルで解明し、肺転移を抑制する新規治療法の開発を目指している。これらを解決するために2006年から2019年までに当院で手術を行った骨肉腫症例のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織を用いて、生検組織と肺転移組織のタンパク抽出を行った。この際、病理医がレーザーマイクロダイセクションを用いて腫瘍部のみを抽出した。これらのサンプルを肺転移の有無、また肺転移をきたした症例での予後の違いに着目して比較検討した。プロテオーム解析を用いて、肺転移をきたし、かつ予後不良に関与しているタンパク質を複数同定した。これらの同定したタンパク質が発現していることを複数の骨肉腫細胞株において確認し、それらの発現欠損株を作成し、肺転移が抑制されるか検討を行う。さらに分子的に機能解析を行うことで、肺転移の分子的なメカニズムを解析するのみならず実際の治療に応用できるか検討する。
2: おおむね順調に進展している
プロテオーム解析の結果から、複数株の候補タンパク質の同定ができた。現在、骨肉腫細胞株においてそれぞれの発現欠損株を作成し、今後の実験に用いる予定である。
作成した候補タンパク質の発現欠損株を用いて、肺転移能をin vivoで野生株と比較検討する。In vivoで野生株と比較して肺転移能が低下する候補タンパク質を同定し、そのメカニズムをin vitroの実験を行う。また、同定したタンパク質で手術検体の免疫組織化学を行い、その発現態度を解析する。また、その生命予後を比較検討する。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Skeletal Radiology
巻: 53 号: 4 ページ: 657-664
10.1007/s00256-023-04457-7