研究課題/領域番号 |
23K08786
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56030:泌尿器科学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
北岡 壮太郎 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (90936387)
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研究分担者 |
森田 伸也 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (10365364)
茂田 啓介 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 訪問研究員 (10649875)
松本 一宏 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (80366153)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | CD204 / CD8 / FGFR3 / Immune microenvironment / UTUC / urothelial carcinoma / CD68 / CD163 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では自然免疫であるマクロファージの免疫不均一性に着目し、腫瘍関連マクロファージが癌免疫微小環境に及ぼす影響を明らかにする。組織マイクロアレイによる癌組織内の免疫微小環境を解析するとともに最先端の流体力学に基づく血中循環腫瘍細胞(CTC)濃縮システムを駆使して尿路上皮癌患者からリアルタイムにCTCを回収し、末梢血単核球との相関関係を検証する。末梢血中のCTCと単核球を免疫不全マウスに移植し、ヒト癌免疫微小環境をマウス内で再現する事で末梢血内単球が腫瘍関連マクロファージに変貌するまでの進化過程を明らかにし、難治性尿路上皮癌の免疫関連新規バイオマーカーおよび新規治療標的の同定を目的とする。
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研究実績の概要 |
研究課題の一つである腫瘍関連マクロファージ(TAM)に規定される免疫微小環境の把握をするため、当教室で保有する上部尿路上皮癌検体214例に対して、着目する分子マーカーで免疫組織学染色を行い、検討を行った。 まず各臨床組織から病理学的に腫瘍中心部(Center of tumor: CT)・腫瘍辺縁部(Invasive margin: IM)を抽出することで、腫瘍内不均一性を克服する組織マイクロアレイ(TAM)を作成した。 これを使用し、FGFR3, CD4/8/68/163/204, PDL1抗体を使用した免疫組織学染色を行い、各種免疫分子マーカーの発現と分布を確認した。 この結果と臨床経過との統合を行い、予後やペムブロリズマブの奏効率との関連を解析している。 現時点で、既報と同様に本臨床検体でもFGFR3が低発現の群では予後が不良であることがわかっている。しかしながらこの予後不良群の中にもペムブロリズマブへの感受性が良好な症例が含まれており、CD8が高発現群およびCD204低発現群に多いことが解析により判明した。 これはTAMがT細胞性の癌免疫機構を抑制しているという知見を反映した結果であり、またCD8,CD204が免疫チェックポイント阻害薬の奏効率や予後と関連する有用なバイオマーカーとなりうることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、TAMが癌微小環境並びに免疫微小環境に及ぼす影響を明らかにすること、またそれにより免疫関連新規バイオマーカーならびに新規治療標的を同定することである。 今回豊富な臨床検体を用いたTMAが作成できたことで、TAMに関連するバイオマーカーと癌微小環境および予後や免疫チェックポイント阻害薬の奏効率との関連を解析できる土台が整備されたと考える。 解析はまだ未完であるが、CD8およびCD204が予後と関連しており、今後TAMが癌微小環境の構築や免疫チェックポイント阻害薬耐性に関わるということを裏付けられると考えている。 また、マウスを用いた新たなヒト癌免疫マウスモデルの作成も目指している。in vivoにヒト同様の癌免疫微小環境を再現し、TAMのもつ働きを解明する足がかりとなると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
CD8, CD204の組織中の発現量をバイオマーカーとして用いることは簡便さに欠けるため、これらと関連するより有用なサロゲートマーカーとして、末梢血中の単球数および好中球リンパ球比に着目している。解析を進め、これらのマーカーと臨床成績との関連を実証する予定である。 また示された臨床検体での研究成果をin vivoで再現するためヒト癌免疫マウスモデルを確立することを検討している。 最先端の流体力学に基づく血中からの循環腫瘍細胞(CTC)濃縮システムを駆使して尿路上皮癌患者からリアルタイムにCTCを回収し、末梢血単核球との相関関係を検証する。倫理委員会(20180354)の承認後、すでにUC患者の末梢血をClear Cell FXシステムで回収し、CTCと末梢血単核球の単離を行ってサンプルを凍結保存している。このCTCと単核球に対し、単一細胞解析(シングルセル解析)を行う予定である。 その後、単離したCTCを癌細胞として、末梢血中に単離した免疫細胞とともに免疫不全マウスに移植し、マウスにヒトの免疫系と癌微小環境を再構築したハイブリッドモデルを作成する。 Liquid Biopsy法で回収する免疫細胞とCTCはどちらも同一患者から採取しているため、他修飾による非生着率を最小限に抑えられるという利点がある。本研究におけるハイブ リッドモデルの作成により、末梢血単球が癌組織内でどのようにTAMに変貌を遂げるのか、また組織内TAMがヒト免疫微小環境にどう影響するのかをマウス体内を場とした完全再現が可能となる。
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