研究課題/領域番号 |
23K08694
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
有泉 高志 新潟大学, 医歯学系, 助教 (50571915)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | ポドプラニン / バイオマーカー / 骨軟部腫瘍 |
研究開始時の研究の概要 |
骨軟部肉腫は上皮系悪性腫瘍と比し、診断技術、創薬ともに大幅に遅れている。申請者らは膜貫通型糖蛋白の一つであるポドプラニンに着目し、骨軟部腫瘍領域における鑑別診断マーカーとしての検索を行ってきた。本研究はその成果を発展させる形で、血中バイオマーカーとしての有用性を模索することを目的に、研究計画を立案した。まずがん特異的糖鎖ポドプラニン抗体を用いた骨軟部肉腫での発現解析を行うと同時に、肉腫特異的糖鎖構造を有するポドプラニンが存在すると仮説を立てその探索を行う。最終的には臨床例の末梢血から肉腫の早期発見、予後予測、残存腫瘍の検出を行うためのポドプラニンの意義を確立することが目標となる。
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研究実績の概要 |
骨軟部肉腫は発生頻度が稀な上、組織型も多彩であるため、上皮系悪性腫瘍と比較し、診断技術、創薬ともに大幅に遅れている。そのため診断、治療の両者に対し新たな技術の開発が切望されている。ポドプラニンは腎のポドサイトから発見されたⅠ型膜貫通型糖蛋白の一種である。足細胞だけでなく、リンパ管内皮や肺胞上皮など多数の正常組織で発現があることが知られている一方で、扁平上皮癌や中皮腫など、多種のがんでの高発現が知られており、血行性転移の促進にも関与していると考えられている。そのため循環腫瘍細胞の検出や、創薬のターゲットとして多くのがんで研究開発がなされている。申請者らはポドプラニンに着目し、骨軟部腫瘍領域における鑑別診断マーカーとしての検索を行ってきた。その結果、多数の骨軟部腫瘍に発現があること、組織型により発現差があることを見出してきた。本研究はその成果を発展させる形で、創薬のターゲットや血中バイオマーカーとしての有用性を模索することを目的に、①肉腫特異的糖鎖構造を有するポドプラニンが存在する。 ②ポドプラニン陽性細胞の末梢血での検出が肉腫の診断、病勢の評価に有用なバイオマーカーとなる。という仮説を立て、基礎と臨床の両面から研究計画を立案した。 ポドプラニンは軟骨肉腫や多形肉腫など、これまで有用な血中マーカーがなかった腫瘍での発現を認め、バイオマーカーや創薬の対象として有望と考えている。正常組織でも発現があることが問題となるが、正常組織と肉腫のポドプラニンのアミノ酸構造自体は同一のため糖鎖付加などの翻訳後修飾での差異を検出する必要がある。 ①免疫染色を用いたがん特異的糖鎖ポドプラニン抗体を用いた骨軟部肉腫での発現解析と、②肉腫特異的糖鎖ポドプラニンの探索を中心に研究計画を立案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
近年樹立されたポドプラニン抗体(LpMab-2、3、7、9、12、21、23)を使用し、肉腫細胞株並びに正常組織、骨軟部肉腫臨床検体でポドプラニンの発現解析を行っている。申請者の施設で樹立した細胞株だけでなく他施設より供与をうけた細胞株を含めると20以上の肉腫細胞株の培養と、それらからの遺伝子抽出等の手技を要するため、解析に時間を要している。細胞株ではフローサイトメトリーでの解析を予備実験で行ってきたが、肉腫細胞株において細胞自体の多形性やサイズのばらつきがあることより有意な結果を得ることが困難であった。正常組織、臨床検体の評価では、正常組織の確保が遅れている。パラフィン切片では免疫組織化学染色を行っているが、抗原賦活化の方法により染色性が大きく変化することや、賦活化の方法によっては骨軟骨を含む組織の場合容易にプレパラートから組織が剥奪することが問題となっている。 発現遺伝子の検索を目的にリアルタイムPCR機器を購入した。現在肉腫細胞株のmRNAを抽出しており、今後糖鎖関連遺伝子の肉腫細胞株における発現量の解析を行う。ケラタン硫酸は、ガレクチンのリガンド糖鎖であるN-アセチルラクトサミン構造の繰り返しからなり、硫酸化修飾を受ける。これらの糖の生合成に関与する酵素群は、β4GalT4、 β3GnT7、KSGal6ST、GlcNAc6ST-1/5である。そのためこれらの遺伝子の発現量を解析途中である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究においてはフローサイトメトリーによる解析には限界があると考えた。そのため別の手法による細胞株におけるポドプラニン抗体の解析を行う。2つの手法を考慮している。1つはセルブロックによる細胞株の発現蛋白の評価である。増殖した培養肉腫細胞でセルブロックを作製する。セルブロックから組織切片を作製し、免疫組織化学的手法を用いて解析を行うことで、通常の組織切片における免疫染色とほぼ同様の手法で解析が可能である。申請者らの施設では過去の本手法での解析を行ったことがあり、手技は可能と考える(Pathology International 2010; 60: 193–202)。2つ目はウエスタンブロットでの解析である。肉腫細胞株からタンパクを抽出し、ウエスタンブロットでポドプラニン蛋白の検出を行う。本手法も申請者らの施設で過去に施行しており、本手技での解析も十分に可能と考えている(Anticancer Research 2011; 31: 11-21)。正常組織の確保は、臨床上病理提出した標本を検索し、腫瘍や感染などが明らかには及んでいない部位を複数の検者で確認し、その標本を正常組織ととらえ検討を行うこととする。抗原賦活化には酵素処理、熱処理、オートクレーブ処理等複数の方法があり、処理の時間も賦活化の可否に大きく左右する。強い処理をかけるほど骨軟骨組織では切片が剥奪しやすくなるため条件を複数設定し、最も有効な処理を検索する。
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