研究課題/領域番号 |
23K08722
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56030:泌尿器科学関連
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
山下 真平 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (20725569)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 泌尿器科学 / 結石症学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、尿路結石形成過程における間質線維芽細胞の役割に着目した尿路結石発症メカニズムの解明、及び尿路結石に対する分子細胞生物学的治療法の確立の基盤となる基礎研究を行う。 【2023年度】in vitroの実験系において、マウス、及びヒト腎線維芽細胞におけるOSMの役割を検討するとともに、次年度以降に行う実験のためのマウスの作製・繁殖を行う。 【2024年度以降】間質線維芽細胞におけるOSMRβを特異的にノックアウトしたマウスを用いて、結石モデルマウスを作製し、結晶形成量、結晶結合蛋白発現量、Osteogenic differentiationとリン酸カルシウム沈着、炎症、線維化等の評価を行う。
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研究実績の概要 |
以前の研究で、研究代表者は、IL-6ファミリーのサイトカインであるオンコスタチンM(OSM)の受容体サブユニットであるOSM受容体β(OSMRβ)の遺伝子欠損マウスでは、グリオキシレート投与によるシュウ酸カルシウム結晶の形成が抑制されることや、その機序の一つとしてOSMが腎間質線維芽細胞に直接作用し、結晶結合タンパクや炎症性サイトカインの発現を促進することを報告した。また、共同研究者らは、OSMRβに対する抗体が、腹腔内マクロファージにおけるOSMのシグナルをブロックすることや、OSMにより惹起される2型の炎症に対する抑制効果があることを報告している。 本年度、この抗OSMRβ抗体が、腎間質線維芽細胞におけるOSMのシグナルをブロックするのかを検討した。腎間質線維芽細胞の一次培養系に抗OSMRβ抗体、及びそのアイソタイプコントロール抗体を添加し、その2時間後にOSMで刺激した。アイソタイプコントロール抗体を添加した群では、OSMの刺激によりSTAT3のリン酸化が認められたが、抗OSMRβ抗体添加群ではSTAT3のリン酸化が認められなかった。また、腎間質線維芽細胞の一次培養系をOSMで刺激すると、結晶結合タンパク(オステオポンチン、アネキシンA1、アネキシンA2)、炎症性サイトカイン(TNF-α)、及びコラーゲン1a2の発現増加が認められたが、抗OSMRβ抗体の添加により、それらの分子の遺伝子発現が完全に抑制された。以上の結果より、抗OSMRβ抗体は、腎間質線維芽細胞におけるOSMの作用を抑制することが明らかとなった。 尿路結石形成過程における線維芽細胞でのOSMシグナルの役割を検討するために、本年度、OSMRβのflox/floxマウスとCol1a1-Creマウスを交配し、線維芽細胞特異的なOSMRβ遺伝子欠損マウスの繁殖を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、抗OSMRβ抗体が、腎間質線維芽細胞において、OSMによる転写因子の活性化やそれによって誘導される分子(結晶結合タンパクや炎症性サイトカインなど)の発現を抑制する効果があることを見出した。尿路結石症は、再発率が高く、有効な再発予防や根本的治療の方法が見つかっていないのが現状である。本年度の結果は、尿路結石症の再発予防に新たな可能性を見出すものであり、尿路結石症の予防と治療を究極的なテーマとしている本研究にとって、非常に有用な結果である。 本研究課題で行う内容のうち、OSMの腎間質線維芽細胞に対する骨芽細胞様分化の役割や、線維芽細胞特異的なOSMRβ遺伝子欠損マウスの解析は次年度以降に行う予定である。本年度は、特に、線維芽細胞特異的なOSMRβ遺伝子欠損マウス作製のための繁殖を開始した。OSMRβのflox/floxマウスとCol1a1-Creマウスを交配し、OSMRβ flox/-; Col1a1-Creマウスを得た。実験に用いるためのOSMRβ flox/flox; Col1a1-Creマウスを得るために、OSMRβ flox/-; Col1a1-Creマウス同士を交配し、現在、仔が約4週齢になったところである。 また、尿路結石症は、結晶形成など種々の原因により炎症が惹起され、それが線維化へと進展することで慢性腎障害の原因となる。次年度以降では、尿路結石の形成過程において、炎症や線維化に関与する新規分子の探索を行う予定である。 以上のことより、本年度の研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
マウス、及びヒト腎線維芽細胞におけるOSMの役割の検討:マウス腎間質線維芽細胞におけるosteogenic differentiationに対するOSMの役割を検討する。骨芽細胞のマーカーであるアルカリフォスファターゼ(ALP)の免疫染色、及びフローサイトメトリーにてALP陽性細胞数を計測することで、分化の程度を検討する。また、骨芽細胞マーカーの発現量をリアルタイムPCR法にて解析する。次に、ヒト腎線維芽細胞におけるOSMRβの発現、OSM刺激による炎症性サイトカインや結晶結合蛋白、腎線維化マーカーの発現、及びosteogenic differentiationに対するOSMの効果を検討することで、ヒト尿路結石症の発症における線維芽細胞を介したOSMの役割について検討する。 尿路結石形成過程における間質線維芽細胞の役割の検討:Cre-loxPシステムを用いて間質線維芽細胞におけるOSMRβを特異的にノックアウトしたマウス、(OSMRβのflox/floxマウスとCol1a1-Creマウスを掛け合わせたマウス)を用いて、①結晶形成量の評価、②結晶結合蛋白発現量の評価、③Osteogenic differentiationとリン酸カルシウム沈着の評価、④炎症の評価、⑤線維化の評価を行う。
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