研究課題/領域番号 |
23K08795
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
池田 芳紀 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (30820378)
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研究分担者 |
小泉 憲裕 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (10396765)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 医療技能のデジタル化 / 人工知能 / 卵巣腫瘍 / 早期発見 / 死亡率低下 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、医療技能のデジタル化(医デジ化)により卵巣腫瘍の革新的診断システムを開発することである。卵巣腫瘍の確定診断は手術以外には困難である。病歴、腫瘍マーカー、超音波検査、MRI、CT等の情報から、手術前に卵巣腫瘍の良・悪性や病理組織型を医師が勘や経験に基づき推定している。本研究で構築するのは、人工知能(AI)技術を用いてこの医師の技能をデジタルに再現し、術後に確定した病理組織型の情報から学習を積むことによって、人間を超える高い精度で卵巣腫瘍の良・悪性、病理組織型を術前に診断するシステムである。卵巣悪性腫瘍の早期発見手法として研究を発展させ、最終的には卵巣悪性腫瘍の死亡率低下を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、医療技能のデジタル化により、卵巣腫瘍の革新的診断システムを開発することである。卵巣腫瘍の術前診断は、臨床情報、各種検査データを参考に、医師が良・悪性を推定している。熟練した画像診断医は、画像読影時に卵巣腫瘍の病理組織型まで推定している。人工知能技術を用いてこの医師の技能をデジタル化しシステムに実装することで高い診断精度を実現する。卵巣悪性腫瘍の早期発見手法として発展させ、卵巣悪性腫瘍の死亡率低下を目的とする。本研究期間は名古屋大学産婦人科で治療した卵巣腫瘍症例の患者臨床情報、血液・画像検査データ、摘出物の最終病理組織型の情報を抽出し、研究分担者のグループで解析後、問題点を抽出して診断精度を高めていく予定である。当該年度は卵巣腫瘍として代表的な漿液性腫瘍の患者246症例分の血液検査および画像検査データを研究分担者のグループで解析を行った。様々な機械学習手法で血液検査データを学習し、良性・境界悪性・悪性の三値分類を試みた。どの血液検査項目の寄与が大きいのか、算出可能な決定木での成績向上を目指すことにした。ランダムフォレスト、Extreme Gradient Boosting、Light Gradient Boosting Machineを用いるといずれも良性・悪性のPR-AUCは0.9を超える成績を達成したが、境界悪性は0.5を超える程度に留まった。境界悪性の診断精度を向上するために、二値分類器を並列に接続する手法を考案した。良性か否かの二値分類と悪性か否かの二値分類を行い、いずれでもないものを境界悪性と分類する三値分類の新規手法である。これを用いた結果、境界悪性のRecallと良性・悪性のPrecisionが増加した。すなわち、提案手法は境界悪性の偽陰性と良性・悪性の偽陽性を抑制可能であった。しかしながら問題点は、悪性の偽陰性が増加することであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
複数の機械学習モデルで学習、評価を行い、機械学習モデルの再検討を繰り返し行っているがまだ十分な診断精度が得られていない。良性・悪性のPR-AUCは0.9を超えているが、境界悪性は0.5を超える程度で、特に境界悪性の診断精度が不十分である。その対策として二値分類器を並列に接続する新規手法を考案したが、それを用いても境界悪性の見逃しは減るものの悪性の見逃しが増える結果となった。トレードオフの関係であり苦戦している。この原因は主に良性・境界悪性・悪性のデータ数の不均衡であると考えられる。良性・悪性に比べて境界悪性のデータ数は圧倒的に少ない。卵巣境界悪性腫瘍の頻度はもともと低いため、そのデータ数が少ないのは克服が難しい課題である。逆に良性・悪性の症例数を減らすことでデータ数の不均衡を少し改善させて解析を行ったが、結果は芳しくなかった。境界悪性の症例数を増やすには多施設でのデータ集積を要する。多施設でのデータ集積に入る前に研究分担者のグループでデータ解析手法を引き続き検討していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究分担者のグループへのデータ集積作業を行い、複数の機械学習モデルで学習、評価を行った。まだ十分な診断精度が得られておらず、学習モデルの再検討が必要な状況で、今後も引き続き学習、評価を繰り返していく必要がある。特に境界悪性の診断精度が低く、良性・境界悪性・悪性のデータ数の不均衡がその原因の一つである。しかしながら、卵巣境界悪性腫瘍の頻度はもともと低いため、そのデータ数が少ないのは当然であり克服が難しい。これまでの解析では臨床情報・血液検査データのみを用いていたが、それだけではこれ以上の診断精度の向上に限界があると考え、今後は画像検査データも解析していく。臨床情報・血液検査データを扱う機械学習から得られた分類結果と画像検査データを扱う深層学習から得られた分類結果を上手く融合させる新規手法の開発が必要である。画像検査データを解析していくにあたって、三値分類を行うためには非常に高度で複雑な解析が必要となるため、まずは境界悪性・悪性の二値分類で新規手法の開発・検討を行う予定である。
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