研究課題/領域番号 |
23K08687
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構(臨床医学研究所 臨床医学研究開発部) |
研究代表者 |
伊藤 宣 公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構(臨床医学研究所 臨床医学研究開発部), クリニカルサイエンスリサーチグループ, 研究員 (70397537)
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研究分担者 |
市村 敦彦 京都大学, 薬学研究科, 助教 (10609209)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 関節軟骨 / 骨系統疾患 / 軟骨細胞 / 細胞内Ca2+ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では軟骨組織における空間トランスクリプトーム解析と軟骨細胞内Ca2+イメージングをFGFR3achマウスおよび修復関節軟骨における軟骨組織を対象に統合的に行うことで遺伝子発現と細胞内Ca2+制御及びその病態生理的役割に関する基礎的研究を行う。
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研究実績の概要 |
本研究では、軟骨無形成症の原因遺伝子であるFGFR3が軟骨組織の細胞内Ca2+シグナルと空間遺伝子発現に及ぼす病態分子機序を解明し、軟骨細胞由来骨系統疾患の分子病態基盤を明らかにすることで、骨系統疾患や関節軟骨欠損に対する治療の臨床応用に役立つ新たな知見の取得を目指している。 本年度は空間遺伝子発現解析を実施し、概ね研究計画に沿って解析を進めた。 FGFR3achマウス軟骨組織における遺伝子の空間的発現部位を調べるため、まず胎生17.5日齢のマウス大腿骨組織を用いて病理染色用切片を作製し、H.E染色によって組織形態や細胞形態とその配置を調べた。次に、病理組織切片を用いて10x Genomics社 VISUMを用いた空間トランスクリプトーム解析を実施した。解析に必要なクオリティのRNAを保持したサンプルをスライド上に切片を維持するための条件設定にやや時間を要したが、解析可能な試料の安定的取得条件を設定できた。解析データを元に、野生型マウスデータとの比較解析を実施中である。 FGFR3の恒常活性変異がCa2+応答へ与える影響を明らかとするため、胎生17.5日齢のFGFR3achマウス大腿骨組織を用いてCa2+イメージングを行った。自発的Ca2+変動など複数のパラメータについて定量的に比較しており、一部パラメータで異常な活性化を示唆するデータを取得している。今後、空間遺伝子発現情報で得られた情報から、FGFR3の恒常活性変異が組織全体のCa2+シグナルにもたらす影響を評価する予定である。関節軟骨修復組織における実験系の確立については現在継続的に取り組んでいるが、軟骨無形成症モデルマウスは通常のマウスと比較して骨伸長障害が起こるため小さく、技術的な困難を伴いやや難航している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね研究計画時に想定していた通りに進行しており、部分的には計画を上回る進捗を得られている。VISIUMによる胎生期マウス大腿骨試料の解析は、スライド試料を提出できる条件を設定する段階でかなりの時間と労力を要した。しかし、最適化への継続的努力で条件設定に成功し、解析実施まで辿り着けたため、順調に推移したと判断した。また、解析結果に基づいたCa2+イメージングも一部実施できており、すでにFGFR3恒常活性変異によって影響される軟骨細胞内Ca2+シグナルの変化を示唆するイメージングデータを取得済みである。障害モデルの作製技術確立には当初より困難が予想されており、今後の改善余地もまだ残されている。これらの理由から、総合的に計画通りに進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の優先事項は、まず軟骨細胞内Ca2+シグナルを賦活可能かつFGFR3恒常活性変異を含む骨の伸長促進に係る薬理的手法についての評価を完遂し論文を公表することである。論文草稿はすでに完成が近づいており、データの追加が完了次第投稿することができる予定である。投稿後も査読内容に沿った修正や追加の必要性が生じると予想されるため、次年度はその対応にまずは注力することを最優先とする予定である。これと並行し、空間発現解析結果から得られたFGFR3恒常活性変異による軟骨内Ca2+シグナル変化についてさらに詳細に解析を進めていく。すでに、Ca2+動体の異常を示唆するイメージングデータを取得するに至っており、薬理学的解析と遺伝学的解析を組み合わせてその検証を進めていく。一方、VISIUMは有効な手段であるが、空間解像度が胎生期マウス軟骨組織に対して不足していることがわかったため、より目的に合致した手法による解析も模索していく予定である。また、やや難航している障害モデルの確立についても継続的に努力する。さらに、軟骨細胞内Ca2+動態の観点から、FGFR3恒常活性変異による骨伸長障害の治療に資する知見を取得するべくex vivoまたはin vivoモデルによる検証を進める予定である。
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