研究課題/領域番号 |
23K08762
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56030:泌尿器科学関連
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
飯田 啓太郎 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (30713945)
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研究分担者 |
河合 憲康 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (20254279)
永井 隆 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (20813447)
惠谷 俊紀 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (30600754)
安井 孝周 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (40326153)
内木 拓 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (50551272)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 腸内細菌叢 / 膀胱癌 / 尿路上皮癌 / マイクロバイオーム / 免疫療法 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、腸内のマイクロバイオームが癌と関連があることが明らかになってきた。私たちは、マイクロバイオームを変化しうるPPI/P-CABを内服している転移性尿路上皮癌患者では、抗PD-1抗体の効果が乏しいことを発見した。この成果より、マイクロバイオームの解析により効果予測のバイオマーカーを見出し、内服薬や食事によって既存治療の効果が改善できるのではとの着想に至った。 本研究において、内服薬・食事によりマイクロバイオームを変化させたモデル動物の作成と、モデル動物・患者における抗PD-1抗体治療下におけるマイクロバイオームの機能解析を行い、新たな治療介入法の臨床応用に向けた基礎的研究を行う。
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研究実績の概要 |
抗PD-1抗体は転移性尿路上皮癌の予後を改善させた。しかし、その有効例は約2割にとどまり、効果予測のバイオマーカーがないことが問題である。近年、腸内のマイクロバイオームが、癌をはじめとした様々な疾患と関連があることが明らかになってきた。私たちは、マイクロバイオームを変化しうるPPI/P-CABを内服している転移性尿路上皮癌患者では、抗PD-1抗体の効果が乏しいことを世界で初めて見出した。この成果より、マイクロバイオームの解析により効果予測のバイオマーカーを見出し、内服薬や食事によって既存治療の効果が改善できるのではとの着想に至った。本研究において、[1]尿路上皮癌モデル動物における発がんに関わるマイクロバイオームの変化を検討し、さらに①低食物繊維食、②高食物繊維食、③抗生剤、④PPIによりマイクロバイオームを変化させたモデル動物を作成する。また[2]モデル動物・患者における抗PD-1抗体治療下において、16SリボソームDNAシークエンスで細菌叢の種類や多様性、代謝産物の変化を検討してマイクロバイオームの機能解析を行う。そして[1]で作成した内服薬・食事によりマイクロバイオームを変化させたモデル動物に対して抗PD-1抗体を投与し、その効果の検証を行う。さらには尿路上皮癌モデル動物に対するヒト便移植の効果や、抗PD-1抗体を投与した内服薬・食事によりマイクロバイオームを変化させたモデル動物のに対するヒト便移植の効果の検証も行う。これらのことを明らかにすることで新たな治療介入法の臨床応用に向けた基盤としたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度の実験計画1-Aについて、6週齢雄C57BL/6マウス12匹に対して、最初の14週間膀胱発がん物質BBNを0.05%の濃度で自由飲水し、その後通常の水を飲水させて30週齢でサクリファイスを予定していたが、25週齢から死亡例が見られたため26週齢でサクリファイスを行った。サクリファイス前に4匹死亡したが、死亡例も含め全12匹で膀胱腫瘍を確認できた。死亡4例は膀胱全体に膀胱腫瘍が充満しており、死因が膀胱腫瘍と思われた。 令和5年度の実験計画1-Bについて、抗生剤・PPIを内服させた6週齢雄C57BL/6マウス12匹を26週齢でサクリファイスした。両群とも明らかな血液検査の異常やHE染色における肺・肝・腎の形態学的な異常を認めなかったが、コントロール群と比べ抗生剤投与群では著明な体重減少が認められた。 実験計画1-A, Bとも便を採取しているが、まだDNAを抽出、16SリボソームDNAシークエンスは施行していない。 また、転移性尿路上皮癌に対してキイトルーダ(PD-1抗体)治療をおこなっている患者の治療前と治療4週間後の便の採取を適宜進めている。検体数が十分集まってからシークエンスを行う予定である。また今回の実験の着想となった、転移性尿路上皮癌患者においてPPI/PCAB内服群は非内服群と比べて優位に進展しやすいという報告の論文化をおこなった(Scientific Reports, 2024)。
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今後の研究の推進方策 |
まずは令和5年度に施行した膀胱発癌マウスの腸内細菌叢に対して、16SリボソームDNAシークエンスを行い細菌叢の種類や多様性、代謝産物の変化を検討してマイクロバイオームの機能解析を行う。また抗生剤・PPIを内服させた6週齢雄C57BL/6マウスに対して抗PD-1抗体を投与し、その膀胱腫瘍のサイズ変化やPD-1/L1の発現などの各種免疫染色を評価する。 さらにヒト尿路上皮癌患者におけるマイクロバイオームの解明として、転移性尿路上皮癌患者30人に対して、抗PD-1抗体を投与する前と投与した後に便から抽出したDNAを用いて16SリボソームDNAシークエンスを行い、2群間で異なる腸内マイクロバイオームを同定する。さらに尿路上皮癌患者の中で、抗PD-1抗体の効果があった群となかった群のマイクロバイオームを解析し細菌叢の種類や多様性、代謝産物の変化を検証する。上記の動物実験とヒトのデータで腸内細菌叢や代謝物の変化に相関があるか検討する。 さらに尿路上皮癌発がんマウスに、転移性尿路上皮癌患者で抗PD-1抗体に対して効果があった患者(レスポンス群)の便と効果がなかった(非レスポンス群)便をBBNマウスに便移植させその効果と腸内細菌叢の変化を検討する。また抗生剤、PPIを内服させた尿路上皮癌発がんマウスで抗PD-1抗体の効果に差を認めたものに対して、レスポンス群の便移植を行うことでその効果に差が出るかどうか検証する。
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