研究課題/領域番号 |
23K08761
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56030:泌尿器科学関連
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
富澤 信一 横浜市立大学, 医学部, 講師 (00704628)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | エピジェネティクス / 精子形成 / 幹細胞 / クロマチン / シングルセル解析 / シングルセル |
研究開始時の研究の概要 |
男性不妊の4割は原因不明の精子形成不全によるとされる。これまでの研究から、不妊の多くには精子幹細胞の分化異常が伴う可能性が示唆されるが、精子幹細胞分化制御機構はよくわかっていない。本研究では、近年その存在が明らかになってきた精子幹細胞の亜集団を詳細に解析し、それと幹細胞分化や不妊との関わりを調べる。実験ではシングルセルマルチオミクス解析を用い、亜集団を遺伝子発現だけでなくクロマチンレベルから詳細に規定し、特異的な遺伝子や制御機構を調べる。また、精子幹細胞分化障害モデルの一つであるKmt2b欠損マウスを解析し、クロマチン状態の破綻と亜集団の関連性を調べ、男性不妊の機序解明に寄与することを目指す。
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研究実績の概要 |
近年増加傾向にある不妊治療の患者においては、その半数程度に男性側の要因が関与していると言われている。そして、男性不妊の4割ほどを占める原因不明の精子形成不全の一部には、精子幹細胞の分化異常が関与している可能性が様々な動物実験の結果から示唆されている。精子幹細胞は長期にわたる精子形成を支えるうえで欠かせない細胞の集団であるが、その中には亜集団が存在し、複数の亜集団がそれぞれ異なる役割を担うことで精子幹細胞の維持や分化を制御している可能性が示唆されている。ところが、各亜集団の具体的な機能や、それらがクロマチンレベルでどのように制御されているかはこれまでのところ不明であった。本研究では精子幹細胞の亜集団をマルチオミクスシングルセル解析によって詳細に解析し、それぞれの性質や違いをクロマチンレベルで明らかにすることを目指している。本研究では現在までに、マルチオミクスシングルセル解析の手法の一つであるscNMT-seq法を取り入れ、その手法を用いて未分化な精子幹細胞から分化型の精原細胞までを解析し、良好なデータを得ることができた。その結果、実際に精子幹細胞が複数の異なる亜集団で構成され、それぞれに特有の遺伝子発現やクロマチンの状態が存在することが明らかになってきた。さらに、それぞれのクロマチン状態に対応する転写因子や重要なエピゲノム機構を同定しつつあるため、今後それらの詳細な解析を実施していくことを計画している。本研究の解析によって亜集団を制御する機構やその存在意義が明らかになることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では当初の計画通り、精原細胞においてGFPを発現する遺伝子改変マウスを用い、これまでにマルチオミクスシングルセル実験を複数回実施し、未分化な精子幹細胞と分化型の精原細胞を含む集団の良好なデータを取得することができた。また、得られたデータを用いてバイオインフォマティクス解析を進め、精子幹細胞を構成する亜集団の同定やそれぞれに特異的に発現する遺伝子を新たに見出している。また、各亜集団や細胞に対応するクロマチンやDNAとメチル化の状態を解析し、クロマチンレベルでの特徴や制御機構について解析を順調に進めることができている。今後の追加実験やデータ解析により、精子幹細胞亜集団に関わる重要な転写因子やエピゲノム機構を見出すことが可能であると期待されるため、概ね順調な進展と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、未分化な精子幹細胞や分化型の精原細胞から複数回マルチオミクスシングルセル解析を実施した結果、良好なデータを十分量得ることができている。そのデータからは、精子幹細胞の亜集団それぞれに特異的に発現する遺伝子が見出されてきているため、今後はそのような遺伝子の発現や各亜集団の機能を制御する可能性のある転写因子について、詳細な解析を実施する。まず、次年度はさらなるバイオインフォマティクス解析により、そのような転写因子や重要なクロマチン制御機構の高精度な絞り込みを進める。さらに、同定された転写因子が機能的かどうかをタンパク質レベルで調べることを計画している。一方で、我々のこれまでの研究により明らかになったヒストン修飾酵素KMT2Bが制御するエピゲノムが、それぞれの亜集団の遺伝子発現や機能とどう関わっているかを調べるための解析を実施することを予定している。これについてはKMT2Bノックアウトマウスから採取した未分化な精子幹細胞や分化型精原細胞の詳細な遺伝子発現やヒストン修飾状態のデータを活用することで進める計画である。
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